ワクワクする夏の到来、元気が出る強い花を贈る。
梅雨の名残を残しながら、夏らしさが増してくる月。夏休みも始まり、街が一気に賑わってくる。花も上から照りつける太陽の光に映えるよう濃い色になり、力強く咲き誇る。とはいえ、季節の変わり目なので、無理は禁物。いたわる気持ちを持って、気分が上がる花を贈りたい。
エキナセア
Echinacea purpurea
体力が奪われる夏に、ハーブで活力アップ。
科名/キク 原産地/北アメリカ。免疫力を高めたり、抗炎症作用があったりと、ネイティブアメリカンが薬として重宝していたという植物。暑さに強いので、切り花でも花持ちに優れている。「夏はどうしてもいったん体力を消耗するので、この頃になると強い色合いの花を選びます。ビタミンカラーではないけれど、人間も色からパワーをもらっていると思うんです。もともとハーブなので、弱った体にも生気を与えてくれそうです。いろいろな色や咲き方があるのでミックスして束ねるのも素敵です」
ルドベキア
Rudbeckia
切り花でも持ちがよく、大人の雰囲気を持つ。
科名/キク 原産地/北アメリカ。イエロー、ブラウン、クリームなど豊富な色がある。なかでも八重咲き、半八重咲きなど咲き方もさまざまなキャラメルミックスは、市場でも人気の品種。アンティークカラーで落ち着いているが、取り交ぜて贈ると艶やかさがアップする。「緑のススキなど夏のグラス系と交ぜるのもおすすめです。また、一見ヒマワリに似た雰囲気があるのですが、より大人っぽさがあります。なので、年上の方の家に招かれたときなどのお土産として持参するのにもぴったりだと思います」
カスミソウ
Gypsophila
花屋の常連は、数本束ねるだけで自然の風景に。
科名/ナデシコ 原産地/ヨーロッパ、中央アジア。白い小さな花がたくさん集まり、ふんわりとした姿が人懐こさを感じさせる。フラワーアレンジメントにも重用され、一度は見たことのある花でもある。「バラの添え役と思われがちですが、これだけを束ねても気持ちのいいブーケになります。花が大きめだったり、小さかったりと種類も豊富なので、10本程度、取り交ぜるだけでも十分。野原をそのまま移しかえるように山盛りにして贈ると、自然が部屋にやってきたようで、気分が盛り上がります」
ブルーベリーの実
Vaccinium corymbosum
実ものを交ぜることで、季節感が鮮明に。
科名/ツツジ 原産地/北アメリカ。花屋のものは食べられないが、生食したり、乾燥させて冬の保存食にしたりなど、何千年もの間、ネイティブアメリカンの生活必需品であった。また、ヨーロッパなど北半球にも広く自生。野生種が多いところでは、夏のブルーベリー摘みが恒例行事になっている。品種によって、大きさや形状が異なる。「一年のこの時季になるといろんな植物に実がついてくるので、実ものを入れると季節感が出てきます。ブルーベリーは葉っぱの色もとてもきれいなんです」
平井かずみ Kazumi Hiraiフラワースタイリスト
草花が身近に感じられる、暮らしに根付いた日常花を提案。東京・恵比寿のアトリエ「皓SIROI」を拠点に、日本全国で花の教室をはじめとしたワークショップや展示を開催。著書に『あなたの暮らしに似合う花』『花のしつらい、暮らしの景色』(ともに扶桑社)など。
illustration : Shinji Abe (karera) edit & text : Wakako Miyake
参考文献:『花屋さんで人気の469種 決定版 花図鑑』(西東社)、『花の名前、品種、花色でみつける 切り花図鑑』(山と溪谷社)
&Premium No. 126 Life with Flowers & Greens / 窓辺に、花と緑を。
人はなぜ、こんなにも花や草木を愛するのでしょうか。植物と触れ合うことは、その美しさを愛でるということにとどまらない大きな喜びを、私たちに与えてくれます。植物とともにある生活は、毎日が発見の連続。 季節の移ろいに敏感になるだけでなく、住まいや暮らしそのものを、心地よく、健やかにしたいと願う気持ちまでもが、ふつふつと湧いてくるように思います。さらに、私たちの中に潜む原初的な感覚の扉をそっと開き、心にやすらぎをもたらしてくれるのです。今号は、花を飾ること、植物を育てることを楽しみながら、心地よく暮らす人たちを訪ねました。
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