田舎暮らし満喫から一転→都会にUターンのワケ
平穏な日々が6年続いたある冬の朝。いつものように夫を職場へ送り出して家事をこなしていた妻のもとへ、知人から1本の電話が入ります。
知人「落ち着いて聞いてね。旦那さんがバイクで転倒して怪我をしているわ。救急車で○○総合病院に向かっています」
どうやら凍結した路面でスリップしてしまい、単独事故を起こしてしまったようです。夫に意識はあったものの、頭を強く打っているようで検査が必要なうえ、右足も骨折していたようだとわかり、しばらく入院することになりました。
そんな折、自宅近くでイノシシが頻繁に目撃されるようになりました。畑を荒らし、時には人を襲うような素振りを見せるため、夫不在の家に住む妻は、外出することが怖くなっていました。畑へ出ることもできないため、畑の作物は収穫できず荒れ放題です。
夫は1ヵ月ほどで退院しましたが、骨折の予後が芳しくないため、しばらくリハビリが必要とのこと。仕事再開は当分先になる見込みです。妻のほうも、事故後の病院通いやイノシシ騒ぎで体調を崩してしまい、日常の買い物もままならなくなっていたそうです。
順調な生活はガラガラと音を立てて崩れていきました。実は、資金計画にも誤差が生じていました。移住後の生活費を低く見積もり過ぎていたようです。家庭菜園やご近所からの差し入れで食費は減ったものの、移住前より多くかかる費用もあり、1ヵ月の合計支出は移住前後でさほど変わりませんでした。
【移住後の石河家の収支】※1ヵ月あたり
◎収入合計:42.5万円
年金収入(年金2名分):35万円
夫のパート代:7.5万円
◎支出合計 28.4万円
住居費(固定資産税、修繕費):2万円
食費:5万円
日用品:1.5万円
交通費(ガソリン代):1.5万円
通信費:0.6万円
水道光熱費:2.5万円
その他(レジャー費など):10万円
税・社会保険料:5.3万円
◎収支(収入➖支出):14.1万円
2人の年金と夫のパート代で月の収支が赤字になることはないものの、今回の入院にかかった医療費、交通費(ガソリン代)、雑費などで預金の一部を取り崩していました。
夫婦は心身ともに疲れてしまい、「1日も早く引っ越したい」と考えるように。そして、移住から7年後、田舎暮らしにピリオドを打ちました。結局、長年住んでいた土地勘のある場所へ戻ることにしたそうです。
とはいっても、マンションは売却してしまっていたので戻る家はありません。今は、家賃8万円の賃貸マンションに暮らしながら、年金の範囲で生活をしています。長野のログハウスは売りに出しますが、最終的にいくらで売れるのかは未定です。
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憧れの暮らしを手放すことに…ライフプランの立て直しが必要
退職金を手にしたことをきっかけに地方移住を決心するシニア世代は増えていますが、調査・情報不足により、憧れの暮らしをあきらめざるを得なくなる人も一定数いるようです。
順調に見えた石河さんの田舎暮らしも、想定外の出来事が重なったことで心身ともに疲弊してしまい、住みなれた場所へ戻る決心をしました。石河さんには預金と十分な年金があったため、取りあえずの生活は成り立っていますが、一生、家賃を払い続けるとなると不安は残ります。
多くの場合、老後の生活費の大部分を年金でまかなうことになります。共働き夫婦の場合、年金が潤沢にあることが強みであることは間違いありませんが、夫婦のどちらかが亡くなったときに遺族厚生年金が満額支給されないことによる収入減に直面する懸念があります。
石河さんは、そのことも念頭において、今後のライフプランを立て直していく必要があるでしょう。