「新しい人間関係」を築き上げるのってとても難しいですよね。
新しい職場、引っ越しや趣味の集まり、子ども関係の集まりはもちろん。プライベートでは、食事会や初デートだって新しい人間関係を構築する機会です。
どんな場面でもスッと場になじんで人の心をつかむのが上手な人になりたいですよね。
そんなときに役立つのが今回紹介する本、『最初の15秒でスッと打ち解ける 大人の話し方』矢野香著(日経ビジネス人文庫)です。
▶前回:気になる彼に「どんな女性がタイプ?」という質問はNG。では、なんて聞くのが正解?
▼INDEX
1. 最初の15秒で相手の懐に飛び込むのが大事なワケ
2. デートにも使える!食事のときに相手の心をつかむ方法
3. 待ち合わせの場面。第一印象で相手との距離を縮めるために
4. 時計やスマホの「チラ見」は悪印象?
5. オンラインで知り合った人と、初めて会うとき
6. 本書のココがすごい!
1. 最初の15秒で相手の懐に飛び込むのが大事なワケ
どんな場面でもスッと打ち解けるのがうまい人がいます。
何気ない会話でいつのまにか周囲との枠を取り外し、相手の信頼を勝ち取る。まるで昔からの知り合いのように場になじみ、自然な存在感を発揮する。そんなうまく適応するスキルを持つ人です。
彼らにはひとつ共通点があります。
それは、出会って最初の15秒で相手の懐に飛び込んでいるという点です。
なぜ15秒なのか。これには「心理学」と「話し方」というふたつの観点から見た理由があります。
私たちは初めての人に会うと、相手がどんな人なのか無意識に読み取り、第一印象をつくり上げます。心理学の研究では、第一印象は、最短で1秒前後から15秒、数分という短い時間で形成され、その後の対人関係に大きな影響を与えることが多数報告されています。
新しい環境においては、わずか15秒程度の短い会話の間に、この人は仲間に入れて大丈夫か、一緒に仕事できるかなど、その後の人間関係が判断されてしまうのです。
次ページからは、具体的なシーンに分けて、食事のときやカフェに行ったときに気を付けること、オンラインで知り合った相手と実際に会うときのポイントなどをお伝えします。
2. デートにも使える!食事のときに相手の心をつかむ方法
①「一緒に食事」は、相手との仲を深めるチャンス
「同じ釜の飯を食う」という表現もありますが、だれかと一緒に食事すると、脳内ホルモンのオキシトシンという物質が分泌され、この働きにより、相手に対する不安や疑いを抑制するといわれています。
さらに食の好みが同じという共通の感覚を持っていると、急速に打ち解けやすくなります。
「やはり和食は見た目からも季節感が味わえておいしいよね」「やはり疲れたときには甘いものが欲しくなるよね」など、共感しながら味わうことで、共通の感覚を確認し合うことができます。
かつて日本には、宴会の席で最初の1杯は、みんなビールを頼み乾杯する、いわゆる「とりあえずビール」と呼ばれる習慣がありました。
アルコールを飲まない人やビールが好きではない人に対する強制になってはいけませんが、大事にしたいのは、その精神。「同じものを一緒に口にする」ことによって生まれる仲間意識です。
「とりあえずビール」精神が最高なのは、一般的な食の好みだけではなく、今、口にしたいものという互いの欲求が同じであることを確認できる点です。
食欲という本能レベルでの好みが、リアルタイムで共通していることは、強い連帯感を生みます。
もっと打ち解けたいと思う相手との食事では、相手が魚を頼んだら、「あ、私も今日は魚の気分!」と相手と「同じ欲求」であることをさりげなく伝えながら、会話をふくらませるのがよいでしょう。
たとえば、食事の場面でAコースが肉、Bコースが魚だったとしましょう。相手が「魚」と言ったら、本当は肉が食べたかったとしても、自分も同じ魚を頼みましょう。
そうすれば、「この魚、脂がのっていておいしいね」「細かな骨があるので注意して」など同じ話題で会話がはずみます。
【お助けフレーズ】
▼「やはり」をつけて好みが同じであることを強調する
「やはり疲れたときには、甘いものが欲しくなるよね」
「やはり和食は、見た目からも季節感が味わえておいしいよね」
「やはり家庭菜園で朝とれたての野菜に勝るものはないよね」
▼今の瞬間の食欲が同じであることを強調する
「あ、私も今日は魚の気分!」
「今日は寒かったから、温かい飲み物がよさそうね」
「このメニューリストの中では、これが一番惹かれるよね」
②カフェなどの場面では、飲み物の温度を合わせる
食事の席では相手と同じものを頼むことをおすすめしましたが、「私も同じで」と言うのが不自然なときは、「温度を合わせる」ことを意識してみてください。
たとえば、相手がホットコーヒーを頼んだら、まったく同じコーヒーではなく、ホットティー。「ホット」という温度の共通点がポイントです。
なぜ同じ温度にするのか。それは、飲むタイミングが同じになるからです。
ホットコーヒーを飲むときは、熱いので一口ずつ時間をかけて飲むでしょう。これがアイスコーヒになると、ストローで一気に飲んでしまうこともあります。
相手は会話しながら温かい飲み物を少しずつ時間をかけて飲んでいるのに、自分は、すでに冷たい飲み物を飲み終わって手持ち無沙汰ということも起こります。
飲むペースやタイミングが違うことで、会話のペースが合わなくなる、このズレによって、なんだか気が合わない人と無意識に判断されてはもったいない話です。
