夫以外の男性との間にできた子供を、夫の実子と偽り育てさせる托卵。その行為がいま話題になっている。なぜそんな企てがまかり通るのか? 男たちが戦慄する「托卵妻」たちの驚愕手口を直撃した!
◆「息子の顔が部下に生き写し」DNA鑑定で真実が明らかに
「真ん中の子だけ顔が似ていないね」
我が子が3歳を迎えたころから親戚にそう指摘されることが増え始めた。そのたびに3児の父親である今井義和さん(仮名・44歳)の妻への疑念は深まっていったという。
「我が家は9歳の長女、4歳の長男、1歳の次男、4歳年下の妻の5人家族です。私も妻も切れ長の一重まぶたで、夫婦で『2人揃って朝青龍顔だね』と冗談を言っていましたし、ルックスは長女と次男にしっかり遺伝しています。なのに、長男だけ顔の系統が平野紫耀みたいな感じで、骨格から明らかに違うんです」
さらに、今井さんには気がかりな点があった。
「似ているんです、その長男の顔が僕のイケメンの部下に。作りどころか長男のふとした表情や歩き方まで生き写しで……。30代前半で中途入社した部下を妻に会わせたのは5年前。外で飲んだ後、うちで飲み直そうとよく我が家に招いていました。初めて部下と会った妻がポツリと『すごいイケメン』と漏らしたのが印象に残っています」
◆DNA鑑定の結果は…
長男は妻がよその男との不貞の末にできた「托卵の子」なのか? 疑惑は今井さんがDNA鑑定に踏み切ったことで明らかになった。
「最近は家計のことで妻とけんかが増え、夫婦仲は冷えきっていました。それでヤケクソでDNA鑑定をしたんです。鑑定は息子と僕の頬の裏を綿棒でこすり、鑑定機関に送るだけ。結果は“クロ”でした」
息子に血の繋がりがないことを知った今井さんの心中は計り知れない。
「先日、妻がSNSに投稿した写真の端に、男性の手元が写りこんでいて、その手首には部下と同じ腕時計がはめられていました。やはり妻は部下と不倫しており、息子の父も彼なのでしょうか。血の繋がりがないとわかった今、長男が中学受験や反抗期を迎えたとき養育費を快く払える自信がありません。一方で、妻に真実を突きつけ離婚するにしても親権はどうなるのか。家庭を壊すのが怖いんです」
◆夫以外の子を妊娠、出産し夫の子と偽って育てる「托卵」
このように既婚女性が夫以外の子を妊娠、出産し夫の子と偽って育てる行為は「托卵」と呼ばれている。男女関係に詳しいライターの亀山早苗氏は、次のように解説する。
「もともと托卵とはカッコウなどがほかの鳥の巣に卵を産みつけて、その鳥に育児を任せる習性のことです。約20年前から漫画などで定期的に取り上げられてきましたが、近年はSNSを中心に、より注目を集めているようです」
考えるだけで恐ろしい話だが、亀山氏が取材した感触だと、「托卵行為に罪悪感を抱く妻はほぼいない」という。
「妻側からすれば、『私の子供なんだから一緒に育ててくれて当然でしょ?』といった思考なのです」
また、托卵妻は以下の2種類に分けられる。
「一つ目は家庭は壊したくないが不倫相手との『愛の証し』がどうしても欲しいという激情型。二つ目は『夫よりも優秀な遺伝子が欲しい』というDNA追求型です。托卵妻は地味な雰囲気の肝っ玉母さんだったり、よき妻であるパターンも多い。見た目だけではわかりません」
◆泥酔した夫にまたがりアリバイ工作する托卵妻
だが、いずれも托卵妻たちのアリバイ工作は戦略的だ。
「血液型で足がつかないように、夫と血液型が同じ男性を不倫相手に選ぶのは序の口。托卵妻の中には、不倫相手と逢瀬したその日の夜、泥酔した夫にまたがって“既成事実”をつくったツワモノも。妻側はバレない限りその事実を墓場まで持っていくので、真実は闇の中というケースが多いのではないでしょうか」
出産後に遺伝子検査などで托卵の事実が明らかになるケースもある。だが、妻が他人の子を身ごもることは、大多数の夫には防ぎようがないのだ。
◆「血縁関係なしは2~3割」DNA鑑定の依頼も急増中
目の前の子供は、本当に自分と血が繋がっているのか──? 積年の疑念に終止符を打つDNA鑑定。遺伝子検査を主力事業とする「seeDNA」代表の富金起範氏は、「弊社では年間5000件以上の鑑定を行っていますが、うち2〜3割が『血縁関係なし』と判定されます」と衝撃的なデータを明かす。
「もちろんすべてが托卵によるものではなく、不妊治療の現場での受精卵の“取り違え”なども含まれています。私自身もこの取り違えを懸念して娘のDNA鑑定を行い、自分の子であることを確認しました。あくまで肌感覚ですが、托卵の事実により親子が『血縁関係なし』と判定されるものは、すべての子供のうち0.数%ほどだと思います」
托卵妻の中には「子供と夫の血液型が同じなら、托卵の事実はバレない」と豪語する女性もいるが、「そもそも血液型は親子関係を立証するための万能な手段ではない」と富金氏は断言する。
「新生児は血液型を調べるための抗体が十分にないので、1歳頃までは正しい判断が難しい。今のところDNA鑑定が、最も確実に血縁関係を知る手立てです」
◆結果が“シロ”だったとしても…
富金氏は「遺伝子検査はまだ未発達の領域で、国内での統一基準がない状態」と課題を指摘しつつ、こうも語った。
「DNA鑑定の技術は年々進化しており、料金も2万~3万円ほど。最短2日で結果を得ることができます。しかし、そもそも托卵を疑いだした時点で夫婦関係には深刻な亀裂が入ってしまいます。たとえ結果が“シロ”でも、家庭は崩壊したままというケースも多いのです」
わずか数日で真実を明かしてくれるDNA鑑定。ただ、一度失われた信頼関係は一朝一夕には回復できないようだ。
【ライター・亀山早苗氏】
明治大学文学部卒業後、ライターに。『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき』(小社刊)はじめ著書多数。「くまモン」の熱烈なファンでもある
【seeDNA代表・富金起範氏】
’03年、国費留学生として来日。筑波大大学院で分子情報医学を学ぶ。’17年に国内初の妊娠中の親子DNA鑑定法を開発し、海外でもサービスを展開中
取材・文/SPA!托卵妻調査隊 写真/AC
―[子供が実は赤の他人[托卵妻]の恐るべき手口]―