耐用年数=寿命ではない!
ここまで、耐用年数はマンションそのものの寿命とは関係ないことをお伝えしてきましたが、だからといって寿命がないわけではありません。
ここでは、マンションの平均寿命や寿命を左右するポイント、寿命の決まり方を解説します。
鉄筋コンクリート造マンションの平均寿命
国土交通省の発表によると、鉄筋コンクリート造マンションの平均寿命は68年です。
法律で定められている耐用年数はあくまでも資産価値を算出するもので、住むことのできる年数に決まりはありません。
定期的にメンテナンスを行い、物件の構造や設備に問題がなければ、築80年や築100年のマンションでも住むことは可能です。
コンクリート造の建物の寿命は120年とも言われており、リフォームやメンテナンスなど延命措置を行うことで、最長150年も住み続けられるとされています。
ただし、実際問題、資産価値の下がった物件をあえて購入しようという人は少なく、空室率が上がります。
また、耐震性の問題から、補強工事をするよりも建て替えたほうが良いと判断され、建て替え工事計画を進めることもあります。
さらに、日本ではマンションの歴史が浅く、建設が始まったのは1960年前後です。
築70年を超える物件は少ないため、マンションの寿命68年というのは、あくまでも平均であり、中には30~50年前後で壊されるマンションも存在します。
参考元:https://www.mlit.go.jp/common/001014514.pdf
タワーマンションは寿命が短い
昔に比べ鉄筋コンクリートの性能が高くなったこともあり、きちんとメンテナンスをすれば、築100年を超えても住むことができます。
タワーマンションもしっかりメンテナンスを行えば100年以上経っても住むことが可能です。
しかし、タワーマンションの場合、メンテナンスにかかる費用が高く、住民からの修繕積立金だけでは足りません。
実際、20階以上あるマンションで修繕費としてメンテナンスにかかる費用を回収できているのは、全体の約2割しかないと言われています。
さらに、修繕費は築年数が経過するほど高くなるため、適切なメンテナンスができず、老朽化してしまいます。
その結果、30~40年で建て替えが行われることが多いです。
マンションの寿命を左右する4つのポイント
マンションの需要を左右する要因の中でも特に重要な4つのポイントをご紹介します。
構造
マンションの寿命を決める上で重要なのが構造上の問題です。
マンションをはじめとした建物には、耐震基準があります。
耐震基準とは、一定の強さの地震に耐えられるようにと定められた基準のことです。
日本では、耐震基準を満たした構造でなければ、建物を建築することができません。
しかし、現行の耐震基準が施行されたのは、1981年6月1日です。
1981年5月31日までに確認申請を受けた建物は「旧耐震基準」と呼ばれ、現在の新耐震基準を満たしていないのです。
そのため、新耐震基準を満たしていないマンションは、構造上に問題があるとして、寿命を早く迎える傾向にあります。
なお、旧耐震基準では、震度5程度で建物が倒壊しないことが基準でしたが、現在の耐震基準では震度6強から7程度の地震でも倒壊を免れる耐震性が求められています。
メンテナンス
マンションの寿命にはメンテナンスの有無も大きな影響を与えます。
比較的築年数の浅いマンションの場合、作成された長期修繕計画書に基づいて、定期的にメンテナンスが行われています。
一方、築年数の古いマンションの場合、長期修繕計画を立てていないところも多く、劣化や不具合が生じてからメンテナンスや修繕をしているようです。
このように新築から10~20年以上何もメンテナンスを行っていない場合、きちんとメンテナンスされている物件に比べ、建物の寿命が短くなる傾向にあります。
また、現在寿命を迎えているマンションの多くは、1960~70年代に建設されたものです。
鉄筋コンクリート造の寿命から見れば、耐震工事さえきちんとしていれば、まだまだ済み続けることができるはずです。
しかし、この時期に建てられたマンションの中には、配管をコンクリート内に埋め込んでしまっているものもあります。
配管の寿命は使用されている素材にもよりますが、長くても30年程度です。
配管の寿命を迎えているにも関わらず交換できないため、メンテナンス上の問題により建て替えするしか方法がありません。
使用している建材
マンション建設にはコンクリートが使われていますが、実はこのコンクリートにも質があります。
使われているコンクリートの質によっては、寿命を早く迎えることになります。
特に、建設ラッシュだった1970年代に建てられたマンションでは、粗悪なコンクリートが使われていたケースが散見され、一部のマンションで雨漏りが相次いで発生するなどの問題が生じています。
また、給排水管もさびやすいメッキ銅管が使われている場合、腐食しにくい塩化ビニールに比べ、劣化が早いです。
このように、使用している建材によっても、マンションの寿命は大きく左右されることになるので、注意が必要です。
周辺環境
マンションの寿命は、マンション周辺の環境や立地によっても異なります。
例えば、海に近ければ潮風による塩害が起こり、マンションの寿命にも影響を及ぼします。
また、日当たりの悪い立地はカビが生えやすいため、悪影響を及ぼす可能性があるでしょう。
マンションの寿命の決まり方
マンションの寿命は、構造やメンテナンスの有無、使用している建材などに左右されるため、物件によって異なります。
また、日本のマンションはまだ築年数が60年程度のものが多いため、寿命かどうかをはっきり判断するのは難しいのが現状です。
しかし、寿命かどうかを判断するいくつかのポイントがあるので紹介します。
・耐震基準を満たしていない
・修繕工事費用と建て替え工事費用に大きな差がない
・建て替えをすることで経済的なメリットがある
マンションは築年数が経過するほど修繕費がかかります。
もしも、修繕にかかる費用と建て替えにかかる費用にそれほど大差がない場合、経済的な観点から寿命を迎えていると判断される可能性があります。
(広告の後にも続きます)
寿命が長いのはどんなマンション?
