醸造家の越後屋美和さんが設立した『東京ワイナリー』が、2024年9月に10周年を迎えた。東京都でのワイン醸造所は前例がなく、当初は無理だと言われていたものの、始めるやいなや瞬く間に多くの人に愛されるワイナリーとなった。ワインは造り手の人となりまでも語るといわれている。越後屋さんの造るワインには、どんな情熱が詰まっているのだろう。
10年を振り返って
「ワイナリーを始めたときは、ボランティアさんが集まるかどうか不安でしたが、すぐに多くの人が手を挙げてくれたことが印象に残っています。やりたいことをやりたいように過ごしてきた10年、たくさんの方に支えられ、なんとかやってこられました」と語る越後屋さん。
一方で、本当にこれで良いのかと、自問自答することもあったと振り返る。
「『やめようかな』と思ったことはありませんが、『どうしようかな』と悩むことはありますね。解決策を模索しながら、誰かに相談したり、一人で試行錯誤したり。この10年間、いろいろなことがありましたが、やってよかったなと思っています」
練馬区という都市型のワイナリー運営には、さまざまな挑戦が伴った。限られたスペースや騒音問題、廃棄物の処理などの困難にも対処してきた。地域住民との良好な関係を維持し、地域貢献に努めてきたことで、いつしか東京ワイナリーは地域社会にとって価値ある存在となっていた。
また、ひとりの経営者として、経営の難しさやプレッシャーもあったはずだが、「嫌なことがあっても、意外とすぐ忘れちゃうタイプなんです」と笑顔で語る彼女の姿には、強さと柔軟さがうかがえる。
これから起業を目指す女性や道を切り開こうとしている女性に向けては、「周りの人に助けを求め、話すことで道が開ける」とアドバイスをもらった。完璧を求めず、周囲の人々と共に進んでいく姿勢が、多くの共感を呼び、東京ワイナリーの成功につながってきたのだろう。
「今後の10年は、自分だけでなく、他の人たちと一緒にやっていける環境を作りたい」と語る越後屋さん。
東京ワイナリーは都市農業としての可能性を追求し続ける一方で、次世代に引き継げるワイン造りを目指していくとのこと。また、近くに畑を持ち、その環境の中でのワイン造りを実現したいという夢も描いている。
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interview & text: Tomoko Komiyama photo: Tomoko Hagimoto