いつか結婚…は捨てる!おひとりさま女性に“必要不可欠”な4つの視点

老後資金について考えるときに重要なのは、「収支のバランス」です。老後いくらあれば足りるのかについては、毎月どれだけ生活費がかかっているか「支出」を把握しなければ計算できません。

さらに、50代おひとりさま女性が老後の収支をシミュレーションする際には、特別な心構えや観点が必要になります。

1.“いつか結婚するかも”…の想定は捨てる

国立社会保障・人口問題研究所が2022年に発表したデータによると、50代女性の初婚率は1%以下となっています※。「いつか結婚するかも」という想定はいったん捨てて、おひとりさまとしての老後設計に振り切る必要があるでしょう。

※ 参考:国立社会保障・人口問題研究所「人口統計資料集」

2.女性は男性より6年長生きし、12年間介護される

また、平均余命の観点からみると、50歳時点で男性は約32年、女性は約38年あります※1から、女性は男性より6年分多く老後の生活費を見積もる必要があります。

さらに、女性の寿命と健康寿命には約12年の差があり、その間はなんらかの介護が必要になります※2。おひとりさまの聡子さんに介護をしてくれる身近な人がいないとなれば、介護費用も割増しで計算する必要があります。

※1 参考:厚生労働省「主な年齢の平均余命」 
※2 参考:内閣府「令和5年版高齢社会白書」

3.「夫婦世帯」のデータを参考にしてはいけない

老後の収入源の柱は年金になりますが、年金制度は夫婦世帯を基本に設計されているため、一般的な試算はおひとりさま女性の参考にならないことが多々あります。

たとえば、一時期メディアで話題となった「老後2,000万円問題」は、金融庁が提出した報告書から「年金をもらっても、老後は2,000万円不足する」という一部を切り取って報道したことで世間をざわつかせたものです。

しかし、これはそもそも「高齢夫婦無職世帯の家計収支」を根拠に試算された金額ですから、前提条件の異なるおひとりさまの聡子さんには当てはまりません。

おひとりさま女性がもらえる年金について知るには、まずは「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」で自分自身の見込額を確認しましょう。50歳以上であれば、年金事務所で試算してもらうこともできます。

4.「一生実家」の保証はどこにもない

将来的に、高齢の親に介護が必要となり、それまでに十分な介護費用を準備できていない場合、「自宅を売却して介護費用にあてる」ことがあります。また、介護でなくとも、親が亡くなり相続が発生した際、自宅をめぐった相続争いの結果、同居家族(聡子さん)が自宅に住めなくなるケースもあります。

聡子さんが老後も自宅に住み続けられるか否かによって、住居費として見積らなければならない金額は大きく変わります。十分な介護費用はあるか、相続トラブルのタネはないか……親が元気なうちに、家族で話しあっておきましょう。

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厳しい現実に目をそむけたくなるが…50代女性は「改革」のタイミング

FPから一連の説明を受けた聡子さんは、絶句……。うつむいた様子で、少なからずショックを受けているようです。聡子さんにとって厳しい内容となり筆者も心苦しいですが、希望的観測で老後資金を計算しても、実際に必要な額とはかけ離れたものになってしまい、役に立ちません。

試算の結果、老後資金が不足する場合には、対策としてもっとも効果が高いのは「長く働き続けること」です。

聡子さんはいまの職場に不満がなく、できることなら働き続けたいと考えているようですので、早いうちにオーナーである知人に相談しておくといいでしょう。

正規雇用で収入アップを目指したい気持ちもあるけれどいまからでは難しそう……という場合、兼業や副業で複数の収入源を持つのも1つの手段です。いずれにしても、50代おひとりさま女性は自分の希望を明確にし、老後まで見据えた働き方改革に着手するタイミングです。

「こんなに考えないといけないことがあるとは思っていませんでした。すぐに母とオーナーに話してみます」

目を背けたくなる問題にも向き合い、1つひとつ検討・対策していくことが不安解消の第1歩です。

聡子さんの老後資金の準備計画は始まったばかり。「おばあちゃんになってもフラダンスを続けたい」という夢の実現に向けて、筆者のサポートは続きます。

山原 美起子
株式会社FAMORE
ファイナンシャル・プランナー