3. 待ち合わせの場面。第一印象で相手との距離を縮めるために
第一印象で好印象を与え相手に信頼してもらうためには、挨拶が重要です。
そこでポイントとなるのが、距離。相手のパーソナルスペース(人と人との快適距離)にいったん侵入して、あえて距離を縮めて挨拶すると相手の警戒感が解けます。
距離を近づけるための口実として、名刺交換やお辞儀、握手などは自然な理由となります。
たとえば待ち合わせをしていた店や部屋などに入ったとき、相手が先に来ていたとしましょう。
「お待たせしました」と言いながら、すぐに手近な場所に座ったのでは、相手との距離は一定に保たれたままです。せっかくの挨拶の効果も半減してしまいます。
そうではなく、「お待たせ」と言いながら、一度その人の前まで近づきます。その後で自分の席に着くようにしましょう。
できるだけ相手に近づいて挨拶し、そのあとで自分の位置に戻る。
すると、わざわざ近くまで来て挨拶をしたという身体的表現が、相手と親しくなりたいというあなたの気持ちを代弁してくれます。
また、距離感を感じさせたくないために、相手と会話をしているときは、相手と自分の間には何も置かないのがベストです。物で相手との境界線をつくらないということです。
たとえば、間に飲み物のペットボトルがあるだけでも視界をさえぎり邪魔になります。カフェやラウンジなら、ナプキンホルダーやメニューが相手との間にあるかもしれません。間に物があったら、それがたとえ小さな物であったとしても必ず取り除いてください。
さらに相手との物理的距離を近づける場面を意図的につくりましょう。
たとえば、「これうちのペットの写真なんだけど」と自分のスマホの画面を見せるために相手に近づくのは、自然な行為です。スマホを差し出して相手に渡してしまっては、距離は近づきません。
あくまで自分のスマホを手にしたまま体を寄せて互いの距離を近づけます。
4. 時計やスマホの「チラ見」は悪印象?
相手の話を聞いている最中に、時計を見ると印象が悪くなってしまうので見ないようにする、というマナーを聞いたことがあるかもしれません。
確かに会話の最中に相手が腕時計をチラッと見ていたら、早く話を終えてほしいのかと思ってしまいます。
自分の腕時計やスマホを見るときは、チラ見をしないで、むしろしっかり見たほうが印象はよくなります。時計をさりげなく確認しようとしている姿が、相手からは気がそれているように見えてしまうのです。
時計やスマホを見るときは、頭を下げるのではなく、時計やスマホを目線まで持ち上げてしっかり見るようにしましょう。
見るタイミングは、相手の話が途切れて間ができたときや、お茶を飲むなど別の動作をするとき。これならば自然に見ることができます。
5. オンラインで知り合った人と、初めて会うとき
今時のコミュニケーションの特徴は、実際に会ったときの第一印象の前に“第ゼロ印象”があることです。
一昔前と違って、ホームページやブログなどのインターネット情報や、FacebookやInstagramなどのSNSからの情報でリアルで対面する前にその人の姿を見ることができます。
このように、実際に対面する前の情報が与える印象のことを、私は“第ゼロ印象”と呼んでいます。
写真や動画だけではなくメールやLINE、電話での印象も“第ゼロ印象”です。メールやLINE、電話でやり取りしているときはきちんとしていたのに、実際に会ってみたら思ったよりきちんとしていなかった、という場合もあるでしょう。
大事なことは、第ゼロ印象と第一印象に差がないことです。
すでに持っている印象と同じであれば、初めて対面したときにも違和感なくスッと受け入れてもらうことができます。
しかし、LINEのやり取りではスタンプも多く親しみやすい人のように感じたのに、実際に会ってみたら、無表情で無愛想だったら相手は戸惑ってしまいます。
そうならないためには、自分が相手に与えている第ゼロ印象と第一印象がどんなものか知っておくこと。次のようなことに気を付けましょう。
6. 本書のココがすごい!
今回紹介した、『最初の15秒でスッと打ち解ける 大人の話し方』矢野香著(日経ビジネス人文庫)のすごいところは下記に集約される。
①多くの人が苦手意識を持つ、初対面、新しい環境にフォーカスしているところ。
②具体的な会話例がいくつもあり、そのまま実践で使えるところ。
③会話だけではなく、しぐさや目線、相手との物理的距離感などあらゆる方向から相手と打ち解ける方法がわかるところ。
【著者】 矢野香
国立大学法人長崎大学准教授、スピーチコンサルタント。
専門は心理学・コミュニケーション論。NHKでのキャスター歴17年。主にニュース報道番組を担当し、番組視聴率20%超えを記録。
在局中からスピーチ研究に取り組み、退局後、博士号取得。大学教員として心理学に基づいた「他者からの評価が上がる話し方」を研究。
スピーチコンサルタントとしては政治家や経営者、上場企業CEOなどのクライアントを多く持ち、「ここぞ」という失敗できない場面で信頼を勝ち取る「正統派スピーチ」を伝えることを使命としている。
著者公式サイト/https://authenty.co.jp/
X/https://x.com/yano_kaori_
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▶前回:気になる彼に「どんな女性がタイプ?」という質問はNG。では、なんて聞くのが正解?