遺産分割協議書を使用する主な手続きと必要書類

遺産分割協議書は、作成後にさまざまな手続きに使用します。ここでは、遺産分割協議書遺産部を使用する主な手続きを紹介するとともに、各手続きに必要となる書類の例を解説します。

ただし、状況によってはここで紹介した以外の書類が必要となることもあるため、実際に手続きをする際は、手続き先または弁護士などの専門家へ相談することができます。なお、次の書類をまとめて「相続手続き基本書類」と定義します。

・遺産分割協議書
・相続人全員の印鑑証明書
・被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本等など、相続人確定に必要となる書類
・相続人全員の戸籍謄本
・被相続人の住民票除票
・相続放棄をした者がいる場合の「相続放棄受理証明書」

不動産の名義変更(相続登記)

不動産の名義変更とは、被相続人名義の不動産を相続人の名義へと変える手続きです。この手続きは、その不動産を管轄する法務局で行います。相続登記の主な必要書類は、次のとおりです。

・相続手続き基本書類
・相続登記申請書(自分で作成)
・不動産を相続する相続人の住民票
・不動産の固定資産税評価証明書または評価通知書(不動産の所在地を管轄する市区町村役場で取得)
・不動産の登記事項証明書
・相続関係説明図(または法定相続情報一覧図)

預貯金の解約

預貯金の解約とは、被相続人の普通預金や定期預金などの預貯金を解約し、預貯金を引き出す手続きです。この手続きは、被相続人が口座を有していた各金融機関で行います。預貯金の解約には、原則として次の書類などが必要です。

・相続手続き基本書類
・金融機関所定の「相続届」など(手続き先の金融機関で取得)
・被相続人の通帳とキャッシュカード(なければ紛失扱いで手続き可能)

有価証券の名義変更・移管

有価証券の名義変更や移管とは、被相続人の証券口座を解約し、預託していた有価証券(上場株式や投資信託など)の名義を相続人へと変え、相続人が有する証券口座へ移し替える手続きです。この手続きは、被相続人が口座を有していた証券会社で行います。有価証券の名義変更や移管には、次の書類などが必要となります。

・相続手続き基本書類
・証券会社所定の「相続届」など(手続き先の証券会社で取得)

自動車の名義変更

自動車の名義変更とは、被相続人名義の自動車を相続人へと変える手続きです。この手続きは、運輸支局などで行います。自動車の名義変更に必要となる手続きは、次のものなどです。

・相続手続き基本書類
・車検証
・車庫証明書(あらかじめ、今後の駐車位置を管轄する警察署で取得)

ただし、名義変更をしようとする自動車の時価によっては一部の書類を省略できます。

相続税申告

相続税とは、遺産などに対してかかる税金です。各相続人が納めるべき相続税の額は遺産分割の内容によって異なるため、相続税申告には、原則として遺産分割協議書の写しを添付しなければなりません。相続税申告には計算根拠や計算過程を示すさまざまな書類が必要です。相続性申告を自分で行うことは容易ではないため、税理士などの専門家にご相談ください。

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遺産分割協議がまとまらないと…

遺産分割協議書を作成するためには、遺産分割協議がまとまっていなければなりません。では、相続人間で遺産分割協議が成立しない場合は、どうすればよいのでしょうか? 最後に、遺産分割協議が成立しない場合の対応を解説します。

遺産分割調停を申し立てる

遺産分割協議がまとまらない場合は、遺産分割調停を申し立てて解決を図ることになります。遺産分割協協議とは、家庭裁判所で行う話し合いの手続きです。話し合いとはいえ、相手方と直接対峙するのではなく、家庭裁判所の調停委員が双方から交互に意見を聞き、意見を調整する形で進行します。そのため、冷静な主張がしやすくなり、意見がまとまりやすくなります。

遺産分割審判に移行する

遺産分割調停を経ても相続人間の合意が得られない場合には、遺産分割調停が不成立となります。遺産分割調停が不成立となると、自動的に遺産分割審判へ移行します。遺産分割審判とは、家庭裁判所に遺産のわけ方を決めてもらう手続きです。

家庭裁判所が下した審判には相続人全員が従わなければならず、仮に不服がある場合は審判書を受け取ってから14日以内に即時抗告を行うことができます。