まとめ
- あせも対策にベビーパウダーが良いといわれることがあるが、適切な研究で効果が示されたケースはない。
- 米国の政府機関や医学会では「ベビーパウダーはあせもに効かない」「逆効果かもしれない」といった報告もなされている。
- あせも対策としてベビーパウダーは推奨されないのでご注意を。
皮膚科の外来では、患者さんから「ベビーパウダーって、あせも対策に良いんですよね?」というご質問をいただくことがあります。
確かに、ベビーパウダーは「赤ちゃんのあせもや、おむつかぶれに効果的」とメーカー等が宣伝するケースがあります。また、ベビーパウダーという名称ですが、大人のあせも対策としてベビーパウダーが使われることもあるようです。
身近な製品であるベビーパウダーを使うだけで、あせもを予防したり治したりすることができるのであれば、とても便利ですよね。
では、本当にベビーパウダーはあせもに有効なのでしょうか?
今回の記事では、皮膚科専門医が「ベビーパウダーはあせも対策に良いのかどうか?」について検証してみます。
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ベビーパウダーはあせもに有効なのか?
結論から言うと、「あせも対策にベビーパウダーが良い」という説には、現時点では特に適切な根拠がありません。
ベビーパウダーがあせもを予防したり、治したりできるのかについて調べた結果を報告した論文が、残念ながらこれまでに存在しないのです (*) 。
そもそも、ベビーパウダーとは一体何でしょうか?
ベビーパウダーは、タルクという鉱物やコーンスターチなどを主な原料とした粉末です (参考文献 1) 。ただ、成分などに厳密な定義があるものではなく、医学的な裏付けのある製品とは言えません。
(*) 世界中の論文を検索できる PubMed や Google Scholar というデータベースで、「あせも ベビーパウダー」と英語で検索しても、その効果を実際に調べた研究論文は見つかりませんでした (具体的には、あせもを意味する “miliaria” や “heat rash” というワードと、ベビーパウダーを意味する “baby powder” や “talcum powder” というワードを組み合わせて検索しました) 。
キーワードを組み合わせて検索しても、研究論文はヒットしない