3.各スペースにおすすめの介護リフォーム内容

スペースによって適切な介護リフォームの内容は異なります。ここでは各スペースにおすすめの介護リフォーム内容を紹介します。

3-1.トイレの介護リフォーム

事例:介護保険が適用となったトイレ。開き戸を引き戸に変更し、動作に便利な手すりを設置。

画像出典:https://www.yutoriform.com/products/full/remodeling/case/interior/06/

トイレの介護リフォームについて、介護される人の状況に合うトイレスペース、検討すべき機能、注意点を解説します。

 

3-1-1.介護される人の身体状況に合ったトイレスペースとは

杖や介助者の支えがあってなんとか1人で歩ける方の場合、便座前方や側方に介助者が介助可能なスペースが必要です。便座前方が60cm以上、側方が50cm以上あるとよいでしょう。出入口は介助に必要な広さで、75cm以上が目安です。

車椅子で自力走行できる方の場合、出入口を車椅子が通る広さにしなければなりません。出入口が約80cm以上、便座前面85cm以上、側方が70cm以上あるとよいでしょう。

車椅子で介助者の補助が必要な方の場合、車椅子と介助者が入る十分なスペースが必要になります。出入口は車椅子が通れる広さの80cm以上、便座前方は89cm以上が目安です。便座側方は100cm以上が目安で、70cm以上あると車椅子使用者を前方から介助しやすいでしょう。

3-1-2.トイレの介護リフォームで検討したい機能一覧

トイレの介護リフォームで検討したい箇所・機能は主に以下のとおりです。

出入口(引き戸にする・段差の解消など)

手すり(立ち座りのサポート・つたい歩きなど)

便座(座面の昇降・温水洗浄便座など)

洗浄レバー・ボタン(自動洗浄・文字を大きくするなど)

出入口が広いと、介助者は連れ立って出入りしやすくなります。また、段差の解消や手すりの設置、座面の昇降、自動洗浄などの機能があれば、介護者が1人でできる作業が増え、介助者の負担を減らせます。

3-1-3.トイレの介護リフォームにおける注意点

手すりを設置する場合、設置位置はしっかりと確認しましょう。利用者に合った場所に手すりがないと、かえって使いづらくなってしまいます。縦型か横型か、どの部分に設置するかなどは、利用者と相談して決めることが大切です。

また、リフォームの間はトイレが使用できない可能性もあります。仮設トイレやショートステイ、ポータブルトイレの利用などを検討しましょう。

トイレの介護リフォームについては、以下の記事でも詳しく解説しています。

必見!!トイレの介護リフォームまるわかり

3-2.浴室の介護リフォーム

事例:浴室入り口の段差を解消し、汚れがつきにくく落としやすい浴槽に変更。

画像出典:https://www.yutoriform.com/products/water/bathroom/case/11/

介護に最適な浴室スペースや、リフォームで検討したい機能、手すりの設置方法について詳しく紹介します。

 

3-2-1.介護に最適な浴室スペースとは

浴室は、介助者の負担を減らし、介護者・介助者がケガをしないようなスペースが最適です。

入浴介助は、入浴前・入浴中・入浴後と、さまざまな介助が必要になります。

入浴前は脱衣や浴室への入室のサポートが必要です。入浴中は介護者の髪や顔、体を洗います。その際、介助者自身が水や泡で足を滑らせないように注意を払わなければなりません。また入浴後は体をタオルで拭き、髪をドライヤーで乾かすところまで行います。

このように、入浴介助は介助者に肉体的な負担がかかりやすいのが特徴です。

3-2-2.浴室の介護リフォームで検討したい機能一覧

浴室の介護リフォームで検討したい箇所・機能は主に以下のとおりです。

出入口(段差の解消・水漏れ対策など)

床材(滑りにくく柔らかい床材への変更)

手すり(浴槽周辺・シャワー周辺・出入口周辺への設置)

浴槽(低いものへの取り替え)

浴室暖房乾燥機

バスリフト

出入口の段差の解消や床材の変更は、ケガ防止につながります。浴槽の高さも、介護者がつまずいたり入れなかったりすることを防ぐことが可能です。ほかにも、手すりや浴室暖房乾燥機、バスリフトがあれば、介護者にとって快適な浴室スペースになるでしょう。

3-2-3.浴室での介護に便利な手すりの設置方法

浴室の介護リフォームで取り付けるべき手すりの位置は以下のとおりです。

出入口付近(縦)

