“ジュニアのセンター”だったHiHi Jets髙橋優斗の「CDデビューせずに退所」が意味すること

 9月19日に発表された、ジュニア(旧ジャニーズJr.)の人気グループHiHi Jets髙橋優斗のSTARTO ENTERTAINMENTからの退所には、かなりの衝撃を受けた。それは、単にひとりの人気ジュニアが辞めたというだけにとどまらないほどの影響があるように感じられたからである。

 堂本剛、岡田准一、二宮和也、北山宏光、中山優馬、平野紫耀、神宮寺勇太、岸優太……BBC報道に端を発し、世界中に大きな衝撃を与えた一連の騒動後、多くのタレントが旧ジャニーズ事務所から退所した。

 とはいえ十分なキャリアと実績を積んだあとに新たな道へ歩き出した彼らと、いわゆる〝CDデビュー〟をしていないジュニアの髙橋を同列で語ることはできない。

◆髙橋優斗は「ジュニア全体のセンター」のような存在だった

 ここで、髙橋優斗のジュニア内の位置付けや、彼がやめることがどれだけ大きい意味を持つことなのか、簡単に説明していきたい。

 HiHi Jetsは、2015年に結成され(結成当初のグループ名はHiHi Jet)、ローラースケートを武器に、ジュニア内でもずっと高い人気を誇る現時点では5人組のグループ。

「SUMMER STATION」などテレビ朝日・六本木ヒルズ夏のイベントでは何度も公式応援サポーターを経験、ジュニアでありながらテレビ東京で冠番組が放送中など、グループ自体が結成以来ずっとジュニアの中核であり続けている。

 髙橋は、そのHiHiの最年長メンバーで、センター的ポジションをつとめる存在だった。そして、HiHiのセンターという枠にとどまらず、ジュニア全体のセンターのような存在だった。

 NHK BSで昨年10月まで放送されていた『ザ少年倶楽部』でも、美少年の岩崎大昇とともにメインMCをつとめ、番組に登場する多くのジュニアたちをとりまとめる存在でもあった。

 CDデビューはしていないものの、そのものズバリの「HiHi Jet」をはじめ、オリジナル曲多数、個人としても数多くのテレビドラマや映画にも出演、野球経験による野球中継ゲストや始球式参加など、実績も多い。

 そして、ドームやアリーナクラスの会場で開催されるジュニアコンサートでも、数百人のジュニアたちのどセンターに立つような存在だった。

 かつてのジャニーズJr.時代のタッキー(滝沢秀明)のような、といえばすぐ納得できる世代の方もいるかもしれない。そんなジュニアのど真ん中、顔的存在を突然失ってしまうことになったのである。

◆髙橋優斗の退所が招いてしまう邪推とは

 あらためて説明するまでもないかと思うが、ジュニアは、次期デビューを目指す少年たちの集団でもある。

 次期デビュー有力候補のグループの中心かつジュニアの顔的存在による退所を決断するという事実。髙橋が退所を決断するにいたった真意はわからないが、そこにある事実からは、ジュニアという集団の未来はあまり明るいものではないのではないかという邪推にもつながってしまうのである。

 髙橋優斗の退所とは、つまりそれだけの意味を持つ。

 コンプライアンス違反での契約解除などをのぞくと、次期デビューが嘱望される人気グループに所属するジュニアメンバーの退所というのは、自分の認識では騒動後ではおそらく初めてだ。

 ジュニアたちは、まだ芸能界でのポジションも安定せず保証もない存在なだけに、冒頭にあげたスターたちと違って簡単に辞めるわけにはいかない。芸能界の大海原に飛び出すよりも、残留して活動しデビューを待つほうがまだ良いのではないかと判断するジュニアも多数いるだろう。

 さらに言えば、これだけの実績を残して活躍するジュニアの髙橋がデビューできず、先日より始まった、timelesz(旧Sexy Zone)の新メンバーオーディションで、ジュニアではなく一般からメンバーを募っていることに対して、あれだけ長年がんばっているジュニアたちがいて、髙橋優斗も退所するのに、ジュニアとして何の実績もない一般人が‘(極端な言い方だが)デビューできるかもしれないなんて!というヘイトが生まれるという思わぬもらい事故も発生してしまっている。

◆CDデビューだけがすべてではないのかもしれない

「髙橋退所事変」の余波はまだまだ広がりそうだ。

 髙橋は、有料のブログ上で、こんなメッセージを残した。

「髙橋優斗のアイドル人生は最高でした」

 CDデビューが叶わなかったアイドルが語る「アイドル人生」という言葉に、なんとも言えない切なさとある種の美しさを感じてしまった。CDデビューだけがすべてではない、彼の中で「アイドル」は十分やり切った、だから新たな道を選んだ、そういうことだろうか。

 最後に余談ぽいが、先にあげたオリジナル曲「HiHi Jet」に、こんな歌詞がある。

<君とJETなDOするLIFEなう>

 何を言っているのか全然分からないが、それこそが旧事務所らしさが詰め込まれているような気がして個人的に大好きなフレーズである。

 退所後、髙橋優斗がどのような道を歩むことを選ぶのか分からないが、その道で〝JETなDO〟することができたらいいなと。自分でも何を言っているのかやっぱり分からないが、そんな言葉で送り出すことこそが、一番かなと思ったりする。

<文・太田サトル>

【太田サトル】

ライター・編集・インタビュアー・アイドルウォッチャー(男女とも)。ウェブや雑誌などでエンタメ系記事やインタビューなどを主に執筆。