気候と土壌に恵まれた台湾では様々なフルーツが収穫される。農業技術も発達しており、優良品種が次々と誕生している土地でもある。そんな台湾なので、みずみずしいフルーツを味わうことは旅行者の楽しみの一つとなっている。この時季、市場にはマンゴーやパパイヤ、パイナップルなどトロピカルフルーツがずらりと並ぶ。フルーツを用いたスイーツは多種多様だが、今回は萬華にある昔ながらのフルーツデザート店『珍果』のカットフルーツとフレッシュジュースを紹介したい。そして、迪化街の北側にある『咖芳工作室』では台湾では珍しいフルーツ大福が味わえる。日本のものとは異なる風味が新鮮な印象だ。どちらも目利きの店主が選び抜いた良質な台湾フルーツを楽しめるのが嬉しいところ。

半世紀以上変わらぬ評判、厳選したフルーツを賞味。

 華西街觀光夜市にあるフルーツデザート店。ガラス張りの大きな冷蔵庫が目を引く。中には色鮮やかなフルーツが整然と並ぶ。店主の余柏松さんは2代目。13歳の頃から店を手伝い、現在も毎朝4時に息子と一緒に市場へ出かけるのが日課だ。訪れるのは台北市内と郊外にある2か所の専門市場。何軒もの店を一軒ずつ丹念に見て回り、2時間以上かけて仕入れを行う。「質のよさはもちろんのこと、手頃な値段のものを選んでいます」と余さん。店の商品がリーズナブルな理由はここにある。カットフルーツの盛り合わせも、今が旬のマンゴーも1皿60元と安い。マンゴー好きには特におすすめしたいところだ。さらにレトロなデザインのグラスに入ったフレッシュジュースもぜひお試しを。

珍果
ツェンクオ

台北市萬華區華西街觀光夜市113番ブース 02−2308−9390 12:00~23:00 月3日間休み ミックスフルーツジュース50元。

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ジューシーな甘さに顔がほころぶ、フルーツ大福。

 家族経営の小さなスイーツ工房。街の中心部からはやや離れた住宅街にある人気店で、看板商品は「フルーツ大福」。季節によって種類は替わるが、マンゴーやキウイ、パイナップル、メロン、イチゴなどが定番とされる。なかでも人気はマンゴーとパイナップル。フルーツは郊外の専門市場で仕入れるほか、各地の小規模農家からも逸品を取り寄せている。パイナップルは屏東県龍泉産の金鑽種を使用。小ぶりだが、繊細な甘さがたまらない。餡には白小豆餡ではなく、甘さ控えめでクリーミーな緑豆餡を用い、フルーツ本来の甘さと香りを引き立てている。店内は小さいながらもイートインが可能。賞味期限は冷蔵で4日間。滞在最終日に訪れ、お土産に購入していく人も多いという。

咖芳工作室
カーファンコンツオスー

台北市大同區迪化街二段296巷9號 02−2598−9728 9:30~21:00 無休 1個65元~。店内ではコーヒーも楽しめる。

文/片倉真理 
※この記事は、No. 128 2024年8月号「&Taipei」に掲載されたものです。

台北在住ライター・コーディネーター 片倉真理

1999年から台北に暮らす。台湾に関する書籍の執筆、製作のほか、雑誌のコーディネートなども手がける。台湾各地を隈なく歩き、料理やスイーツから文化、風俗、歴史まで幅広く取材。著書に『台湾探見』、共著に『台湾旅人地図帳』(共にウェッジ)、『食べる指差し会話帳』(情報センター出版局)など。