EMEA:先端技術への需要受け復調、転換期の可能性

EMEAのM&A市場は複雑な様相を呈しています。

資本投下はまずまずのペースで行われており、転換期を迎える可能性があります。ブロックバスターディールの顕著な増加という特徴も見られています。上半期には、ディール件数は減少しましたが、ディール総額は増加しました。ディール件数は前年同期比で13.9%減少しましたが、ディール総額は30.6%急増しました。

たとえ、経済がエネルギー危機の影から抜け出しても、欧州の産業の中心地は、逆風に直面しています。コスト高という継続的な圧力は、ドイツのエネルギー多消費産業に影響を及ぼしています。

それでも、DACH市場は大きな可能性を秘めており、工業および化学(I&C)セクターがこのサブリージョンを牽引しています。

トルコ、中東・アフリカ、中央および東欧州と南東欧州のサブリージョンは、今後予定されているディールやセクター全体の広がりと多様性において、DACHをわずかに上回っています。これらの地域では、TMTとI&Cがほぼ拮抗してディールフローを牽引しています。

EMEA全体でも、TMTは、人工知能(AI)、サイバーセキュリティ、クラウドサービスなどの先端技術に対する需要の高まりに伴い、引き続き多額の投資を集めています。

AIは、EMEAにおけるディールメーキング全体において、金額と件数ともに引き続き、米国がトップ入札国であることから、欧州と米国で重要な投資争奪戦の場として浮上しています。

EMEAにおけるプライベート・エクイティ・バイアウトは、金額ベースで急回復し、上半期には、前年同期比93.9%増の1,236億ユーロに達しました。バイアウト件数も13%増の1,531件となりました。

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APAC:M&A額の落ち込みが逆転へ

広範なAPAC地域は、あらゆるディール市場のなかでも、最も強力な経済ファンダメンタルズを備えていますが、この点は最近のM&Aトレンドには反映されていません。APACにおける最近のM&Aデータの内容は、悲観的です。取引件数は、前年比で11.5%減少しました。

総額の減少はさらに顕著で、2023年上半期と比較して24.6%減少しました。メガディールはほぼ皆無で、今年上半期までに記録されたのは、3件のみでした。

セクター別では、上半期のAPAC M&A全体の54%をTMT、I&C、ビジネスサービスの各セクターが占めました。

TMTは1,287件のディールを発表し、トップでした。I&Cが717件でこれに続き、ビジネスサービスは483件で、比較的安定していました。ディール金額では、上位3セクターは取引件数ランキングとは若干の違いが見られました。不動産が、TMT、I&Cに続き、金額ベースで第3位のセクターとなりました。

中国、インド、日本は、APACにおけるM&Aの金額、件数ともに引き続き上位の入札国となっています。

オーストラリアとニュージーランドのM&A市場は、回復の兆しを見せています。重要な鉱物は、オーストラリアがこの分野での対外投資政策を微調整するなかで、EMUの焦点となります。

インドでは、米国と欧州の企業買収者が、経済の成長ストーリーに参入したいと考えているため、着実な資金流入が続いています。
 

清水 洋一郎
Datasite 日本責任者