宝島社出身・奈良在住の編集者、ふなつあさこです。9月に入っても30℃超えの日々が続いている奈良ですが、それでも朝夕には少し空気がひんやりしていたり、たなびく雲や陽射しの色合いに秋の足音を感じるようになってきました。さて今回は、古今東西の人類共通の願い、長寿延命を願う奈良の散歩道をご紹介します。

飛鳥時代の都「藤原宮」の東西に位置する桜井市の「安倍文殊院(あべもんじゅいん)」と橿原市の「おふさ観音」(観音寺)を結ぶ「大和長寿道」は、その名の通り古来長寿延命を願う人々が通った参拝道で、距離でいうと約4〜5kmのコースです。

ここ最近、いかに元気に長生きするか=健康寿命を延ばすかに関心が集まっていますが、神仏頼みとウォーキングを兼ねられる寺社めぐりで、健康&長生きパワーをアップさせましょう♪

獅子から降りた安倍文殊院(あべもんじゅいん)の文殊菩薩さま 生きてる間に拝めるのはきっと今だけ!

安倍文殊院のご本尊・文殊菩薩さまは巨大な獅子に乗り、従えている4人の脇侍(わきじ/きょうじ。お供の仏さま)とともに「渡海文殊群像(とかいもんじゅぐんぞう)」として国宝指定を受けています。高さ約7mというインパクトのある大きさもさることながら、大仏師・快慶の手による細部まで精緻な表現と華やかな色彩には目を見張るばかり。自然と手を合わせ拝みたくなる厳かさと圧倒的な美を備える、仏像好きの間でも非常に人気の高い仏さまです。

そんな文殊菩薩さまが今年7月、およそ15年ぶりに獅子から降り、ごく間近に参拝できるとあって連日多くの方がお参りに訪れています。なぜ獅子から降りられたのかというと、実は文殊菩薩さまが釘一本使わずに獅子のうえにただ乗っているだけの状態で、全く固定されていないから。万が一に備えての免震工事にともない、またとない貴重な機会が訪れたというわけです。

写真提供:安倍文殊院

通常参拝でもふだんよりずっと近くから文殊菩薩さまにお参りできますが、特別参拝を申し込むと内陣でご祈祷を受けることができ、文殊菩薩さまのまさに眼の前でお参りすることができます。特別参拝は毎日随時受け付けていますが、10名以上で参拝する場合は、必ず事前のご連絡を。

写真提供:安倍文殊院

境内のあずまやに、気になるのぼりが。「名物・亀パン」。受付で購入してみました。その名の通り、長寿の象徴・亀をかたどったパンで、冷凍された状態で販売されています。あずまやの中に電子レンジが設置されており、40秒チンしていただいてみると、中にはかぼちゃ餡がたっぷり。“冬至に食べると長生きできる”食べ物のひとつに数えられるように、かぼちゃは栄養価がとても高いそう。

安倍文殊院
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安倍文殊院は“あの”安倍晴明ゆかりのお寺としても大人気!

作家・夢枕獏さんの小説、それを原作とする岡野玲子さんによる漫画や映画が大ヒットした『陰陽師』。その主人公といえば安倍晴明ですが、安倍文殊院には晴明公の出生の地であるとの口伝が残されているのだそう。金閣浮御堂には、全国で3幅しか残っていないうちの一つである晴明公の尊軸をはじめ、陰陽道に関する宝物が祀られています。

写真提供:安倍文殊院

安倍文殊院に古くから伝わる、安倍晴明公直伝とされる結界札。玄関の内側にお祀りするもので、人々を守るための「五芒星 桔梗印」と方位除けのパワーを発揮する「十二天」を兼ね備えているのだとか。その存在はいつの間にか口コミで広がり、最近は若い人たちもこのお札を求めに参拝に訪れるそう。私もお札をいただいて帰り、さっそくお祀りしました。同封されているハガキを返送すると、1年後に新たなお札を郵送していただくこともできるようです。遠方の方には嬉しいですね。

高台にある晴明堂からは境内全体を見渡すことができ、お社の前には「安倍晴明 天文観測の地」の碑が。晴明公が駆使した陰陽道は、星々の動きを読み解くことを基本としており、そうした天文学や占星術にまつわる経典『宿曜経』を著したのが他ならぬ、文殊菩薩さまと伝えられています。文殊菩薩さまと安倍晴明公の奥深い繋がりにビックリ!