これまでの賃上げの推移

2024年の賃上げは33年ぶりの高水準となりましたが、これまではどのように推移してきたのでしょう。下のグラフは1965年から2024年まで、59年間の賃上げ率の推移を表しています。

出典:厚生労働省「民間主要企業における春季賃上げ状況の推移」より一部抜粋

賃上げ率が上昇していた時期は「いざなぎ景気」「第一次石油危機」「バブル景気」の3つです。この3期間は共通して物価も上昇していました。

一方、第一次石油危機からバブル景気までの期間と、バブル景気以降はおおむね物価が下落していた時期です。そして、約30年ぶりとなる2021年頃から再び物価が上昇しはじめ、2024年に至っています。

5.1%の賃上げといわれてもなかなか実感が湧かない方も多いでしょう。背景には物価の上昇があるためです。厚生労働省の「毎月勤労統計調査」によると、2023年度においては、物価の上昇分を差し引いた実質賃金は前年度比で2.2%減少しました。つまり、物価の上昇に賃金の上昇が追いつかなかったと言い換えられます。

したがって賃上げ率だけでなく、「実質賃金がプラスかどうか」も消費者にとっては重要です。2024年6月の毎月勤労統計調査では前年同月比1.1%増と、2年3カ月ぶりにプラス転換しました。ただし6月は多くの企業でボーナスが支払われ、ボーナスも前年度比で大きく伸びた影響があります。実質賃金が安定してプラス基調になれば肌感覚でも賃上げの効果を捉えやすくなるでしょう。

(広告の後にも続きます)

2024年の賃上げ率で手取りはいくら増える?

2024年の賃上げ率で手取り収入は具体的にどれくらい増えるのでしょうか。ここでは20代男性の平均年収(中央値)で試算してみます。

なお月収・年収には「手取り」と「額面」の2種類があります。健康保険料や厚生年金、税金など国や自治体に支払う(納める)金額が差し引かれた後、銀行口座に振り込まれる金額が「手取り」で、差し引かれる前が「額面」です。

それでは下記の条件で試算しましょう。
・20代男性の平均年収(中央値)…額面で350万円(※)
・2024年の賃上げ率…5.1%
※参考/転職サービスdoda

平均年収を月収に換算すると350万円÷12≒29万2000円です。
5.1%引き上げられると29万2000円×(1+0.051)≒30万7000円になります。

ここで額面から手取りに換算します。年収1000万円未満の場合、手取りは額面の70~80%が目安です。
30万7000円×70%≒21万5000円
30万7000円×80%≒24万6000円
賃上げによって手取り月収は21万5000~24万6000円ほどとなります。

賃上げ前の手取り月収を計算してみましょう。
29万7000円×70%≒20万8000円
29万7000円×80%≒23万8000円
おおむね20万8000~23万8000円だと分かりました。

賃上げ前後で比較すると、月額7000~8000円ほどの増加となるでしょう。