令和の虎・林社長「武田塾」の経営ノウハウを活かし、2年で6億円を稼いだ秘密とは?

 テレビやラジオといったオールドメディアに代わり、動画メディアの勢いが止まらない。特にYouTubeは、国内月間アクティブユーザー数7,000万人を超える。多くの人が気軽に動画を配信できるようになり、YouTubeチャンネル数も増加。生き残りをかけた激戦が続くなか、YouTubeでの発信力も活用しながら、事業の成功を収めている時代の革命家たちに迫る。

 インタビュアーは、出版プロデューサーでビジネス書作家の水野俊哉さん。水野さんは出版プロデューサーとして数々のヒット作を世に送り出し、自らも作家として多くの書籍を出版している。

 今回、「授業をしない塾」として知られる「武田塾」の創設者であり、実業家でもある林尚弘さんに話を聞いた。

 林さんといえば「令和の虎」でもおなじみの存在で、林さんが創設した「武田塾」はフランチャイズ化に成功。学生からも親御さんから圧倒的な支持で人気を博し、現在は400校を展開している。いまや河合塾、東進衛星予備校、駿台予備校に迫る勢いで、「四大予備校」と並び称されるほどの快進撃を続け、年商は130億円に達する。

「インフルエンス力を付けることが事業拡大にとってもっとも重要」と言い切る林さんに、これまでの成功の秘訣とYouTubeでの活動、また今後の展望について聞いた。

◆売上拡大の壁を突破した「フランチャイズ」の底力

水野俊哉(以下、水野):大学2年生で「武田塾」を起業すると、画期的な勉強法からあっという間に生徒数が拡大。大学生にはすでに経営者として活躍されていましたよね。

林尚弘(以下、林):2006年に武田塾を開設した当初、14人だった生徒は翌年には50人、翌々年には100人と拡大していきました。収入に比例して、プール付きのマンションに住むなど生活も派手になっていきましたね。

 ただ、そこからが非常に苦戦しました。2校で年商1億円ほどにしかならなかったんです。何とか売上を伸ばそうと他の事業にも手を出して、海外事業などに浮気もしてみたのですが、なかなかうまくいかなかったんです。

水野:そんなとき、フランチャイズ化の話があったのですね?

林:そうです。2014年、千葉県で塾を経営している経営者からフランチャイズ化の話をいただき、それに賭けてみたんです。そうしたら3年で一気に100校舎、2022年には400校舎、年商100億円に拡大しました。

 あれほど行き詰まっていたのが嘘のようでした。ずっと、「なぜこんないいサービスなのに広がらないんだろう」と疑問に思っていたのですが、ビジネスモデルの転換が必要だったことにようやく気づいたんです。

水野:フランチャイズ展開の大きなメリットはどこにありますか?

林:2つあります。1つ目は展開スピードが圧倒的に早くなることです。もし武田塾を自社のみで展開しようとすると、校舎を1つ立ち上げるのに約1000万円かかるため、400校舎だと40億円かかる計算になります。とてもじゃありませんが、これは自社だけではできません。

 それをフランチャイズ展開してそれぞれのオーナーさんに費用負担してもらうことによって、オーナーにも本部にも利益が入る仕組みになる。Win-Winの関係を築きながら、拡大成長できるのは大きなメリットです。

 2つ目は、自分よりもすごい方の力を借りられることです。武田塾には多くのすごいオーナーさんが加盟してくれました。その方々から資金だけでなく、知見も、労働力もお貸しいただけたのです。その中には令和の虎に出ている桑田龍征社長、トモハッピー、岩井良明社長もいました。他にももっとたくさんすごい人がいるのですが、そんな方々と1つの事業ができるというのはとても大きかったです。

 日本には知られていないだけで、素晴らしいフランチャイズ展開をされている経営者がたくさんいらっしゃいます。今後はそういう方たちを取り上げた書籍も書いてみたいと思っています。

水野:林社長は株式会社FCチャンネルにも携わり、フランチャイズの本部構築やノウハウ支援なども手がけられていますよね。

林:私もFCに出会ってなければまだ2校舎しかなかったかもしれません。なので、「いいサービスなのに知られていない」ものをFCの力でひとつでも多くの方々に知ってもらえるよう、今後も活動していくつもりです。フランチャイズの素晴らしさを世に伝えたいです。

