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●夏目漱石『吾輩は猫である』にも登場する銀座を代表するうなぎの名店『竹葉亭』の魅力を深堀りしてご紹介します。

 うなぎの老舗『竹葉亭』の創業は1866年、江戸時代末期、160年の歴史を誇ります。永井荷風の『断腸亭日乗』や夏目漱石の『吾輩は猫である』、泉鏡花『婦系図』といった文学作品にも登場し、数々の文豪たちが愛した店。美食家だけでなく文学好きにもはずせない店です。


銀座8丁目、風格ある佇まい

 当初、新富町にあった本店は関東大震災で倒壊し、現在の木挽町(東銀座)に移転しました。木挽町といえば、老舗料亭などが立ち並ぶエリア。大人の雰囲気が漂います。


落ち着いた雰囲気の一角にあります

 格式が高すぎてちょっと気後れしちゃうかも……と思う人もいるかもしれませんが、ご安心を。竹葉亭で一番人気のうな丼は、お吸い物とお新香付きで、「鰻お丼A」(3300円)と「鰻お丼B」(3740円)の2種類。

 銀座で、うなぎで、この破格値。とくれば、行くしかないですよね! ちなみにAとBの違いはうなぎの大きさです。ではさっそく実食です!

待つ間の「胡麻酢和え」と「うまき」も至極の旨さ!


落ち着いた雰囲気のテーブル席

 うなぎが焼き上がるのを待つ間に、まずは火照った体をクールダウンすべく「胡麻酢和え」(770円)を。


「胡麻酢和え」。ガラスの器も涼しげでいいですね

 薄切りのレンコンとクラゲを練りゴマと酢で和えた冷たい一品。ゴマのほのかな甘みと酢のバランスがちょうどよく、ちびちびつまみながら、ビールを一杯飲めば至福の時がやってきます。


「うまき」。うなぎのふわふわと、卵のふわふわが絶妙な食感を生む絶品

 ふわっふわな卵でうなぎを巻いた「うまき」(1980円)もぜひ。ほんのり甘めに味付けされた卵が、しっかり肉厚のうなぎの存在感を引き立てます。

鰻お丼はすっきりとしたタレが絶品


鰻お丼B。吸物と香の物がセットになっています

 やってきました、鰻お丼! ふんわりと蒸したあとに、100年以上にわたり継ぎ足してきた秘伝のタレを付けながら、じっくりと焼き上げています。タレはすっきりとしていて上品な味わい。甘すぎず辛すぎず、あっさりしすぎず、思わず「コレよ、コレ!」と膝をたたきたくなる完璧な味。お箸が止まりません!


香ばしいタレとふっくらしたうなぎ!

「当店のうなぎは脂が乗っていてもしつこくないとおしゃっていただけます。白焼きとかば焼きの両方を召し上がるコースでは、『多いかもしれない』とご心配されるお客様がいらっしゃいますが、いざ召し上がってみると皆さん両方召し上がりますね」と六代目の大女将・別府淳子さん。

 その言葉通り、あっという間に完食してしまいました。美味しすぎます……!

斎藤茂吉も魯山人も愛したはなれもぜひ利用したい


はなれのお座敷。都会にいることを忘れそうな静謐な庭園があります

 2名以上からコースを予約すると、はなれの個室を利用できます。個室は関東大震災のあと、1924年(大正13年)ごろに建てられたそうです。うなぎ好きで竹葉亭を贔屓にしていた斎藤茂吉は、この竹葉亭の離れで、長男の茂太とその婚約者との両家顔合わせをしたそうです。

「お座敷は昔のまま。毎月、掛け軸を替え、季節のお花を生けています。花屋さんだけではまかなえないお花もありますので、自宅や店の屋上で育てて工夫しております。お客様にはお味はもちろん、落ち着いてゆっくり召し上がっていただき、心も満足いただきたい。その思いを今後も継承したいと思っております」(別府さん)

まとめ


すべてが一流、満足感でいっぱい

 北大路魯山人は『鰻の話』(昭和10年)で、うなぎの一流店として竹葉亭を挙げ、「風格がある」「美を知るものは、たとえ商売が何屋であっても、どこかそれだけちがうものがある」と、味だけでなく店のしつらえまで大絶賛。銀座ならではの歴史ある店。おもてなしの心を味わうためにもぜひ訪れたい名店です。

●SHOP INFO

店名:竹葉亭 本店

住:東京都中央区銀座8-14-7
TEL:03-3542-0789
営:11:30~15:30、16:30~21:30(20:00LO)
休:日・祝

(取材・文◎松みのり)