“風呂キャンセル界隈”という言葉が女性を中心に注目を集めている。単純に面倒で「入らない」という人がいる一方で、ワケあって「入れない」という人もいる。今回は「お風呂に入りたくても入れない」と悩む俳優の遠野なぎこさんに話を聞いた。
◆5日間お風呂に入れない日が続くと「あ、今ヤバいな」
遠野さんは幼少期に母親から虐待を受け、現在に至るまで摂食障害やうつ状態と必死に向き合い続けている。
「もともと、調子がいいときと悪いときの“精神状態の波”の振り幅が激しいんです。うつ状態になると“無気力ゾーン”に入るから、お風呂に入れないばかりか、食欲も湧かないし、洗い物や掃除もできない。目安として、5日間お風呂に入れない日が続くと『あ、今ヤバいな』『結構落ちてるな』って気づきます」
◆「顔すら洗えない日だってあります」
そしてツラいことが重なると、状況はさらに悪化する。
「’16年に愛猫が亡くなり、その4年後にも別の猫ちゃんが亡くなりました。そして一昨年には実母が自死を……。ツラいことがあると心身ともに“落ちてしまう期間”がすごく長くて、本当に何もできない。もはや人間じゃなくなっていくような感覚に近いと思います。
もともと15歳から摂食障害を患っているのですが、ここ数年は拒食状態に入っています。食べたり、家事をしたりする意欲が湧かないので、お風呂にも入れないことが多い。顔すら洗えない日だってあります」
◆“無気力期”を抜け出したいときは…
そんな“無気力期”を抜け出したいときは、遠野さんは「人間に戻ることを諦める」という。
「メンタルが落ちているときに、変に『頑張らなきゃ』って立ち上がろうとすると、水の中であがいてるみたいに反動でどっと疲れちゃう。だったら、無理に人間に戻らなくてもいいやって。それと、私の場合、定期的に遊びに誘ってくれる友人の存在にものすごく救われています。『人に会うために人間に戻ろう』と思えると、なんとかお風呂にも入れるんです」
◆仕事の際は「お風呂に入るのも仕事のうちだ」と思って
現在はコメンテーターとして情報バラエティ番組に出演している遠野さん。仕事に向かうときは、頭を“無”の状態にして風呂に入るという。
「仕事には行けていたので、その前に這いつくばってでもお風呂には入っています。『お風呂に入るのも仕事のうちだ』と思えば気楽になれました。それでもツラいときは、お笑い芸人さんのYouTubeチャンネルを見て、笑わせてもらってツラい気持ちを中和する。自分をコントロールしながら、今日も必死に生きています」
ひと口に「お風呂に入れない」と言っても、それぞれに事情がある。個々が抱える問題を無理に洗い流す必要はないのだ。
【遠野なぎこさん】
俳優。著書に『一度も愛してくれなかった母へ、一度も愛せなかった男たちへ』『摂食障害。食べて、吐いて、死にたくて。』(ともにブックマン社)などがある
取材・文/週刊SPA!編集部 撮影/武田敏将 武馬怜子
※7月23日発売の週刊SPA!特集「[風呂入らない女子]の(驚)生態」より
―[[風呂入らない女子]の(驚)生態]―