経済的に困ったら、遠慮なく相談を
――医療ソーシャルワーカーの制度自体に、課題点というのはあるのでしょうか?
田巻:なり手不足で、医療機関が募集をかけてもなかなか人材が集まらず、困っているところが多いと思います。
また、医療ソーシャルワーカーは常に情報や技術をアップデートし、質の担保をしていかないといけないという課題を抱えていると思っています。新しい制度が次々と出てきますし、人と関わるので面接技術や会話能力も磨いていかないといけません。
あとはやはり医療ソーシャルワーカーという職業の認知度の低さですね。皆さんに知ってもらうための働きかけにも、引き続き力を入れていかないといけないと思っています。
誰もが安心して医療を受けられるようにするためにも、医療ソーシャルワーカーの存在は重要
――誰もが医療機関にかかって、安心して治療を受けられる社会にするために、一人一人ができることはどんなことでしょうか?
田巻:経済的な不安があって、医療を受けにくいと思っている人は、役所でも医療機関でもお金に困っているということを遠慮なく言ってもらいたいです。その方が手の打ちようがあり、こちらも助かります。
もし医療ソーシャルワーカーが対応できないことがあっても、自治体につなぐことができるので、安心して相談してもらえればと思います。
あとは周りで困ってそうな人がいたら、「こういう制度があるみたいだから医療機関で相談してみたら?」と、少しお節介になることが大事かなと思います。ご近所さんとの関係性も希薄になっているので難しいところではあると思うのですが、実際にそういった声かけで医療につながった例もたくさんあります。その一歩を踏み出してもらえるとうれしいです。
編集後記
経済的に困っている人を助けてくれる制度がさまざまあるにもかかわらず、それが必要な人に届いていない現状を知った取材となりました。
自分のことも、人のこともお金のことに踏み込んで話すのは勇気がいると思いますが、「踏み倒すくらいの気持ちでもいいので、医療機関に行ってほしい」と話す田巻さんからは、どんな人も取りこぼしたくないという強い意志を感じました。
医療ソーシャルワーカーという存在があるということだけでも、覚えていただきたいと思います。