ややボーイッシュで青い短髪に、特別な色気が宿る美女がいる。ROKUSAN ANGEL(旧バーレスク東京)の若手ダンサー・かなでさんだ。22歳と若年ながら、4歳からダンスを始めた本格派。最近では『家、ついて行ってイイですか?』(テレビ東京)への出演などで顔を知る人も多いだろう。
中学生時代からの5年間をアイドルとして活動した彼女は、なぜ六本木の夜の街を新天地に選んだのか。葛藤の末に辿り着いたその場所で舞う決意とは――。
◆アイドルからショーダンサーの道へ
――15歳からアイドルをされていたと伺いました。ROKUSAN ANGEL(旧バーレスク東京)とは趣が異なりませんか?
かなで:確かに違うところもありますね。肌の露出も多いですし(笑)。ただ、キャスト全員がショーに向けて本気で練習しているところなどは、アイドル時代の活動に通じていると思います。また、4歳からダンスを始めて小4からはブレイクダンスも習っていたので、踊りにはもともと興味がありました。くわえて、グラビアアイドルなどの可愛い女性も好きなので、「ダンス×水着」というコラボは個人的にもツボなんです(笑)。
――もうすぐ所属して1年になるそうですね。将来的に目指しているのは、どんなダンサーでしょうか?
かなで:まだまだステージでの立ち位置は中央から遠いことが多いのですが、どんな場所からでも見つけてもらえるように、一切気を抜かないパフォーマンスを意識しています。目指す地点については、誰かになりたいというものはないので難しいですが、生来目立ちたがりなので、センターを任せてもらえるダンサーになりたいとは常々思っています。また、ダンス以外にもあらゆるメディアに出ていきたいです。
◆静岡から東京に通っていた日々
――エンターテイメントの世界で生きていこうと決めたのは、いつくらいからでしょうか?
かなで:小学生のころから芸能事務所には所属していて、端役はもらえていました。中学生になると、先ほどお話したように、アイドル活動をするようになるんですね。お客さんを直接勇気づけることのできる仕事で、とてもやりがいがあったのが大きいですね。苦痛に感じたことは一度もありません。
私は静岡県に住んでいましたので、週末にレッスンやライブのために東京へ出向いて……という生活でした。もともとは父が私をアイドルにしたくて始めた活動だったのですが、母が送り迎えをしてくれたり、私の芸能活動を中心に家族が動いていたような感じですね。
◆「優しくて頼りがいのある」父の不倫
――放送でもおっしゃっていましたが、そのあと、お父様の不倫が発覚するわけですね。詳細を伺っても大丈夫でしょうか?
かなで:はい。もう2年近く直接会っていないので、発覚したのもそのくらいの時期だったと思います。父は経営者で、埼玉県で事業をしていました。実家は静岡県にあって、犬6匹と猫7匹とともに暮らしているので、そうそう母も父のところに行けないんですよね。で、いつ頃からか、従業員と不倫関係になったようです。
――かなでさんも多感な時期ですから、相当なショックを受けたでしょうね。
かなで:もちろん父が不倫していたことはかなりショックでした。何しろ、アイドル活動などを導いてくれた存在ですし、誰よりも応援してくれた男性です。尊敬していましたし、優しくて頼りがいのあるお父さん像が一気に崩れたのも事実です。
今にして思うと、不倫相手の従業員について、父はよく家族にも話をしていました。占いがとても良く当たる人だとか、「この家には霊がいる」と言ったとか(笑)。もしかすると心の隙間に入るのが上手な人だったのかもしれません。ただ、なにより幻滅したのは、不倫がバレたときの父の態度ですね。
◆「真意が全然わからなかった」父の主張
――詳しく伺ってもいいですか?
かなで:当時、都内でのアイドル活動が多かった私は、近郊にある父の事業所に日常的にいました。家族で住むために、新たに埼玉県に土地を買ったところだったんです。その日は、もうそろそろ母が引っ越してくるというタイミングでした。今でも覚えているんですが、父と2人で酢豚を食べていて、突然「お母さん、来ないかもしれない。パパに好きな人ができたんだ」って言われたんです(笑)。最初は、何を言っているのか全然わからなかったです。聞いてみると、件の従業員とくっついてしまったということでした。正直、その日のことを思い出すので、酢豚が好きではなくなってしまいました。
あとから聞いた話では、母はその前に父と電話していて、「近いうちにそっちに行く」と伝えたときに父が挙動不審だったので問い詰めたらしいんです。それで、発覚したと。意味がよくわからないのは、父が母に対して「不倫相手とも仲良くしつつ、家族とも仲良くしたい」という趣旨のことを言ったらしくて。不倫がバレて謝罪したあと、家族のところに戻ってきて再構築する……というのならまだしも、「みんなと仲良くしたい」の真意が全然わからなくて(笑)。もう、父のことは諦めました。
――お父様の不倫の時期はアイドルを辞めた時期と符合しますが、関係があるのでしょうか?
かなで:おそらく無関係ではないと思います。ただ、それ以外にも、自分の弱さによるところもあったので、断定的なことは言えないですね。あの当時は、考えたくないいろいろなことを考えてしまう時期でもありました。
◆「どうせ信じていても裏切られる」という思いが
――もっとも信頼していた男性に裏切られるという経験は、恋愛観にも影を落としませんか?
かなで:そうですね。私、『家、ついて行ってイイですか?』でも“ヲタ芸”を披露してしまうくらい筋金入りの陰キャで、ただでさえ恋愛経験が多くないんです。それに加えて、やはり根底に「どうせ信じていても裏切られるから」というのがあって。父のことはネタにしているようで、自分のなかでもまだ消化できていないのかもしれません。不貞行為は家族を壊しますが、家族の心も壊しますよね。
――そうなると、かなでさんが自分を解放する場所は、やはりステージですか?
かなで:ステージで踊っている時間は、とても楽しいですね。お客さんはそれぞれ日常生活での疲れを抱えて、癒やしを求めて来てくれていると思います。私たちはお客さんからお金と時間をもらってパフォーマンスをしているので、常に高いレベルのものを魅せられるよう、練習に向き合っています。ステージからみんなの笑顔が見えると、とても嬉しい気持ちになります。
――最後に、かなでさんの仕事との向き合い方、今後の展望について教えてください。
かなで:私自身、アイドルなどのライブが好きで、観る側としても楽しんできたので、常に「もしも自分がお客さんならどうしてほしいかな?」と考えながらパフォーマンスするようにしています。ほぼ毎日ショーや練習があるので、肉体的には疲れるときもあります。でも、ステージはいつも一期一会だから、今このとき目の前にいるお客さんに、全力で応えたいんです。
これからの展望ですが、大好きなダンスを仕事にできることに感謝しながら、ステージでもっと存在感を発揮できるようなパフォーマーになりたいです。直近の目標は、次の10月24日に所属から1年を迎えるので、多くの人にショーにお越しいただいて、より成長した姿を見てもらえればと思っています。
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心の支えを逸したとき、人は著しくバランスを崩す。唐突に訪れた家族の崩壊と、親しんできたアイドル活動の終焉。両翼を失ってなお、かなでさんは一途に舞い続けて新たなステージに辿り着いた。若き日に経験したあらゆる感情が閃光まばゆいその舞台で花開く日が、きっと来る。
<取材・文/黒島暁生>
【黒島暁生】
ライター、エッセイスト。可視化されにくいマイノリティに寄り添い、活字化することをライフワークとする。『潮』『サンデー毎日』『週刊金曜日』などでも執筆中。Twitter:@kuroshimaaki