◆YouTubeでの発信が、ビジネスを加速させた


水野:フランチャイズ展開をする一方で、早くからYouTubeの発信にも力を入れたそうですね。

林:2006年に武田塾を開設した2年後、2008年には武田塾チャンネルを開設しました。主な視聴者は高校1年生~3年生、浪人生なので、大学紹介や正しい参考書の使い方など、生徒に向けたコンテンツを充実させることで、武田塾への入塾を増やしたい狙いがありました。

 チャンネル開設当初は、どんなコンテンツを出したらいいか手探り状態の部分もありましたが、トライ&エラーを繰り返したことで、結果的に多くの知見を得ることができたのです。

水野:2016年には「フランチャイズチャンネル」を、翌2017年には「wakatte.tv」(わかってTV)を開始されたのも、武田塾チャンネルでの成功があったからなのですね。

林:成功ばかりではありませんでしたが(笑)。特に、社員が勝手に始めてくれた「wakatte.tv」のほうは同じ教育系でしたが、初めからバラエティ路線でつくろうと思っていました。より多くの視聴者層を取り込みたいと思っていたからです。

 相乗効果によって武田塾の知名度も向上していきましたが、自分自身を知ってもらうきっかけになったのは、やはり「令和の虎」への出演でしょう。

水野:そうですよね。「令和の虎CHANNEL」が誕生したきっかけは何だったのですか?

林:もともと日本テレビの「マネーの虎」に出演されていた岩井良明さんの存在は知っていたんですよ。だけど、接点がなかった。そんなとき、Facebookで麻雀の投稿していた岩井さんにコメントしたら、そこから返信が来て、お会いすることになったんです。

 それをきっかけに、岩井さんから「テレビ番組のマネーの虎のような番組をYouTubeで復活させたい」と相談され、YouTube制作会社などを私が紹介させていただき、初期の虎を一緒に集め、「令和の虎」が生まれたんです。

水野:そうだったのですね! 2018年からスタートした「令和の虎」もすごい反響でしたが、林さん自身が感じた変化はありましたか?

林:これまでとは比にならないくらい、声をかけられる回数が圧倒的に増えましたね。「令和の虎見てます‼」「林社長だ!」と毎日のように声をかけられます。改めて岩井さんとYouTubeの発信力の強さに驚きましたね。

 令和の虎の前後から、他のチャンネルからゲストで呼ばれることが多くなり、明らかに露出も増えていったことで、インフルエンス力もついてきたのか、今では月額50万円で、月に1回1時間お茶をするコンサルティング契約をしてくださる方が約50社います。お茶するだけで年間3億円いただいていますので、知名度がついたことで今まで以上に事業規模が拡大していくことを感じています。

◆YouTubeドリームはどんな人にも訪れる


水野:フランチャイズ展開をベースに、YouTubeへの露出で一気に成功をつかんだ林さんですが、他にもYouTubeドリームをつかんだ人はいらっしゃいますか?

林:私の周りは、ほとんどそういう人ばかりですね。実業家の桑田龍征さんや、同じく実業家の青笹寛史さん、経営者で同じ令和の虎にも出演したトモハッピーさんや医師のドラゴン細井さんなど、数えたらきりがありません。特にドラゴン細井さんは医師の中ではかなり有名で、業界の風雲児といってもいいと思います。

 といっても、彼らも初めから成功していたわけではありません。地道にコンテンツをつくり発信し続けたことで、今のポジションがあると思います。私がコンサルティングをしている生徒さんにも、「成功したいならYouTubeに本気で取り組め!」と再三伝え続けています。

水野:わかっていても、中小企業ではマンパワー不足、大手企業ではコンプライアンスにひっかかり、YouTubeに参入できないジレンマがあるように感じます。

林:大手企業がYouTubeを行うには、いろいろな制約があって難しいのかもしれませんが、特に中小企業はそういったこともないはず。多くの視聴者を獲得できるエンタメ系の企画は上場していない中小企業だからこそできる、という面もあります。売上拡大も知名度も両方叶えられるものは、そうそうありません。YouTubeありきで始めた事業はたった2年で約6億円の利益がでました。2年ですよ、2年。

