ウクライナ寄りのニュースメディア「ユーロ・マイダン」は、ウクライナ軍が7月に行った攻撃で、トヨタの燃料電池車「ミライ」を利用したと報じた。水素タンクを利用し、小型の水素爆弾として利用したという。

◆町北部のロシア軍拠点を攻撃

 記事によるとウクライナ軍は、ロシア軍の防衛拠点を攻撃するため、トヨタ ミライの水素燃料電池を転用し爆弾を製造したという。場所はウクライナ北部、ヴォフチャンスクの町だ。

 ロシア軍は同地南部での攻勢に失敗し、町の北にある工場を利用した拠点まで退却していた。町を見下ろす高台に位置しており、ウクライナ軍としては空爆や通常のドローン攻撃が困難だと考えていた。そのため、別の方法を模索する必要があったという。

 そこでウクライナ軍は、壊れたミライから部品を回収し、即席の爆弾を製造した。ミライの水素燃料電池を使用し、重量200キロの爆弾とした模様だ。米自動車メディアのドライブ誌(8月12日)は、強力な爆発波、火球、破片、そしてキノコ雲を生じる能力があり、航空爆弾に匹敵する破壊力を持っていたと伝えている。

◆高圧水素を扱う水素電池

 ドライブ誌は、燃料電池車の水素タンクの爆発は本来なら悪夢だが、ウクライナ兵たちがロシア軍に対する「有益な手段」として使用し、「ある意味では史上最小の水爆」が出来上がったと報じる。

 ミライの水素電池は、高圧タンクから水素を供給し、電動モーターの動力源とする。タンクの重量は115ポンド(約52キログラム)あり、内部には12ポンド(約5.4キログラム)の水素を1万psi(約680気圧)で貯蔵する。ドライブ誌は、水深2万2500フィート(約6858メートル)に相当する圧力であり、ミライのタンクはそれに耐えうるだけ非常に頑丈にできていると解説している。

 水素のエネルギー密度は33.6 Wh/kgで、タンク全体で約677.6メガジュール、TNT火薬換算で357ポンド(約162キログラム)に相当するという。同誌は、「これにタンクを貫通させるプラスチック爆弾(おそらく数百ポンド)を加えると、ウクライナ人はとんでもない低予算でバンカーバスターを自作したことになる」と述べる。

◆ロシア軍の拠点に甚大な損傷

 こうして製造された爆弾は、遠隔操作型の地上走行ドローンに搭載され、部分的に破壊された橋を通過し、ロシア軍の拠点に向かった。自動車メディアのオートピアンは、橋の位置関係と周囲の木々の影響で、ロシア軍に視認されることのないまま、爆弾を搭載したドローンは拠点に到達したと報じている。ドローンが建物に接近すると、爆弾が爆発し、建物の構造に甚大な損傷を与えたという。

 ユーロ・マイダンによると、おそらくはロシア軍が同拠点に弾薬を保管しており、爆発に続いてこれが原因とみられる火災が発生した。この攻撃により、ロシア軍は建物を放棄せざるを得なくなったと報じられている。この攻撃の成功は、町の奪還に向けてより大規模な作戦を開始する契機になったという。