トレードで勝てるようになるためには、「知識量」や「技術」がものを言う場面もあります。しかし、それだけでは成功は保証されない、とFXトレーダーであるHiro氏は言います。Hiro氏の著書「FX 環境認識の定石」(日本実業出版社)より、トレードで勝ち続けるために欠かせない「ある要素」について、詳しくみていきましょう。

長く相場で戦っていくための「資金管理」の能力

相場で生き残るための最重要スキルは資金管理です。トレードに損失はつきものですが、それを最小限に留めることが生き残る技術となります。入金から出金、税金の管理まで、資金が動く全段階の厳密な設計がなければ、相場で成功するのは難しいでしょう。

相場で生き残るための最重要スキル

資金管理とは、文字通り自分の大切なお金を管理しながらトレードをしていくことです。一般的なお金を稼ぐための仕事とトレードの最大の違いが、行動して資金がマイナスになることがあり得るかどうかということです。

当たり前の話ですが、普通に会社員をしていて給料がマイナスになるということはありません(業務上のミスによる損失を給料から引くことすら基本的に違法です)。

一方のトレードの場合、どんなに優れた手法であったとしても必ず負けはあります。その負けの際にどれだけ損失を最小限に抑えられるか、自分の大切な資金を守れるかが、相場で長く戦っていくためには何よりも大切な行動になります。

いわば資金管理とは、相場で生き残るための最重要スキルだともいえます(環境認識が利益を上げていくための最重要スキルだと説明したことと対比して考えてみてください)。



[図表1]各最重要スキル 出典:「FX 環境認識の定石」(日本実業出版社)より

資金管理の3つの段階

一般的に資金管理というと、負けた際に証券会社の口座内の資金損失をいかに管理するかという文脈で語られることが多いです。ですが、個人的にはこれだけでは足りないと考えています。お金が動くすべての段階でどのように管理をしていくか、あらかじめ設計しておくのがおすすめです。

例えば入金の段階。普段の給料や貯金額、時期別にお金を使う予定の有無、家族構成などから自分がどれだけリスクを取ることができるのか。最悪トレードで資金を飛ばしたとしてもいくらくらいまでなら耐えられるのか。このあたりをよく考えてFX口座への入金額は考えるべきです。

そして、口座内での資金に対しては1回のトレードでいくらまでの損失なら許容できるのか、どのくらいの損切り幅なら許容できるか、ロットはどうするかなどを考えていきます。

また、トレードで利益を出した際にはどのタイミングでどれくらい出金するのか、その出金したお金はいくら使っていいのか、翌年の納税分はどのように管理するのか、までは最低限考えておく必要があるでしょう。



[図表2]資金管理は3つの段階を意識する 出典:「FX 環境認識の定石」(日本実業出版社)より

このように、お金が動くすべての段階で自分のお金をどのように管理するのかを考えるのが資金管理であり、長く相場に生き残っていくための秘訣です。

資金管理は1回でもミスをしたら相場から退場しかねませんし、自分の人生においても取り返しのつかないことになりかねません。少し脅かすようですが、それくらいミスが許されず、緻密な設計が求められる部分です。ここだけはしっかり固めてからリアルトレードには臨むようにしてください。

Point

●資金管理は資金がマイナスになるリスクを最小限に抑えることが重要

●入金や出金、税金の管理など、お金が動くすべての段階での厳密な計画が必要

●資金管理は相場生存に直結し、ミスは許されず、慎重な計画が要求される

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“最短最速”で稼げるようになる「トレード哲学」とは

「知識の量」だけではトレードでの成功は保証されません。技術や分析法も重要ですが、相場ではトレーダーとしての心構えや考え方である「マインドセット」が鍵となります。投資は自己責任であり、スキルは自分で身につける必要がありますが、これらを理解し、マインドセットを整えることが、トレードでの成功につながっていきます。

「知識の量」で結果が出るわけではない

トレードで勝てるようになるには「技術を身につけないといけない」ということはおわかりいただけたかと思います。そのために、高度な分析方法やインジケーターの使い方などを学習する、この行為自体は間違っていませんし必要なことです。ただし、ここが落とし穴だと私は感じます。

残念ながら、技術を身につけるだけでは勝てないのが相場の世界です。「なんだ、これまでと言っていることが違うじゃないか」と感じたかもしれません。実は、トレードには技術以前に大切なポイントがあります。勝ち続けるために必要なのがトレーダーとしての心構えや考え方である「マインドセット」です。

マインドセットというと、ただの精神論のように聞こえるかもしれません。事実、興味を持たないトレーダーも多いような印象を受けています。しかし、マインドセットをしっかりと持っていることが、勝てるトレーダーとそうではないトレーダーの大きな違いといっても過言ではありません。

では、なぜトレーダーにとってマインドセットが重要なのでしょうか。

それは、今まで私たちが生きてきた一般的な社会と相場の世界の違いに依るところが大きくあります。どういうことかというと、例えば多くの人が経験してきたであろう高校受験や大学受験、資格試験などは、勉強量、特に「インプット量=知識」が多ければ多いほど有利になりやすかった世界です。

社会人になってもこの傾向はあり、仕事にもよると思いますがやはり知識量の多さは武器になります。

つまり、真面目に勉強するほど報われやすい社会で私たちはずっと生きてきました。しかし、相場の世界はそうではありません。大事なのは知識量ではなく、どのような知識をどこでどうやって使うのか、なのです

トレードの世界には相場分析の方法も含めさまざまなトレード手法があります。しかし、それらもしょせんはただの道具にすぎません。多少よい道具を使ったところで、使う側が未熟だと使いこなせず、結果を出すことは永遠にできないのです。逆に、大したことのない道具でも、熟練の職人が使えばある程度の結果は残せるはずです。

資金管理の項でも説明したとおり、普通に働いて給料がマイナスになることはないですが、トレードの世界では普通にマイナスがあり得るわけです。これも大きな違いです。また、普通に働いていたら稼げない金額を一瞬で稼げてしまうこともあります。この極端な資金の増減が、思っている以上に私たちのメンタルを揺さぶってくるのです。

このメンタルのアップダウンにどう対処するか、これもトレーダーとして考えなければならない大事なことだと私は感じます。

トレードで稼いでいくと決めたときに、そもそもトレードとはどういうものなのか、トレード学習の方向性やその方法、実際のトレードでの立ち振る舞い方などを考える際の軸になってくるのがマインドセットです。

いわば各自のトレード哲学をしっかりと固めたうえでトレードに臨む。これが実は遠回りであるようで、最短最速でFXで稼げるようになるための方法だと、私自身の経験や周りのトレーダーさんを見ていて思います。