扶養外で働くことのメリットとデメリット
では扶養内と扶養外、それぞれのメリットとデメリットを確認しましょう。一方のメリットはもう一方のデメリットとなるため、今回は扶養を外れて働くことを前提に、それぞれのメリットとデメリットを整理します。
扶養外で働くメリット
世帯収入がアップする
出産手当金、傷病手当金などの対象になる
老齢年金額の増加、遺族・障害年金などがより手厚くなる
仕事の可能性が広がる
扶養の範囲を気にせず思い切り働くことで保険料の負担は生じますが、その分、健康保険や年金などの保障が手厚くなります。病気で勤務できなくなった際の傷病手当金の対象にもなるため、例えばその分加入している民間の生命保険や医療保険を見直し、保険料を節約できる可能性もあります。老後の老齢厚生年金の額が増えるのも大きなメリットです。
また働く比重を増やすことで、今までより仕事で重要なポストを任されたり、外部との取引などにも積極的に関与できたりなど、仕事の幅が広がってより人生を豊かに感じられるかもしれません。
扶養外で働くデメリット
社会保険料の負担が増える
仕事の時間が長く、家庭や育児に使う時間が短くなる
世帯収入増加に伴い、高等学校等就学支援金制度などの所得制限に触れる可能性も
扶養の範囲内で働く人の多くは、子供が小さいなど家庭での立場を考慮しての方が多いのが現状です。その状況下で扶養を外れて働くとなると、それまで家庭や育児で出来ていたことが出来なくなることも想定しておかなければなりません。
また世帯収入が増えることで、私立高校などの進学の際に利用できる高等学校等就学支援金制度や、各自治体が実施している育児・教育関連で支給される手当や支援金などの対象外になる可能性もあります。こういったデメリットも事前に考えた上で扶養を外れるかどうか検討してください。
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国が始めている「年収の壁・支援強化パッケージ」制度
【画像出典元】「stock.adobe.com/alphaspirit」
2024年10月から「106万円の壁」が適用される対象が増えることもあり、国は「年収の壁・支援強化パッケージ」という支援制度を2023年10月から始めています。
従業員50~70名程度の企業にパートとして勤めていて、これまで130万円の壁を超えないよう年収120万円程度で働いている人のケースで考えてみましょう。勤め先が従業員50名を超えているので、10月からは社会保険の加入が必要となります。そこで社会保険上の扶養から外れる「106万円の壁」を超えないように働こうとすれば、何が起こるでしょうか。
扶養の範囲内で働きたいなら勤務日数を減らし、年間20万円程度収入を下げる必要があります。つまり世帯収入が減ってしまいます。雇用する企業側も働いてもらう時間が減ったり、従業員が50名以下の会社に転職されて離職者が増えたりと、人手や人材不足のリスクが高まります。働く側・雇用する側、双方にとってデメリットが大きいのです。
こういった事態を想定して、「106万円の壁」対応の支援として、国は一定の取り組みを行っている企業に対して、1人あたり最大50万円の支援を行っています。企業が支援金を受け取り、その額を従業員に支給することで社会保険に加入しても手取りが減らないようにするための制度です。詳細は以下、厚生労働省のホームページでご確認ください。
参考:厚生労働省「年収の壁・支援強化パッケージ」