“サークル”を重ねたミニマルなデザインで、世界中のジュエリーラバーから注目されているジュエリーブランド「スピネリキルコリン」のデザイナー、イヴ・スピネリ(Yves Spinelli)が来日。彫刻家で妻のドワイヤー・キルコリン(Dwyer Kilcollin)とともに、ブランドをスタートさせて14年、ウェディングコレクションをローンチさせた「スピネリキルコリン」のこれまでについて聞いた。
きっかけは父親のアイデア。「スピネリキルコリン」のはじまり
柔和で優しい面持ちで迎えてくれたイヴはハワイ生まれ。高校時代にジュエリー制作を学んだが、「デザインは好きだけど、すごく不器用だったんだ」と、ロサンゼルス(LA)に移り住んだ後はセレクトショップ「マックスフィールド」の販売員の道へと進んだ。
〈写真左から〉イヴ・スピネリ、ドワイヤー・キルコリン
「ある日顧客がつけていた、指を跨(また)いでリングが連なるデザインを見て、素敵だけど指が動かしづらそうだと思い、ジュエリー作りを趣味にしている父親に、3つのリングを小さな円のコネクターでつなげたリングを作ってくれないかと声をかけたんです。しばらくして、『重ねて使うといい』と父から5つのリングが連なったデザインで戻ってきて、ボリューム感も含め、見たことのないデザインだったし、1本の指にも、複数の指に跨いでもつけられて汎用性も高い。すごく気に入ったんです」
最初のリングには自分の星座になぞらえて、「アクエリアス(水瓶座)」という名前をつけた。気にいって身につけていたところ、友人らから声がかかるように。女性にはもう少し細い方がいい、結婚指輪を作ってくれないかなど、どんどんデザインの幅は広がり、2010年にドワイヤーとともにビジネスをスタートさせることになったという。
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ハイジュエリーをローンチしたことで脚光
ブレイクスルーとなったのは、ブランドを始めて4年目のこと。ダイヤモンドを使ったコレクションをローンチさせたことだった。小売店の評判がよく、初めてのクライアントにバーニーズが名乗り出て、同時期にロンハーマンの買い付けも決まった。そこから、それ以前につくってきたシルバーのリングや18Kゴールドを組み合わせたリングなども注目を浴びるように。現在でもコレクションの幅は、6万円のものから200万円を超えるものまで、幅広くそろえている。
ACACIA MIX ¥275,000
「マックスフィールド時代、さまざまブランドがあるなかでコム・デ・ギャルソンを見て、コム・デ・ギャルソン社としてもさまざまなブランドを展開していますが、ハイエンドなコレクションピースもあれば、手の届きやすいTシャツもある。ブランドがカテゴライズするのではなく、クロスオーバーさせることはすごく重要だと感じましたし、それがデザインの面白さなんだと学びました。価格は違ってもブランドの考える哲学さえ統一されていれば、その理念は届くんじゃないでしょうか」
当初はイヴがデザインをしていたが、徐々にドワイヤーがデザインを担当するようになった。「彼女の感性が好きですし、デザインの方向性としてクリーンで建築的、洗練されたものを作りたいという考えは同じ。僕はラッキーだと思っているんです。今は僕はセールス担当として、ブランドに求められているものを提案する役割を担ってます」
NYにもショップをオープン
制作の拠点は2人の住むロサンゼルス・ダウンタウンのパーシングエリア。街中のイメージが強いが、ジュエリー作りでも有名で多くの優秀な職人が集まっているそうだ。「スピネリキルコリン」を設立した頃から付き合いのある地元企業が持つ、100年前から続くクラフトマンシップの技術を応用し、変わらず1点1点ハンドメイドで仕上げている。