過去5万本の記事より大反響だった話をピックアップ!(初公開2022年6月12日 記事は取材時の状況) * * *
かつては”上がり”とされてきた還暦。人生100年時代という延長戦を迫られた今、おめでたいと手放しで喜べる余裕はない。ミッドライフ・クライシスの先に待ち受ける、60代の厳しい現実とは?
◆新卒で入社した大手メーカーを58歳のときに早期退職
「60~65歳は一番宙ぶらりんだなと思う。年金はもらえず、給与はガクッと下がる」
現在無職の矢内智之さん(仮名・63歳)。新卒で入社した大手メーカーを58歳のときに早期退職した。
「当時の年収は750万円。60歳で再雇用されると給与が半分以下になると聞いていたし、もう辞めたいと思っていました。管理職でもなく、社内の風向きもあまりよくなかったんで」
◆妻とも家庭内別居状態に
それでも仕事は好きでプログラム技術には自信があったが、60代目前の再就職の道は厳しかった。正社員を諦め、派遣社員として就職。だが、コロナ禍のリモートワークに嫌気が差し、昨年退職した。
「部屋にこもりがちになり、目や耳、膝が一気に衰えた。体が痛いと出かける気もうせるし、今は毎日朝から晩までビデオを観たりしてダラダラしてますよ。人と会わないと、2~3日同じ服で風呂も入らなかったり。よくないですね。結婚はしてるけど家庭内別居状態。もともと会話もほぼなかったのが、妻の勤め先が特養なのでコロナ禍で3m以内に近づかないようになり、食事も別です」
◆還暦を過ぎた今も稼ぎはあるが…
東北地方で暮らす田沢義樹さん(仮名・61歳)は、東北大学理学部を卒業後、設計事務所や警備会社、家庭教師のバイトなどを転々としてきた。
還暦を過ぎた今も専門学校の事務職と家庭教師を掛け持ちし月20万円の稼ぎはあるが、病気を患って仕事ができなくなれば数か月で霧消するほどの蓄えしかない。
「最近、緑内障と診断されて毎日点眼したり、酔って転んで前歯を折ったり、老いを感じることが増えました」
◆「ママがいない人生はオマケみたいなもん」
2年前、内縁関係にあったスナックのママががんで急逝して以降、独り者に。
「長年連れ添ったママの死の喪失感はこたえました。ママがいない人生はオマケみたいなもん。支えてくれる人がいなくてやっていけるのかって不安で、今の楽しみは行きつけの焼き鳥屋で飲むことぐらい。それも酒が飲めなくなったらおしまいです」
忍び寄るシルバーライフ・クライシスという人生の落とし穴。自分なりの対処法を見つけたいものだが…
取材・文/週刊SPA!編集部