さまざまな事情を抱えた人たちが利用するラブホテル。一般的には、ドキドキ、ワクワクしながら、ときにはソワソワと向かう場所だ。
実家がラブホ街にあり、学生時代はラブホで清掃員のアルバイトをしていた前田裕子さん(仮名・20代)。今回は、ラブホ街で起こる珍しい出来事について聞いた。
◆ラブホを電話予約した女性客の意外な理由
ラブホには迷惑な客もくるが、むしろ「職場での思い出話に登場するのは、不思議と“丁寧なお客様”が多いですね」と前田さんは話す。
ラブホの予約はネットを通す人が多いのだが、その客はわざわざ電話で予約をしてきたという。
「電話予約っていまどき珍しいなぁと、たまたま電話対応したのが私でした。『実は推しのライブが近くであるのですが、一般のホテルが取れなくて、そういった理由でもそちらに宿泊できますか?』という内容だったんです」
前田さんが、「はい、大丈夫です。空きがあればこのまま予約しますか?」と言うと……。
「電話の向こうで、安堵していたのが分かりました。そして少し恥ずかしそうに、『あの……女性一人なんですけど』と言うので、『大丈夫です』と伝えました。また、そのほかに必ず尋ねることがあります」
それは「失礼ですが、ラブホテルのご利用は初めてですか?」である。
◆ネット予約がスムーズ
ラブホの利用が初めての場合は、説明することがあるそうだ。
「プライバシー重視のため、人に会わずにチェックインできることや、夜中でもスタッフがいることなどを伝えるんです。夜中のラブホは無人だと思っている人や、単独での宿泊や同性利用ができないと思っている人は、意外に多いんですよ」
女性客は、「そうなんですね、ありがとうございます」と言いつつ、前田さんが追記事項を告げた際は、“ハッ”とした様子だったのだとか。
「おせっかいかもと思いましたが、『ネットが使用できるならホームページから予約をした方がよいですよ。電話だとお名前を聞くことになりますし、フロントを通さなければチェックインができませんから……』と伝えました」
前田さんはプライバシーのため、その客の情報は調べなかったが、無事にライブを楽しめていたらよいな……と思ったという。
「最近はツーベットの部屋で一般のお客様大歓迎!を謳うラブホもあります。ただ、ネオンがギラギラで入りにくいかもしれませんね」
◆ラブホ街で「探偵ごっこ」をするママサークル
さて、ラブホ街にはさまざまな人たちが行き交うのだが、当然そこに住んでいる人たちもいる。ご近所さんにはうわさ好きなママたちがいるそうで、そのママたちの「探偵ごっこ」について話してくれた。
世間話の最中に「バレーボールサークルのママ友が不倫していて、みんなで探偵に行ったわー」と言われ、前田さんは思わず前のめりになったという。
前田さんが、「みんなで? 探偵?」と聞くと、「楽しかったよー。“探偵ごっこ”みたいで」。どうやら、一人のママ友の不倫現場を連係プレイで調査したようだ。
“ほらー、近くに24時間営業のスーパーがあるでしょ?”
「確かに大きなスーパーがあります。バレーボールの練習後に車2台で消えていく不倫カップルは、そのスーパーで落ち合い、どちらかの車に相乗りしてラブホに行くのがお約束だったみたいです」
◆近所の大型スーパーは不倫カップルの待ち合わせ場所
ママ友たちは、“体育館から尾行するチーム”と“スーパーで待つチーム”と“ラブホ街のホテルを特定するチーム”に分かれて、本格的な調査をしていたのだとか。
「それからどうするのか気になりますよね。ただ、“それだけ”らしいんです。とくにリークするわけでもなく、ラブホの隣の部屋に滞在するわけでもなく、ゲーム感覚で楽しんだそうです」
前田さんが友人に話すと、「やっぱり、あのスーパーって、不倫カップルの待ち合わせ場所なんだ!」と、納得のようすだったという。
「ママ友たちの遊び場としても大活躍なんですよね」
ラブホ街に住む人ならではのエピソードかもしれない……。
<取材・文/資産もとお>
―[ラブホの珍エピソード]―