建築家の方が描いてくれたキッチンのパース。数々の修正指示を読み返すと、まだ建たぬ家を必死に想像していた当時が思い出されて、「オレ、よく頑張ったな」ってしんみりします。うるさい施主だったことを建築家に謝りたい。


最後に完成した家具はレコードシェルフでした。小さい家には大きすぎるサイズ(W1850×H2350mm)でも不思議と圧迫感がないのは「壁と棚の色を合わせたのと、台輪を大胆に小さくして足元に空間を設けたから」と職人さん談。

5年越しに完成した家。

 僕も、建坪15坪程度の小さな戸建ての家主です。2019年から夫婦で住宅の購入を考え始め、2021年末に竣工しました。ただしウッドショックなどの影響で費用が大きく膨らみ、入居時に出来上がったのは箱と最低限の水回り設備のみ。予定していた造り付けの家具などは住みながら再検討し、少しずつ納品してもらうことにして、この夏、ようやくすべて完成を迎えました。プランを思い描いてから5年以上、長い道のりでした。
 土地探しから、建築家や家具職人、工務店との打ち合わせ、建具・設備の見学、もろもろの申請まで。家造りは、果てしない確認作業や手続きに追われる日々です。さらには、キッチンのタイルやソファの生地、フローリングの幅、スイッチの形、トイレの鍵、ネジの色など……、小さな家とはいえ、挙げればきりがないほどのディテールをひとつひとつ決める必要がありました。(もちろん楽しい時間ではありますが、それぞれの部材の発注期限が迫る中、できるだけ調べて考えてはなかなか決められず、追い立てられるのが辛かった。何度「誰かいい感じのもの選んで〜〜〜」と思ったことか)
 しかしそれも終わってしまえば良き思い出。カタログを取り寄せ、リサーチを繰り返す生活からようやくおさらば!とすっきりした気持ちでいたら、このタイミングで「小さな家」特集を担当することになりました。案の定、取材でお邪魔した住まいの素晴らしいアイデアに刺激されて、またもや家造りへの気持ちがふつふつと……。我が家もプランニングから5年が経って、ちょこちょこと直したい箇所が出てきたところでした。そう、理想のマイホームへの道は終わることがないのです。この一冊とともに、悩ましくも最高にワクワクする日々に再び突入しようと思います!

(本誌編集部/松崎彬人)

&Premium No. 130 LIVE SMALL & WELL / 小さな家に暮らす。

デメリットとも受け取られがちな「小さい、狭い」という条件は、見方を変え、工夫を凝らすことで、快適な暮らしをもたらすメリットになります。例えば、コンパクトな居住空間ゆえに、必要なものをきちんと見極められるようになる。また、何がどこにあるかが明快で手に届く範囲にあるというのは、とても気持ちのよいことです。そして生活全体の見通しがよくなると、やがて暮らしや生き方までが、すっきりとしていくように思いませんか。今号は「小さな住まい」に暮らすことについて考える一冊。限られたスペースに開放感をもたらす家を建てたり、賃貸の小さな部屋を自分らしく整えたり。コンパクトな暮らしをあえて選びたくなるような、楽しくて小さな住まいの実例集です。

もっと読む