キャンプのハイシーズンである夏が終わったが、気温も落ち着いた秋のキャンプも非常に人気が高い。ただ、秋キャンプ好きのキャンパーたちを悩ませる迷惑客も多くいるようだ。
◆キャンプ場内に現れた車の“まさかの運転手”
山梨県でキャンプ場を経営するAさんに話を聞いた。Aさんは以前、キャンプ場内の清掃中にとんでもない客に遭遇したという。
「ある日、夕方頃に場内清掃をしていたら、ものすごくゆっくり車が走って来ました。やけに慎重だなぁって思って運転席を見たら、なんと小学生くらいの子供が運転していたんです。助手席にはお父さんがいたんですが、運転しているのは明らかに子供。『さすがにこれはアカン!』と思って、声をかけて車を停めてもらいました」
車を停めたのは、もちろん親に注意するためだ。Aさんが運転席を覗き込むと小学6年生くらいの男のコが緊張した顔で座っており、「免許もってないよね?」と聞くと、強ばった顔で頷いたという。そこで助手席に座る親に注意したところ、思いもよらない反撃を喰らうことに……。
「子供に車を運転させるなんて言語道断。無免許運転だし、事故を起こしたらどうするんだと。ちょっと強い口調でお父さんを叱ったのですが、返ってきたのは『ここは私有地だから免許いらないでしょ? 何か起きないように隣にいるわけじゃないか』と逆ギレされました」
◆その場で出禁宣告をすることに
逆ギレをする親に対して怒り心頭のAさんは、その場で出禁宣告をすることにした。
「もう、開いた口がふさがらないですよ。ものすごい剣幕でまくし立ててきて、悪いのは明らかに向こうじゃないですか。私もあんまりにも腹が立ったので、『あなたがやっていることは明らかに危険行為だし、私のキャンプ場では無免許の子供に運転させるなんてことは許さない。お金は返すからすぐに撤収して出て行ってくれ』と言いました」
Aさんが退場を申し渡すと、男性は「約款の何を根拠に出て行けって言うんだ!」「謝罪すればいいだろ!」などとわめき散らして抵抗したが、Aさんは毅然とした態度で「退場してください。もし、退場しないなら警察を呼びます」と言い、この迷惑客一家を追い出したという。
◆退場を言い渡すと夫婦喧嘩が勃発
こちらの一家はすでにテントを張り終わっていた模様。経営者からの退場宣告を受けた後、事情を知らない母親が現れ、周囲も引くほどの夫婦喧嘩が勃発したようだ。
「私が退場を言い渡したときも揉めたのですが、その後が大変でしたね。事情を知った奥さんが父親にキレまくって、今度は夫婦喧嘩が始まっちゃったんです(苦笑)。もう、周囲の人たちはドン引きですよ。奥さん、目を真っ赤にして謝りに来たんですが、それも突っぱねました」
炎天下の中、1時間近くかけて汗だくになってテントを張ったのに、その家族はまたしても汗だくになって撤収作業をして帰って行ったという。
◆キャンパーを悩ませる外国人観光客の存在
また、経営者だけでなく、キャンプ歴10年のベテランキャンパーBさんも「迷惑客の被害にあったことがある」と話してくれた。
オーバーツーリズムが問題になり、富士山が見えるコンビニエンスストアが苦肉の策として目隠しをしたことは記憶に新しい。こうしたオーバーツーリズム問題はキャンプ場でも起きているという。
「近くの観光ホテルに泊まっている外国人観光客が、富士山が見える岸まで行こうとしてズカズカ入ってくるんです。一応、キャンプ場には英語で“キャンプ場の宿泊者以外は立ち入り禁止”と書かれた看板もあるのですが……。管理人に聞くと『公園と思っているみたいで、言っても聞かないんだよ』って呆れてました」
◆勝手に私物に触れられる始末
Bさんは外国人観光客が場内をウロウロすることは気にならなかったというが、どうにもイヤだったのは勝手に撮影されることだったという。
「韓国や台湾、アジアでも日本のアウトドアブランドは人気らしく、サイトの中にまで入ってきて勝手に写真を撮るんです。のんびりチェアに座っていたら、4人くらいの外国人がきて、何の挨拶もせずにいきなり写真撮り始めました」
それだけでなく、外国人観光客の団体はランタンなどアウトドアのギアを手に取り始めてしまったため、Bさんは大きな声で「NO!」と言い放った。
「私が怒っているのに彼らは笑いながら片言の日本語で『ゴメンナサイ』って言って、逃げるように出て行きました。写真撮っていいかくらい聞けよって思いましたね」
のんびりしているところにズカズカ入ってきて、いきなり写真を撮られた挙げ句、自分の大切なアウトドアギアを触られたら誰だって怒るだろう。Bさんも「こんな形でオーバーツーリズムの被害者になるとは思わなかった」と、複雑な顔で話してくれた。
日本人だろうが外国人だろうが、ルールを守ることは当たり前のこと。マナーを守ってアウトドアを楽しんでほしいものである。
文/谷本ススム
【谷本ススム】
グルメ、カルチャー、ギャンブルまで、面白いと思ったらとことん突っ走って取材するフットワークの軽さが売り。業界紙、週刊誌を経て、気がつけば今に至る40代ライター