洗い場移動用の手すり(横)

洗い場シャワーチェア立ち座り用の手すり(縦)

浴槽出入用の手すり(縦)

浴槽内の立ち座り用手すり(L字)

主に出入口や洗い場、浴槽付近への設置がおすすめです。L字の縦の手すりは立ち座りの動作を支え、横の手すりは座った姿勢を安定させる機能を果たします。

浴室の介護リフォームについては、以下の記事でも詳しく解説しています。

必見!!トイレの介護リフォームまるわかり

3-3.玄関の介護リフォーム

事例:車椅子の方の介助にぴったりな広い玄関を実現。

画像出典:https://www.8044.co.jp/gallery/823

玄関でスムーズな介護を行うためのポイント、介護リフォームで検討したい機能、転倒防止対策について解説します。

3-3-1.玄関でスムーズな介護を行うためのポイント

玄関での介護は、段差に注意することがポイントです。家に上がる際の段差だけでなく、外から家に入る際の階段もあります。なるべく段差を減らし、介護者が外に出るのをためらわないようにするとよいでしょう。

また、介助者が付き添いやすい広めの玄関口や、介護者が段差を上がれるような手すりの設置なども大切です。

一般的に、玄関に段差のあるお宅は多いです。この段差は車椅子の方や、足腰の弱った方にとっては障害となります。また、段差による転倒事故を避けるためにも玄関の介護リフォームは見落とせないポイントです。

3-3-2.玄関の介護リフォームで検討したい機能一覧

玄関の介護リフォームで検討したい箇所・機能は以下のとおりです。

敷台(高い段差の解消)

手すり(階段の昇降・靴の脱ぎ履きのサポート)

スロープ(段差の解消)

昇降機(昇降のサポート)

床材(滑りにくい床材への取り替え)

玄関椅子(立つ・座る動作のサポート)

段差を解消するリフォームや動作をサポートするリフォームをすれば、介護者がある程度自力で上り下りできるようになります。

3-3-3.玄関での転倒防止対策

玄関は、「靴の着脱時にバランスを崩す」「段差につまずく」「玄関マットで滑る」などの原因で転倒しやすい場所です。椅子を置くことで座って靴の着脱を可能にしたり、手すりを設置してつまずきを防止したり、すべり止めがついたマットを使用したりと、転倒防止対策を講じることをおすすめします。

また介助者は、転倒の原因となる障害物をなくし、転倒しやすいポイントではより注意して介助にあたることが大切です。

3-4.階段・廊下の介護リフォーム

事例:手すりの設置とあわせて昇降しやすい高さへの調節も実施。

画像出典:https://www.8044.co.jp/gallery/191

階段や廊下で必要になる介護内容と、階段・廊下の介護リフォームで検討したい機能について詳しく解説します。

 

3-4-1.階段・廊下で必要になる介護内容

階段を歩いて降りる場合、介助者は介護者が転落しないよう注意を払ってサポートしなければなりません。

介助者は介護者のペースに合わせてゆっくりと階段を降りながら、介護者が転落してしまった場合に備えて1段下の位置につき、足を開いて踏ん張れる状態になっておきます。車椅子の場合は、2~4人でのサポートが必要です。

3-4-2.階段・廊下の介護リフォームで検討したい機能一覧

階段・廊下の介護リフォームで検討したい箇所・機能は以下のとおりです。

手すり(歩行・昇降のサポート)

足元灯(暗闇での歩行・昇降のサポート)

廊下幅の拡張(車椅子での導線確保)

階段昇降機(昇降のサポート)

床材(転倒・転落の防止)

手すりや足元灯は、介助者も機能を活用しながら介護者をサポートできます。また、階段昇降機があれば、介助者が車椅子を持ち上げて階段を上り下りする必要がなく、肉体的な負担を減らすことが可能です。

3-5.洗面所の介護リフォーム

洗面所で行う介護内容と洗面所の介護リフォームで検討したい機能について詳しく解説します。

3-5-1.洗面所で行う介護の内容とは

洗面所では、主に顔や髪の身だしなみを整えるサポートを行います。洗顔や洗髪・整髪、口・耳・鼻のケア、爪切りなどです。身だしなみを整えることは、介護者の気分転換やリハビリにもつながります。

車椅子が必要な方を介助する場合、介助をするための十分なスペースや車椅子に座った位置に最適な洗面台の設置が必要です。

3-5-2.洗面所の介護リフォームで検討したい機能一覧

洗面所の介護リフォームで検討したい箇所・機能は以下のとおりです。

手すり(移動のサポート)

