現在あるお墓を解体・撤去し、墓地を更地にする「墓じまい」。少子高齢化の影響などから最近耳にすることが多くなりましたが、具体的に何から始めて、どんな点に注意すればいいのでしょうか。本記事では、松尾拓也氏の著書『「おふたりさまの老後」は準備が10割』(東洋経済新報社)より一部を抜粋・再編集し、知っておきたい「墓じまい」の基礎についてご紹介します。

Q. 「墓じまい」って、何から手をつけたらよいのでしょうか?

A. お墓の名義の確認、改装先の選定、宗教者の手配など、やることがたくさんあります。

少子化が進み、お墓を承継してくれる人がいない場合や、高齢となって地方にあるお墓をそろそろ整理しようと考える人が増えてきたことから、最近は「墓じまい」という言葉を耳にすることも多くなりました。

現在あるお墓を解体・撤去し、墓地を更地にすることを「墓じまい」と呼びます。では、墓じまいの具体的な方法や注意点を紹介しましょう。

■墓じまいに必要な準備と手順

墓じまいでは、今あるお墓を解体撤去することと、そこに納骨されていたお骨を別の施設に移すこと(「改葬」と呼びます)の2つを同時に行います。

①名義の確認・変更

まず、お墓の使用者(名義)を確認します。古いお墓の場合、この墓地使用者の名義がしばらく変更されずに故人のままとなっているケースが多いです。故人の名義のままでは各種の申請を行うことができないので、墓地の名義を自分なり別の親戚なり、生きている人の名前に変える必要があります。

これを墓地の承継手続きと呼びますが、墓地の管理者によって、届出のみで済む場合もあれば、これまでの使用者とこれからの使用者の関係性を証明するために戸籍謄本などの証拠書類の提出を求められる場合まであります。

②墓地の返還とお墓の解体工事に関する手続き

墓地の管理者によって必要な手続きは異なりますが、多くの場合、次の届出が必要です。

墓地の返還に関する届出(墓地返還届など)
お墓の解体に関する届出(墓地工事施工届など)
お骨の移動に関する届出(改葬許可申請)

ここで注意が必要なのは、これまでお墓に入っていたお骨をどこに移すか決めないと、改葬許可申請という手続きを行えない点です。わかりやすくいえば、お骨の引っ越し先を事前に決める必要があるのです。

なので、古いお墓の墓じまいと並行して、新しいお墓なり、合葬墓なりといった改葬先を見つけて、事前に申し込みを済ませておく必要があります。

③石材業者への依頼

続いて、解体工事を依頼する石材業者を探しておく必要があります。お墓のある地方を離れて久しい場合、土地勘のないところで石材業者を探さなければならず、一苦労するケースもあります。

①〜③の墓じまいの手続きに関しては、石材業者が相談に乗ってくれる場合もあります。また、改葬手続きを得意とする行政書士に委任する方法もあります。

ちなみに、著者は石材業者と行政書士の二足の草わらじ鞋を履いていますので、改葬手続きに関しては得意だと自負しています(笑)。

■遺骨を取り出す前に行う「閉眼供養」

さらに、墓じまいにともなう「閉眼供養」(魂抜きともいいます)を行う際には、僧侶の手配をする必要があります。これは墓から遺骨を取り出す前に行います。

お付き合いのある寺院がある場合は依頼先がはっきりしていますが、お墓のある地方を離れて久しい場合には、どこの寺院に依頼すればよいのかわからない場合もあります。

わからない場合は、石材業者などに相談してもよいでしょう。

このような事前準備を経て、閉眼供養を行った後に石材業者にお墓を解体してもらい、お骨を改葬先の施設に納骨して、墓じまいは無事に完了となります。

お墓の解体に立ち会う場合は、改葬先への移動も行うことになるため、日程に余裕をもたせた検討が必要です。

■親族への連絡も忘れずに

墓じまいの注意点として、親族への相談があります。先祖代々受け継がれてきたお墓の場合、多くの親族にとっても、自分たちのご先祖さまが納骨されているお墓だといえます。

「お墓参りにいったら、知らないうちにご先祖さまのお墓がなくなっていた」というようなことにならないように、事前に墓じまいの意向を伝えておくことが、トラブル防止につながります。

墓じまいには、事前の準備やさまざまな関係者との調整が欠かせません。思った以上にやらなければいけないことが多いので、じっくりと腰を据えて取りかかることをおすすめします。

松尾拓也
行政書士/ファイナンシャルプランナー