水野:とてつもない爆発力ですね。

林:「結果を出すためには多くのフォロワー数がいるんでしょう」という方もいますが、ビジネス系YouTubeにおいては、YouTubeからの収入に頼るすようなユーチューバーになる必要はありません。広告宣伝と割り切った使い方もできます。

 別の事業でYouTubeチャンネルを立てたとき、200回の再生回数しかありませんでしたが、そこからでも数千万円規模の契約が決まっていました。月50万円のサービスを契約してくれる方も実際存在していました。

 広告費の単価としても、YouTubeのコスパは群を抜いています。例えばリスティング広告で仮に1クリック300円で1万回クリックされた場合、300万円かかる計算になりますが、YouTubeであれば、動画制作費3万円をかけて1万回再生されたら3万円で済む計算になります。YouTubeをやらない理由はありません。「やる」一択です。

水野:ちなみに、Xで年初にポストしていた【2024年、ビジネスとYOUTUBE、林の11の予言】で「上記の予言を超えたすごい企画を林が岩井さんに提案し、令和の虎をより進化させる」と書かれていました。その内容とは……?

林:実は今、水面下で映画化の話が進んでいます。今はそれだけしか言えません!(笑)

◆とにかく動く! 今を楽しむ! それが成功の秘訣


水野:最後に、今後の林さんの展望を教えてください。

林:今後もさまざまな新規事業をしていきたいと考えています。そのひとつが「FiNANCiE」(フィナンシェ)です。これは、ブロックチェーン技術を活用したトークン型のクラウドファンディングサービスのことです。

 これまでは、企業が拡大し仮に売却などを行っても、その利益を受け取るのは株主など限定された人のみでした。しかし、正確に言えば、企業を支えてくれたのは株主だけではありませんよね。そのサービスを初期に利用してくれていたユーザーやクライアントなどが、確実にいたからです。

 ところが、これまでは株主以外の方々に還元できる方法がありませんでした。その点、FiNANCiE(フィナンシェ)のサービスを使えば、成功を下支えしてくれたすべての方に「恩返し」ができることになります。これは、今までの常識を覆すサービスとなりうるのではないでしょうか。

 そういう意味で私は、武田塾のような「これまでにない画期的なサービス」をこれからも生み出し続けていきたいと思っています。

◆【インタビューを終えて(水野)】

 毎晩キャバクラで豪遊し、時には一晩で1,000万円使うこともあるとか。

 そもそも「授業をしない塾」という「武田塾」のキャッチフレーズもぶっとんでおり、毎晩、銀行口座がゼロになるまでお金を遣い、通帳の残高をXで公開するなど、破天荒エピソードも耳にする。しかし、そうした常識離れした振る舞いも“宣伝広告費”と割り切っているのかもしれない。

 常識外れの発想の持ち主であることは間違いないが、取材陣に大量の差し入れを用意してくださり、物腰も紳士的で話ぶりも丁寧な常識人の一面も持つ。若くして、ビジネスでもYouTubeでもトップグループを走るだけあり、懐の深い大人物だった気がする。

【プロフィール】林 尚弘

1984年生まれ。学習院大学法学部卒。日本初!授業をしない。武田塾の創業者。フランチャイズ展開8年で400校舎年商130億円に。経営コンサルティングを手がけるほか、令和の虎に出演。多くの事業を成功に導く。著者に『予備校に行っている人は読まないでください』『参考書だけで合格する方法』がある。

<取材・文・構成/水野俊哉・掛端 玲 撮影/大久保尚希>

【水野俊哉】

1973年生まれ。作家。実業家。投資家。サンライズパブリッシング株式会社プロデューサー。経営者を成功に導く「成功請負人」。富裕層のコンサルタントも行う。著書も多数。『幸福の商社、不幸のデパート』『「成功」のトリセツ』『富豪作家 貧乏作家 ビジネス書作家にお金が集まる仕組み』などがある。