鈴木孝貴シェフに聞く、Lenのパンの美味しさの秘密

鈴木シェフは日比谷にある「ペニンシュラホテル」内のベーカリーで、当時スーシェフだった千葉大介さん(シニフィアンシニフィエの志賀勝栄シェフがユーハイムにいらした頃に独特な高加水パンを学んだ方)から教わったことがベースになっているそう。

そうか、Lenさんのむっちりもちもちの生地は志賀シェフの流れを汲んでいたのですね。

その後、Len二子新地店のある場所に以前あったレストランで働くようになり、イタリアンや創作料理を作るという料理の世界へ。

そこでもディナータイムで提供するパンを自家製で焼いていらしたそう。

そのレストランが閉店してからはベーカリーレストランやパン屋の立ち上げ、パン屋併設のフレンチレストランなどを経験。

Lenの創業者の一人から「ノクチラボで料理をしてみないか」「Lenを立ち上げるから一緒にやらないか」と誘われ、ラボで料理を作りながら朝はLenでパンを焼く日々を過ごした後、現在はLenですべてのパンの考案や監修をされています。

また、鈴木シェフは『RED U-35』という35歳以下の若き才能(新しい世代の新しい価値観をもつクリエイター)を発掘する日本最大級の料理人コンペティションにおいて、2022年にカンパーニュでBRONZE EGGを受賞されています。

私はこの大会が始まった当初にテレビで観て大会の存在を知っていたので、鈴木シェフがこのコンテスト出場者だったことを知り、そのクリエイティブな才能からますます目が離せなくなりました。

自家製酵母液について

Lenのパンは地元で採れる果物や摘果された果物を使って自家製酵母液を作り、パンドミ、Lenブレッド、カンパーニュ、バゲット、チャバタなどシンプルなものに使われていて、これからの季節はぶどう、柿、甘夏なども使って酵母を作るのだそう。

ほんのりフルーティーさが出るそうで酵母が変わるごとに食べてみたくなります。

国産小麦100%のパン作り

国産小麦を9種類使い、ほぼ北海道産の小麦。全粒粉のみ秦野のほうにある「横浜小麦」を使用。

産地や生産者を応援したい想いから国産小麦にこだわられているのだそう。

アグリシステムのモンスティルとスムレラをバゲットに使われているそうでお店のスタッフの方も「うちのバゲット香りがよくて好きなんです」とおっしゃっていました。私もそれを聞いて購入しましたが確かに旨味が濃くて歯切れも良く美味しかったです。

隠れた人気のあるパン、シェフがおススメしたいパンは?




◆カンパーニュ サステナビリティ

前述の『RED U-35』でBRONZE EGGを受賞したカンパーニュ。

商品名にある“サステナビリティ”は、固くなってしまったパンや切れ端を乾燥、粉砕し新たな生地に加えているところから。そうすることでより香ばしく旨みの強いパンに仕上がるのだそう。

私は古くなったパンの再利用の仕方でこのような使い方をするのを初めて知りました。

江別製粉のライ麦を20%使用。大地を感じさせるどっしりとしたライ麦の香り。

粉の苦みを感じる部分もあるけれど、酸味はなくクラストも薄く軽やかで食べやすいですね。

クラムはしっとりむちっ。食べると甘みが勝つ!甘いぞ!

全粒粉の粒感も全体に深みを与えています。

トーストするとクラストのカリカリという音が小気味よく響き、クラムは甘みもあるけれど香ばしさが増して、バターを塗るとミルキーさが全体を包み込んでさらに美味しい!

「地元応援ということで川崎産の食材を多く使いますが、日本ならではの食材も応援したいです。フーガスにいぶりがっこを使ったり、枝豆と塩昆布を使ったパンはおにぎりから発想を得ています」




◆海苔まる

レストランでの料理経験から着想を得ることが多いという鈴木シェフの惣菜系おつまみ系パン。

こちらは川崎産の海苔を生地に練り込み、中にクリームチーズと塩昆布を包んで揚げたもの。

イタリアンで前菜として出される「ゼッポリーニ」からヒントを得たそう。

断面からは磯の香り~。ここは湘南かアドリア海か。

リベイクで外カリッ中もちっ。クリームチーズを合わせることで塩昆布の塩味がまろやかに。

濃い目の味つけなのでお酒にも合いますね。

グルタミン酸とイノシン酸の旨みの相乗効果は料理の経験があったからこそ、と鈴木シェフ。

シェフは昔、バゲットにクリームチーズを塗って塩昆布をのせて食べていたのだそう。そのアイデア、自宅でやってみます!




◆クイニーアマン

断面から溢れ出るバターの芳醇な香りだけで悶絶。

川崎産の蜂蜜を使ったガリガリのキャラメルの中にしっとりクロワッサン生地が閉じ込められていたから、このバターの香りが堰を切ったように匂い立つのでしょう。

しっかりした甘みなのに後味は甘ったるくないのがまた食べたくなる好ポイントです。

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鈴木シェフのこれからやってみたいことは

「料理をやってきたのでサンドイッチをやりたいですね。サンドイッチ用に新たに歯切れのよいパンを作って」

それを聞いて私は「自宅でもサンドイッチは作りますが料理人でもあるシェフが考える素材の組合せやお店で使う食材などは一般の人とは違いますから、お店ならではのサンドイッチを食べたいです!」と間髪入れずシェフにお願いしました!!

お店ではたまにコロッケサンドを並べたり、カフェのほうでは卵黄をしょうゆ漬けにし卵サラダに混ぜたものをサンドにした“うみたまサンド”なるものがあるそうですよ。

「生地の改良もしたいです。ブリオッシュは酸味を効かせてもう少し風味を良くしたいですし、Lenブレッドの加水率を上げたいです」

現在でも118%と高加水ですが、Lenブレッドはべたつきがないのです。そこは技術が必要でガスが抜けるとべたつくけれどうまくガスを閉じ込めることで口どけが良くなるのだそう。

「料理業界も経験しているので、パンに合う料理の提案などをイベントでやってみたいですね」

スタッフの方が「当店はシンプルなパンも美味しいのでそのパン達をさらに美味しく食べてもらえる提案ができればいいですよね」と。

ぜひぜひ!お願いいたします!!