7月7日は「東京都知事選」の投開票日です。同日には、鹿児島県知事選も行われるほか、全国で宮城県名取市、茨城県常総市、埼玉県新座市、神奈川県綾瀬市、大阪府河内長野市、大阪府羽曳野市、大阪府門真市、鳥取県境港市、広島県安芸高田市の各市長選も投開票日を迎えます。
それぞれの住民は地域の未来を、どの候補者に託すのでしょうか。
国政に比べて、より暮らしに密接した問題を扱う地方自治は「民主主義の学校」とも言われています。こうした地方自治について、日本国憲法はどのように定めているのか。ジャーナリストの池上彰氏が解説します。
※この記事は、池上彰氏の著作『知らないではすまされない日本国憲法について池上彰先生に聞いてみた』(Gakken)より一部抜粋・再構成しています。
地方自治は充分に機能しているか
――地方自治について憲法には何が書かれているのですか?
憲法第92 条から95条までは地方自治についての規定です。
いちばんのポイントは、第92条の「地方自治の基本原則」です。そこには、こう書かれています。
「地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基いて、法律でこれを定める」
ここにある「地方自治の本旨」とは、地方自治体において住民の意思に基づいて自治がおこなわれることです。
憲法が地方自治を重視しているのは、戦前はそうではなかったからです。
たとえば戦前の都道府県知事は、現在とは異なり、中央から派遣された人物が就任していました。
つまり、戦前の日本は強い中央集権体制であり、戦後これを否定するように「地方自治の本旨」が憲法に明記されたわけです。
地方自治は本来、中央政府が暴走しそうなときに歯止めをかけるとともに、地域住民の人権を守る役割を担っています。
ただ、日本で地方自治が十分に機能しているかというと疑問があります。権限をより地方に移譲する道州制導入の議論があるのはその証拠でしょう。
また、新型コロナウイルス感染症対応をめぐっては、国と東京都で足並みがそろわないなど、政府と自治体の役割分担の不備が露呈しました。
なお第93条以降は、地方公共団体の議会や選挙、地方公共団体だけに適用される特別法の住民投票などについての規定が記されています。