雑草が植物を守る? 雑草を取りすぎた結果

それでは意外な雑草の効果について見ていきましょう。

まずはこの写真。一見すると、雑草が綺麗に取り払われた手の行き届いた家庭菜園の写真です。

しかし、視点を変えて見てみましょう。

除草をしっかりした土は、土質がよい豊かな土に見えるでしょうか? ここでYesと答えるには、少々疑問が湧くのではないでしょうか。

写真を見る限り、地面がひび割れていてガサガサで、まるで不毛の大地です。この土は、保水性がほとんどなくカチカチの土になっています。常に強い日差しが地面に照りつけ、地中の水分が地表から蒸発してしまっている状態なのです。これでは土の団粒構造に不可欠な微生物や土壌生物(ミミズなど)、昆虫など、水分を必要とする生き物が生きていけません。

こうなると、異常気象と温暖化による日本の過酷な夏ではすぐに土が乾いてしまい、何度も水やりをしなくてはならなくなります。

続いて、こちらも同じ場所の写真です。

なんと雨が降っても水が浸透しないので、水たまりができてしまいます。

あまりに土壌が劣化しているので、土の排水機能が低下し、土が1日経ってもぐちゃぐちゃで、苔まで生えています。このような状態では、近年よくある大雨や長雨が降れば、大切な草花や野菜は水浸しになりますし、病気も多発しやすくなります。

土の団粒構造が崩壊するということは、土が隙間のない状態になって目詰まりしているようなものです。こうなると雨が降っても水が浸透しないので、土の保水量も下がってしまいます。

これが雑草を取り過ぎた結果が招いた悲惨な現状です。排水性が悪く保水性もないカチカチの土になり、猛暑にも弱く、大雨や長雨にも弱いという、最悪な土壌状態になってしまうのです。

もちろん除草剤の散布をしすぎても同じことが起きます。

日本ではこのような光景は普通に見られるもので、今まで違和感を覚えることはほとんどなかったのではないでしょうか? しかし、今お伝えした事実を知って、常識と言われることに改めて疑問を抱くきっかけになっていただけたら幸いです。

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雑草対策と土壌劣化の原因


Bayhu19/Shutterstock.com

世の中、ほとんどの人が雑草が生えることは悪いことだと思い込んでいるのではないでしょうか。

「雑草が生えると栄養が奪われて、栽培している植物の育ちが悪くなる」とか、「雑草が生えているとみっともない。だらしないと思われる」とか、雑草=悪と思われがちです。

確かに花や作物の光合成の邪魔をするなどデメリットがありますが、じつは持続可能な栽培方法として、今まで敵視してきた雑草を有効活用する方法が世界では進んでいます。

なぜ「雑草=悪」のような価値観が浸透したかの裏には、日本の慣行栽培の影響が大きいと感じています。

日常生活で見る畑の栽培方法、つまり農薬や化学肥料、トラクターや耕運機を使用して効率性と大量生産を重視した慣行栽培のやり方や価値観が、ガーデニングや家庭菜園にも浸透しているという訳です。

しかし、ガーデニングや家庭菜園で効率や大量生産を重視して、農薬や化学肥料を多用する事を皆さんは望んでいるでしょうか?

これは、必ずしも農薬や化学肥料が悪いということではありません。効率的に大量生産をして収入を稼ぐ農家と違い、ガーデニングや家庭菜園は目的が違うので、全てを真似する必要はないということです。

さて、世界に目を向けて見るとどうでしょうか?

じつは、草生栽培(草を生やす栽培法)や不耕起栽培(耕さない栽培法)では、あえて草を生やすことで、土壌構造を維持したり、土地を保護して長期的に豊かな土壌を維持していく方法があります。

日本でこうした手法をよく見かけるのは、果樹園です。果樹の下にあえて草を生やし、土壌の豊かさを維持しています。