介護労働者「賃金を全産業平均以上に」“離転職による人手不足”が常態化…厚労省へ要請書提出

全国労働組合総連合(全労連)や日本医労連、生協労連らで構成される全労連介護・ヘルパーネットは7月11日、厚生労働省に「介護報酬を引き上げ、介護労働者の処遇改善等を求める要請書」を提出し、会見した。

国庫負担での大幅な介護報酬引き上げなど要請

要請書は武見敬三大臣宛てに提出されたもので、下記の4点を実現するよう訴えている。

1.介護職場で働くすべての労働者の賃金を全産業平均以上に引き上げること

2.介護保険料や利用料の引き上げは行わず、国庫負担の引き上げで介護報酬を大幅に引き上げること

3.介護労働者の処遇改善を図ること
①人員配置基準を大幅に引き上げ、介護利用者がその尊厳を保持し、介護労働者が安全と健康を確保できるようにすること
②夜勤体制の最低基準を複数体制とすること
③連続勤務による過労を防止するため、11時間以上のインターバル規制について周知徹底を図るとともに導入する事務所を大幅に増やすこと

4.介護職場の環境改善を図るため、以下の事項を実現させること
①感染症によるクラスターが発生しないようマスクや消毒液などの備蓄をはじめ、検査キットや換気設備など施設改善対策を講じること
②登録ヘルパーのスキルアップに向けた研修の機会を付与するなど学びの機会を保障すること
③介護報酬の利用範囲を限定、処遇改善や施設整備などが確実に行われるようにするとともに、事業者の流用で利用者・労働者に負担をかけないようにすること

厳しさ増す状況「離転職による人手不足が常態化」

秋山正臣全労連副議長は会見で、介護現場の現状と要請の背景について、次のように説明した。

「介護保険制度の発足以降、利用料や保険料の引き上げが続いている一方で、介護労働者の処遇改善は進んでいません。

介護労働者の離転職と、それによる人手不足が常態化しており、また、物価上昇や実質賃金の低下が続き、介護労働者の生活は厳しさを増しています。

介護労働者の処遇改善、環境の整備を実現し、同時に利用者にとっても、安心して利用できる介護にしていくことは不可欠です」

一方、厚労省の対応については「若干は評価したいが、現実として現場の状況改善は進んでいない」と指摘した。

「昨年から今年にかけて、介護報酬を改訂するなど、厚労省側にも一定の対応・努力はみられました。

しかし、介護労働者の賃上げのため、2.5%のベースアップを目指すということが言われていますが、その数値には至っていないというのが現状です。

また、『研修の機会や学びの機会の保障する』ことについても、人材不足で代替要員の確保ができないことから、十分に学ぶことができない状況にあります。

さらに、DXやICTで効率化を図ってはという話も上がりますが、介護の現場でこうした技術を活用することは、なかなか難しいという現実があります。

今回の要請では、こうした点を含めて来年度の予算でより一層の処遇改善が行われるよう、厚労省に求めてきました」

処遇改善、厚労省側も「やらなければならない」と認識

なお、厚労省側も処遇の改善については「やらなければならないこと」と認識しているようだ。

「賃金を全産業平均以上に引き上げるという点など、引き続き処遇改善の取り組みを進めていきたいということでしたので、こちらからも重ねて協力を要請しました」(秋山副議長)

記者会見ではほかにも、報酬引き上げについて臨時改訂を含めて対応するよう要請したことや、今年の報酬改定後の状況について速やかに検証するよう求めたことも明かされた。

「介護はこれから、ますます必要不可欠となる産業であり、その点において『成長産業』であるといえます。それにもかかわらず、働く人が減っていくという状況は、何としてでも変えなければいけません。厚労省にはぜひ、現場の実態を踏まえた適切な対応をしていただきたいです」(同前)