美は押しつけるものではなく、引き出すもの。「パルファム ジバンシイ」などを擁するLVMHフレグランスブランズ社長の金山桃さんは、この言葉を大事にしている。世界的に有名なファッションデザイナーであり、ブランドの創業者でもあるユベール・ド・ジバンシィの言葉だ。化粧品がステレオタイプな美を打ち破り、ひとりでも多くの人に喜びや力を与えるためのチャレンジを続けている。
「違い」を強みに変える
2009年にLVMHのリテール部門である化粧品専門店「セフォラ」に就職。ヨーロッパ・中東・アフリカ地区のスキンケア カテゴリー マネージャー&バイヤーに就任した。金山さんを採用したのは、アメリカ人のゲイの男性。彼の上司はチェコ人女性で、その上司はフランス人女性。採用された理由はアジア系だったから。アジア系の人たちはスキンケアを重視する。新しいブランドを導入するにあたって、状況を読み取る嗅覚の鋭さなどが評価された。
その後、イギリスに渡り、ロレアルグループの「ザボディショップ」に就職した際も、採用された理由は「ほかの人と違うから」。
「マイノリティーであり、違うことが評価されるということを経験し、自分の中で『違うこと』が強みに変わっていきました。それは、ビジネスの成長にも役立つということです」
(広告の後にも続きます)
店はヒントの宝庫
社長としての仕事は多忙を極めるが、時間に追われる中でも売り場をこまめに回っている。売り場に立つBC(ビューティーコンサルタント)の話には、フランスの化粧品ブランドの良さを伝え、消費者のニーズに応えるためのヒントがたくさんあるからだ。例えば、百貨店の化粧品売り場は若い世代にはハードルが高い。しかし、よく観察していると、20代の男性も訪れる。「若くて相手にされない」という壁を取り除くため、小売りのチームと話し合い、これまで女性ばかりだったBCに男性も入れた。
「キラキラしている表側だけでなく、バックステージも含めて、私は頑張っている人の姿が好きなんです。BCのパワーとか仕事をしている姿はかっこよく美しいから」