出入口(段差の解消)

引き戸(スペースの確保)

洗面台(車椅子対応)

手すりの設置や出入口の段差の解消により、介護者が転倒せずに歩けるサポートが可能です。また引き戸にしたり、洗面台を車椅子対応のものにしたりすることで、車椅子に座っている方でも介助しやすいスペースを作れます。

3-6.寝室の介護リフォーム

事例:和室の畳をフローリングに変更し、足の負担を軽減。

出典:https://freshhouse.co.jp/case/21156/

寝室の介護リフォームで検討したい機能や介護別途の最適なレイアウト方法について紹介します。

 

3-6-1.寝室は介護の基本となる部屋

寝室は介護の基本となる部屋であり、人によっては1日の大半を過ごす介護部屋となることもあります。寝室からトイレや浴室など他のスペースに行く際、移動がおっくうになって介護者が寝室から出なくなることがないよう、介護環境を十分に整えておくことが大切です。

寝室で介護する際は、部屋の広さ、レイアウト、介護ベッドの配置などを考慮する必要があります。

3-6-2.寝室の介護リフォームで検討したい機能一覧

寝室の介護リフォームで検討したい箇所・機能は以下のとおりです。

手すり(移動・起床のサポート)

引き戸(スペース確保)

足元灯(暗闇での移動のサポート)

床材(滑りにくい床材への取り替え)

手すりは立ち上がっているときの移動のサポートに加え、寝ている状態から起きる際のサポートにもなります。また足元灯は、夜間にトイレへ行く際の介助を行うときに役立ちます。床材を滑りにくい材質のものに取り替えることで、車椅子でも移動しやすいスペースづくりが可能です。

3-6-3.介護ベッドの最適なレイアウト方法は?

介護ベッドの配置は、介護者が何を優先したいかで決めましょう。「外の景色を見たい」といった場合は窓の近く、「家族の近くにいたい」といった場合はできるだけリビングの近くなど、介護者の意見を取り入れることが大切です。

ただ、介助者側からの視点も考える必要があります。介護者の意見を優先して取り入れすぎると、介助がしづらい・できない場所にベッドを設置することになる可能性も考えられるでしょう。

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4.介護リフォームに活用できる助成金や減税制度

介護リフォームをもっとお得に行うためにには、助成金や減税制度介護保険や市区町村の住宅改修費制度をを活用してみてはいかがでしょうかできる可能性があります。この章では、これらの制度について詳しくお伝えしますので、ぜひ是非参考にしてくだみて下さい。

4-1.介護保険は介護リフォームに活用可能

介護保険は平成12年(2007年)4月に始まった制度で、40歳以上はこれに加入しなければなりませんが義務付けられています。そして、この保険料を財源に介護保険サービスを各市区町村が運営しています。

そのサービスの1つが、介護のための住宅改改修費の支給です。介護保険の住宅改修費の支給は、介護リフォームに活用できます。

4-2.市区町村の住宅改修費制度は要チェック

介護保険とは別に、各市区町村が独自に行う住宅改修費制度があります。こちらの内容はお住まいの地域によって異なります。介護保険と併用可能な場合もあるため、お住まいの市区町村のHPや役所の窓口で確認しましょう。

補助金や助成金についてより詳しく知りたい方は以下の記事を参考にしてください。

介護リフォームで使える補助金は2種類!どんな工事が対象?申請方法は?

4-3.介護リフォームは減税制度の対象

バリアフリー目的のリフォームでは、ある一定の工事を行い、工事費用相当額から補助金額を除いた後の金額が50万円を超える場合は、改修後1年間の所得税が工事費用等の10%控除されます。

例えばトイレリフォームでは、和式から洋式トイレへ変更、出入口の拡張、開き戸から引き戸への交換で698,600円の工事費用相当額になります。

ここから補助金として受け取った金額を除いて50万円を超える場合、控除の対象になります。

その他住宅要件等も満たしていれば、忘れずに確定申告を行いましょう。

詳しくはこちらでご確認ください。

>>No.1220 バリアフリー改修工事をした場合(住宅特定改修特別税額控除)|国税庁

住宅リフォームの減税制度についてはこちらでまとめています。より詳しく知りたい場合はこちらもご覧ください。

【2024年度版】リフォームの減税(控除)制度を分かりやすく解説!