7月23日、大川原化工機に対する違法捜査をめぐる国賠訴訟控訴審の第二回進行協議が行われた。
「大川原化工機事件」の概要
2020年3月、警視庁公安部が「生物兵器の製造に転用可能な装置を経済産業省の許可を得ずに中国に輸出した」として、横浜市に本社を置く化学機械メーカー「大川原化工機」の大川原正明社長と顧問の相嶋静夫氏、取締役の島田順司氏を逮捕。
その後、社長らは勾留され続けた。何度も保釈請求が行われたが、検察の反対意見により却下される。相嶋氏は2020年10月に胃がんが発覚、勾留の執行が停止され外部の病院に入院したが、2021年2月に亡くなった。
2021年7月、検察が公訴の取消しを申し立て、裁判所は公訴棄却の決定を出した。
国賠訴訟は2023年末に一審判決
同年9月、大川原化工機と大川原社長・島田氏、また相嶋氏の相続人が、公安部による捜査や検察の起訴は違法であったとして、国および東京都に対して合計5億6527万円余りの損害賠償を求める国家賠償請求を提起。
2023年12月、東京地方裁判所が国と東京都に対して約1億6200万円の支払いを命じる判決を出した。
2024年1月、被告である国と東京都は「捜査は適法であった」と主張して、控訴。また、大川原社長ら原告も判決は不服であるとして、控訴した。
控訴審の争点は「捜査メモ」
控訴審では、原告側が、「新たに入手した」として警視庁公安部が作成した捜査メモの写しを証拠として提出。
メモには外為法を所管する経済産業省の担当者や担当検事とのやりとりが記録されており、経産省側は公安部の見解に否定的な意見を繰り返し述べていたことや、担当検事が「不安になってきた。(起訴しても)大丈夫か」などと発言したことが記載されている。
原告側は、最終的に経産省が警視庁の見立てに沿う回答をしたのは「警視庁上層部が経産省上層部へ働きかけ、見解をねじ曲げさせた」ためと主張。
一方、被告側は、メモの作成者や入手経路が不明であるため、記載内容の正確性は全く担保されていないと反論している。
10月か11月に証人尋問を実施
6月に開かれた第一回口頭弁論では、原告側が2名、被告側が9名の証人を請求。いずれも、捜査に関与した当時の警視庁公安部の捜査員。
今回の進行協議では証人尋問の実施が決定され、原告側から1名、被告側から2名が証人として採用されることになった。
証人尋問は早ければ10月に、遅くとも11月に行われる予定。
また、12月25日に最終弁論が予定されており、控訴審判決は、来年の3月頃に出される見込みだ。