マンションを購入するならできるだけ寿命が長い物件を選びたいと考えるものです。
マイホームとして購入する場合、人生の中でも非常に大きな買い物になるためです。
そこで続いては、寿命が長いのはどんなマンションの特徴についてみていくことにしましょう。
管理状態について
マンションに限った話ではありませんが、建物の寿命は管理状態で大きく変わります。
堅牢なコンクリート製の建物でも、長期的に風雨や日差しにさらされ続ければ、自然と劣化してしまいます。
少しでも良い状態を維持するには、定期的なメンテナンスが必要不可欠です。
建物の寿命を伸ばすには、定期的に外壁塗装や屋上防水などを行わなければいけません。
これらを怠ると内部に水が入り込むなどして、劣化が進みやすくなってしまいます。
また、鉄製の器具に関しては錆止めを塗装したり、扉に油を指したりといったメンテナンスも必要です。
マンションの維持管理は、管理組合が行います。
国土交通省は、「長期修繕計画標準様式」や「長期修繕計画作成ガイドライン」を策定し、マンションの管理組合に対して計画的な修繕を行うことを促しています。
「長期修繕計画作成ガイドライン」では、25年先の大規模修繕を想定した計画を立て、それに則った修繕を推奨しているのです。
しかし中には、これまでの修繕履歴を記録していないといった、ずさんな管理体制のマンションもあります。
そのようなマンションを購入するとトラブルも起こりやすいので、購入前に修繕計画や修繕履歴の有無も確認しておきましょう。
立地条件について
立地条件が建物の寿命に影響を与える可能性もないとはいいきれません。
周りに高い建物がない場合だと、雨や風、日差しの影響をもろに受けるため、外壁・屋上防水はダメージを受けやすくなります。
逆に周りに高い建物が多くて日当たりが悪いと、湿気が溜まりやすくなり、コケやカビの温床になるリスクが高まります。
海岸の近くにある物件であれば、潮風で鉄骨を含む金属が錆びやすくなってしまうでしょう。
外壁などは環境に合わせたメンテナンスを適切に行えば、劣化のスピードを遅らせることができます。
立地条件に見合う修繕計画が立てられているのであれば、「海の近くはやめておこう」などの制限を設ける必要もなくなります。
どのような立地条件でも一長一短があるので、一概にこのエリアなら最高の立地だと言い切ることもできません。
そのため、エリアに関しては通勤アクセスや生活の利便性、周辺環境など「どのような暮らしをしたいのか」といった点に重きを置くようにしましょう。
そして、希望するエリアの特性に合わせた適切な管理が行われているかどうかをチェックし、購入する物件を最終決定するのが望ましいです。
建材について
どのような建材を使っているかという点も確認しておきましょう。
メンテナンスを適切に行っていることが大前提ですが、長持ちしやすい資材や設備を使っていれば、その分寿命は長くなります。
マンションの場合だと、使われているコンクリートの品質が寿命に直結します。
セメントに対する水の比率が低いものを使っていたり、鉄筋を覆う部分が分厚かったりすると、ひび割れが起きにくくなるので寿命も長くなりやすいです。
ひび割れが起きなければ、コンクリートの中にある鉄筋も錆びにくくなるためです。
マンションの建て替えのきっかけとなるのは、建物よりも給排水管の劣化が多く見られました。
しかし近年は、錆びやすいメッキ銅管ではなく、腐食やつまりにも強い塩化ビニール管や架橋ポリエチレンを採用するマンションも増えています。
また、配管交換が簡単にできるサヤ管ヘッダー工法の普及により、良い状態を保ちやすくなりました。
そのため、比較的新しいマンションであれば給排水管の劣化で建て替えをしなければいけないというケースは減少傾向にあります。
100年コンクリートや200年コンクリートの実用化も
最近だと、100年以上の耐久力を有する100年コンクリートや200年コンクリートの実用化も進められています。
100年コンクリートは、一般的なコンクリート建造物の設計基準強度が24N/㎟に対し、30N/㎟と定められています。
30N/㎟は、1㎠で約300kgの重さに耐えられる強度です。
耐久性が高くなっているのは、コンクリートの水セメント量が50%以下となっているためです。
200年コンクリートは、100年コンクリートよりもさらに水セメント量が少なくなっています。