世界の専門家はベビーパウダーを推奨しているのか?
では、「世界の専門家はベビーパウダーをあせも対策に推奨しているのか?」を調べてみましょう。
まず、世界の医師の教科書とも言える「UpToDate」という Web サイトでは、あせもの解説ページでベビーパウダーについて言及すらしていません (参考文献 2) 。特に研究結果もありませんから、取り上げる必要性がないと判断しているのかもしれません。
次に、アメリカ合衆国保健福祉省 (日本の厚生労働省に相当します) が運営している MedlinePlus という Web サイトは、「ベビーパウダーは、あせもを治しませんし、予防しません」と明言しています (参考文献 3) 。
さらに、アメリカ家庭医学会のホームページでは、「ベビーパウダーはやめましょう。汗の出口を余計に詰まらせてしまうかもしれません」と警告しています (参考文献 4) 。「効果がない」というよりは「有害かもしれない」というニュアンスで書かれているのです。
以前の記事『あせもの原因と対策を皮膚科専門医が解説!オススメの市販薬は?』でも説明していますが、そもそもあせもとは、大量の汗をかいてエクリン汗腺 (かんせん) が詰まることで生じる皮膚トラブルです。したがって、ベビーパウダーのせいで汗の出口がつまると、むしろあせもに悪影響が出るかもしれないのですね。
以上のように海外の医学サイトや学会による解説を見てみると、
- 専門家たちはあせも対策としてベビーパウダーを推奨してはいない
- むしろ逆効果になる可能性を懸念している
というのが現状と言えるでしょう。
有効性がはっきりせず、副作用のリスクもあるとなると、あまり積極的に使う意味はなさそうです。
ちなみに、ベビーパウダーはおむつかぶれ対策としても医学的には推奨されていません。有効性が示されていないことに加え、赤ちゃんが粉を吸いこんだ場合に肺などに悪影響が出るかもしれないこと、皮膚から粉末が吸収された場合にむしろ毒になるかもしれないことが懸念されています。
前述した UpToDate ではベビーパウダーについて「有害な製品なので使用を避けましょう」と記載されています (参考文献 5) 。あせも対策もそうですが、市販品での対策がむしろマイナスに働くこともあるので要注意ですね。
おむつかぶれについては、おむつの頻繁な交換と洗浄によって、お尻が排せつ物にさらされる時間を短くすることで予防が可能です (参考文献 5) 。
(広告の後にも続きます)
適切な対策で正しく皮膚トラブルを乗り越えましょう!
今回の記事では、ベビーパウダーがあせも対策に有効なのかについて検証しました。
結果として、有効と言えるだけのデータはなく、むしろ逆効果のおそれもあることがわかりました。よかれと思って行った行為によって、症状が悪化しては残念ですよね。
あせもの対策や治療については、専門家が推奨している方法を以前の記事『あせもの原因と対策を皮膚科専門医が解説!オススメの市販薬は?』で解説しているので、ぜひそちらを参考にしてください。
適切な対策で正しく皮膚トラブルを乗り越えましょう!