森本聡子さん/1987年生まれ。年間600杯以上のラーメンを食べつつ体型維持も視野に入れたラーメンライフにも注目。イベントプロデュースやタレント活動も行う
●最近、町中華に新たな需要を生んでいるのが、食堂としてだけでなく酒と楽しむスタイル。年間600杯を食すラーメン女子・森本聡子さんも、町中華飲みにハマっている一人。そんな森本さんに、至極の町中華飲みに案内してもらいました。
店内の壁という壁をメニュー札が覆い尽くす光景が異彩を放つ、東京・飯田橋の『長崎 雲仙楼』。和洋中のジャンルを問わず、定番から変わり種まで網羅するその品数は年々増え続け、現在では460品を超えるという。
「うちは材料と時間さえあれば、お客さんのリクエストに応えて何でも作るの」と語るのは、二代目店主の佐藤光広さん。
この緑のメニューだけは、初代の頃から継続している料理が記載されている
麺料理だけでもちゃんぽんにラーメン、焼きそば、うどん、そば、パスタなど幅広く、さらにそれぞれの具材や味のバリエーションも無数にある。さらにはタンメンの麺なしなど、トリッキーながら糖質制限中には意外と嬉しいメニューなどもあるから面白い。こうしたお客のリクエストで好評だったメニューをレギュラー化するうちに、この数にまで至ったという。
料理の注文は手書きで手渡すスタイル
初代店主は佐藤さんの叔父。故郷・長崎県雲仙の名物でもあるちゃんぽんと皿うどんが売りの中華食堂を、上井草とここ飯田橋で営んでいた。同郷で共に暮らしていた佐藤さんは16歳で上京し、その店を数年手伝った後は、八重洲の地下街にある居酒屋などで長年料理人として勤務。叔父が亡くなった後も店を守ってきた叔母の頼みもあり、40歳で店に戻ってきた。
カオスなメニューの数々がお客への尽きない愛の証
佐藤さんの代で生まれた新メニュー「カレーちゃんぽん」950円も人気。濃厚なスープの旨味にスパイシーな風味が加わりさらに食欲をそそる
開業時からの看板でもあるちゃんぽんは、変わらぬ味を守り続けている。長崎の製麺所でも希少になりつつある、中国由来のかん水「唐灰汁」を使用し、独特
の風味がある『三栄製麺』の麺を使用。
蒸したちゃんぽん麺はモチモチとなめらかで、皿うどんは極細の生麺を揚げたてで提供する。具材として欠かせない赤い片はんぺんや丸天、きくらげ天も、長崎の『石橋蒲鉾店』から取り寄せる。スープは砕いた鶏ガラと豚骨のみで時間ほどかけてしっかりと煮出した、濃厚な旨味の白湯スープ。塩と砂糖でほんのり甘めに仕上げるのが、本場ならではのバランスだ。
昔はちゃんぽんの蒸し麺は一度茹でていたけど、少し硬めの方が旨いから、いまはスープでサッと煮るだけ」と佐藤さん
守り継がれてきた本格ちゃんぽんの美味しさに加え、森本さんがこの店を推すもう一つの理由が、夜の“食べ飲み放題”にある。
「一人3時間3300円という破格で、夜の常連さんの多くはこれ一択でいつも賑わっています。かつて居酒屋で修業したご主人ならではの、オリジナリティ溢れる多彩なメニューが、どれでも何品でも楽しめるなんてお店はここだけ。しかも、たこ焼き器まで用意してあって、自分たちで焼いて楽しむこともできます。この店ならではのエンタメ性とお客さん想いな店主の姿勢は、町中華の鏡です」と森本さん。
女将の初子さんのアイデアで、お客を楽しませるために始めたという「たこ焼き」。タコは扱っていないため、具材は赤ウインナーと紅ショウガ
夜になると続々と常連客が集まり、店主ご夫妻との軽妙な会話も交えながら、店は温かな雰囲気に包まれる。訪れる度に「ただいま」と言いたくなるような、郷愁をそそるこの空気感こそが、町中華酒場に“沼る”最大の理由なのだろう。
●SHOP INFO
店名:長崎 雲仙楼
住:東京都文京区後楽2-3-17
TEL:03-3813-2921
営:11:30〜15:00、18:00〜24:00(※土曜は昼営業のみ)
休:日・祝
※『食楽』2024年春号からの転載記事です。記載情報は取材時点のものになります