日本は、資格の数が3000以上もあるという資格大国。それだけに複数の資格を持っている人は多いが、お笑い芸人コンビ「女と男」の市川義一さんに匹敵する人は、そういないだろう。
市川さんが有する資格は、最近取ったという唐揚検定を含めて48個。著書『「地味な資格」だけで人生は豊かになる』(Gakken)では、たくさんの資格を取って豊かになった職業人生を綴っている。
そんな市川さんに、資格が秘める「パワー」と、資格取得を目指す人へのアドバイスについて話していただいた。
◆添乗員の資格取得には実務経験が必要だった
――ラグビーのレフリーの資格を取って、月収が3倍になったとのことで驚きました。他に目に見えて収入増加に結び付いた資格はありますか?
市川義一(以下、市川):添乗員の資格ですね。これには、きっかけがあって、月亭八光(はちみつ)さんが企画するバスツアーです。それは、ファンと一緒にバスに乗って旅行するというものでした。あるときそのツアーに同行して、八光さんから、『法律でバスツアーには必ず1人添乗員が同乗せなあかんが、そのぶんお金がかかる。で、おまえが添乗員の資格を取れば、その分のギャラを上げられるのに』と、言ってきたんですね。
うまく乗せられた感じですが、その気になって添乗員の資格について調べたのです。それで、国内のみ添乗ができるものと、国内・海外ともに添乗できるものの2種類の資格があることがわかりました。自分としては、国内のみで十分ですが、それでも筆記試験にくわえ、実務経験が3ヶ月以上必要なのです。
◆派遣会社に登録してアルバイトを
——3ヶ月の実務経験はハードルが高いですね。
市川:ちょっと悩んだのですが、人脈をたどって知り合いに聞いたら、旅行会社の人が添乗員をやっているわけではないそうです。実は、添乗員の派遣会社があって、旅行会社は、そこから添乗員を派遣してもらう仕組みだそうです。そこで、添乗員派遣会社を紹介してもらい、そこに登録してアルバイトを始めました。
新大阪駅前のバス乗り場で、日帰りスキーバスツアーなどの受付から始まって、乗客の点呼確認、見送りのアナウンスなどしました。こうした仕事でも、実務という扱いになります。
3ヶ月経って実務の要件はクリアし、筆記試験を受けて合格しました。試験内容は、日本の三大祭りは何かとか、研修でしっかり勉強すれば難易度は高いものではありません。
この資格のおかげで、テレビのロケが増えたりとか、仕事の幅が広がりました。
◆空き家の改修に活用された資格とは?
――添乗員の資格を持ったことから巡り巡って、兵庫県市川町でセカンドハウスを所有に至ったそうですが、どのようなかたちで実現したのでしょうか?
市川:市川町の夏祭りで漫才をしたことで、町の企画制作課から『同じ名字だし、うちのPR大使やってみませんか?』と言われ、PR大使になったのが、この町との縁の始まりです。
それで市川町が好きになり、コロナ禍のさなかにオンラインのバスツアーで添乗員となって、町の魅力を伝えたりしました。
さらに、個人的にこの町のために何かできへんかなと思いました。先輩のシャンプーハット・てつじさんが、京都府綾部市で古民家を買って、綾部を盛り上げる取り組みをしているのがヒントになりました。「僕も、市川町でやってみるかな」と思ったのですね。町は、空き家や過疎の問題があり、その改善にお手伝いできるかなと。
――具体的にどんな空き家を買ったのでしょうか。
市川:町の方から10年以上放置された空き家を紹介されたのですが、数千平方メートルの土地付きでびっくり。ファイナンシャルプランナーの知識も生かして節税・節約して、できるだけ低コストで空き家の改修をしてもらいました。クラウドファンディングも活用して、町おこし的なプロジェクトとしたので、盛り上がりました。
この過程で、家の補修に興味を持って、何か資格ないかなと探したら、日曜大工士資格というものを見つけました。ちゃんとした建築系の資格ではないですし、本格的なリノベーションは無理ですけど、壁紙を貼る、家具を作るなどができるようになります。
◆最初は簡単な資格を取って自信につなげる
――市川さんの話を読んで、「自分も資格取ろうかな」と、興味がわく人は多いと思います。資格取得を目指す社会人に、何かアドバイスありますか?
市川:資格って難しいもんやと思うかもしれませんが、簡単なものもあります。まずは、最初の1個に受かる喜びを感じていただきたいので、本当に簡単な資格からチャレンジしてみてください。それからは、好きなことに関する資格をとってみてください。資格を取ったからには、それで仕事につなげようとは、最初のうちは思わないでいきましょう。
ぜひ取っておきたいおすすめの資格っていうのはなくて、ネットで調べて、各人各様に興味のあるものを選べばいいのです。
――実際に資格を取ることで評価は変わるものでしょうか。
市川:日本人は資格が好きで、資格の数はたくさんあります。アメリカ人とかは、資格がなくても実力があるかどうかで判断される傾向ですが、日本人は、資格を持っていたらすごいという意識が強いのですね。
僕なんか、エリートでもなければ、学生時代は勉強が好きだったわけでもありません。でも、資格を持つことで、周囲の見る目も変わりました。誰でもできるので、皆さんぜひ自信持って、資格取得に取り組んでいただきたいなと思います。
市川義一
いちかわ・よしかず 1980年、大阪市生まれ。大学卒業後、金融関係の会社に就職するも、芸人になる夢を捨て切れず、1年で退職。2003年に吉本興業に入社し、ワダちゃんと「女と男」のコンビを結成。ファイナンシャルプランナーの資格を皮切りに様々な資格を取得し、「資格芸人」として世に知られるように。著書に『「地味な資格」だけで人生は豊かになる: 資格で人生を激変させた『「地味な資格」だけで人生は豊かになる』(Gakken)がある。
公式サイト:https://profile.yoshimoto.co.jp/talent/detail?id=369
X:@yochi22222
Instagram:YouTube「市川の最新家電チャンネル」
YouTube「女と男ちゃんねる」
<取材・文/鈴木拓也>
【鈴木拓也】
ライター、写真家、ボードゲームクリエイター。ちょっとユニークな職業人生を送る人々が目下の関心領域。そのほか、歴史、アート、健康、仕事術、トラベルなど興味の対象は幅広く、記事として書く分野は多岐にわたる。Instagram:@happysuzuki