60歳の定年前に独立、再雇用で65歳まで会社にしがみつく……。終わりが見えてきた会社員はどのような選択をすべきか。人生後半の明暗を分ける正しい終わり方を考えてみた。
◆業績優秀なマネジャーだったが会社を退職
会社に見切りをつける選択肢には、早期退職、転職・起業目的の自主退職などのルートがある。夢の実現、肩叩きと理由は違えど、退職を選んだ人たちの決断とは?
●丸山邦夫さん(55歳)
52歳で自主退職→ソッコーで地方移住&起業
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外資系医療機器メーカーのジョンソン・エンド・ジョンソンで業績優秀なマネジャーだった丸山邦夫さん(55歳)は、52歳で突然、退職の道を選んだ。海が好きで、瀬戸内海に浮かぶ因島に移住すると、カヤックツアーの会社や柑橘農園を起業した。なぜ安定した職を捨て、見ず知らずの地での挑戦を決めたのか。
「会社員って、自分の考えと違っても『会社の決定事項だから従おう』と前向きに受け止め、仕事に邁進することが多いですよね。これを自分の人生に置き換えれば、やりたかったゴールに到達できると思って、独立に踏み切りました。
この思考法は、過去の実績に捉われず、新しいことに挑戦するときに非常に役立つ。中年会社員は、このマインドセットに関してはみんな上級者(笑)。人生に使わない手はないですよ」
◆“未来予想図”が心の支えに
それでも不安はあったと明かすが、乗り越えるのに活きたのもまた会社員経験だった。
「医療機器という高度な分野のプロフェッショナルだったので、東京で転職するなら強みになるけど、地方での起業には役立たないのでは、って。ただ、前職で『誰をターゲットに、どのようなマーケティング手法を用いてゴールを達成するか』というビジネスプランづくりは叩き込まれてきた。だから、移住前には望むゴールを明確にする絵を描きました。
この“未来予想図”のおかげで、想定外のことが起きても方向性を見誤らないし、今も心の支えになってます。自分には得意分野がないと感じている会社員は多いけれど、いざ違う環境に飛び出せば、会社人生で知らぬ間に身につけてきたスキルが多いことに気づかされます」
こうした会社員スキルは、彼の農園のブランディングにも活かされ、因島産のはっさくは全国で好評らしい。
「耕作放棄地が多いなか、地元の農業に貢献できていることも嬉しいし、手伝ってくれる若者に“楽しく儲ける”ビジネスの方法を教えられるのも楽しい。実は、これらも移住の目的だったんですよ」
会社人生で培ってきたサラリーマンスキルの棚卸しをして、是非とも活用しよう!
取材・文/週刊SPA!編集部
―[会社員の終わり方]―