真夏の庭仕事は草取りが主ですが、この時期植えどきを迎える花もあります。それが夏植え秋咲き球根。鳥取県米子市で庭を丹精する面谷ひとみさんがお気に入りの、植えっぱなしでOKの丈夫でかわいい秋咲き球根を教えていただきました。秋の庭準備を始めましょう!
キラキラ花が輝く夏植え球根ネリネ
ネリネはヒガンバナ科ヒメヒガンバナ属(ネリネ属、Nerine属)に属する多年草の球根植物。南アフリカ原産で、8月のお盆すぎから9月にかけて球根を植えると、10月中旬~12月中旬に花を咲かせます。多くの品種はヒガンバナと同様に葉より先に花が咲き、真っ直ぐ伸びた茎の先にリボンを細工したような愛らしい花を咲かせます。クルッとひるがえる細い花弁の表面にはラメを振ったかのようなキラキラがあり、光を受けて花が輝くことからダイヤモンドリリーという別名があります。
ネリネ・サルニエンシスをもとに改良された園芸品種が多く流通しており、ピンク、オレンジ、紫、複色など多彩なバリエーションがあります。開花すると3週間ほどきれいな花姿を楽しむことができ、花もちがよいことからフラワーアレンジメントでも人気です。
ネリネは細身で他の草花とも組み合わせやすいのがお気に入りの理由の一つ。秋になると草花の茂みからスーッと茎が伸び、30〜40cmほどの高さにフワッと花を咲かせます。同じピンク系のコスモスや夏から咲いているクレオメとも相性がよいですし、紫色のサルビアとも引き立て合います。
レイズドベッドなら球根の管理もラク
一般的にネリネは寒さや過湿に弱く、冬は霜の当たらない場所に移動したほうがよいと言われていますが、私が育てている花壇では植えっぱなしで何年も同じように咲いてくれます。この花壇は50cmほどの高さがあるレイズドベッドなので、水はけや保温性が地植えよりよいためかもしれません。この管理の手軽さもお気に入りの理由です。花後は茎を切り、葉っぱは球根に栄養を送るため黄色くなって枯れるまでそのままにしておきます。肥料は特にネリネのために、というわけではありませんが、さまざまな花が植っているため定期的に供給されている状態です。冬にはいつの間にか葉もなくなって、どこに球根を植えたのか分からなくなってしまいます。そのためパンジー、ビオラなど冬の花に入れ替える際に、ときどきネリネの球根を掘り起こしてしまうことがあるものの、また埋めておけば問題ありません。
希少ネリネを育種する横山園芸
そんなわけで、わりと放任気味に育てているせいか、ダリアなどの球根のように年々太って花数が増える、ということは私の花壇ではないのですが、もっと丁寧に管理したら増えるのかもしれません。今度、ネリネの育種を行っている横山園芸の横山直樹さんに聞いてみたいと思っています。ちなみに私の花壇のネリネはすべて横山園芸のもので、冬のクリスマスローズ展での出店で見つけたものです。クリスマスローズ展は例年2月に行われますが、ハウスで栽培された開花株の希少なネリネに出会えます。
そんな希少ネリネの一つが ‘クリスパリリー’(上)。横山さんの育種品種で、丈夫で育てやすいネリネ・ウンデュラータ(通称クリスパ)と、花が大きいダイヤモンドリリーの交配種です。花は一般的なダイヤモンドリリーに比べると小ぶりですが、丈夫で露地栽培が容易なのが特徴。波打つ花弁がとても繊細な雰囲気です。
もちろん、植えどきを迎える夏から秋にかけては、ガーデンセンターや園芸店で多くのネリネの球根に出会えます。
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冬にグラウンドカバーとしても活躍するオキザリス・バーシカラー
オキザリス・バーシカラーも夏植え秋咲き球根です。カタバミ科カタバミ属の耐寒性多年草で、花は11〜3月くらいまで咲き、冬の花が少ない頃の貴重な彩りとなってくれます。花弁が赤く縁取られ、クルクルと丸まったツボミの様子はキャンディーのようでとても愛らしいです。晴れのときは花が開き、太陽がない時はクルクルと丸まり花が閉じます。
春に開花期が終わってからも緑の絨毯として活躍してくれるのもお気に入りです。オキザリスはカタバミの仲間ですが、このバーシカラーは葉っぱが小ぶりで芝生のような雰囲気になるので、ご覧のようにムスカリなど春の球根花を美しく見せてくれます。グラウンドカバーはいろいろありますが、秋から冬にかけて活躍するものは貴重です。この庭では建物の北側に位置する場所で育っているため、日照がやや不足しているのか株を覆うようには花は咲きませんが、緑の中にポツポツ咲く程度が、かえって私は気に入っています。
オキザリス・バーシカラーの育て方
8〜9月に元肥を入れた土に球根を植え付けます。過湿を嫌うので、地植えの場合は砂を土に混ぜ、やや盛土気味にすると水はけがよくなります。地植えは自然の降雨で十分です。年々咲き広がっていくので、ときどき抜いてコントロールしています。夏は休眠期のため、一見枯れてしまったかのようにも見えますが、秋になると再び葉が瑞々しく茂ってきます。病害虫もなく、ほとんど手間がかかりません。2年目以降花が増えて華やかになります。
Credit
話 / 面谷ひとみ
– ガーデニスト –
おもだに・ひとみ/鳥取県米子市で夫が院長を務める面谷内科・循環器内科クリニックの庭づくりを行う。一年中美しい風景を楽しんでもらうために、日々庭を丹精する。花を咲き継がせるテクニックが満載の『おしゃれな庭の舞台裏 365日 花あふれる庭のガーデニング』(KADOKAWA)が好評発売中!
写真 / 3and garden
スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。