「貯金から投資へ」の風潮が強まる昨今。資産運用の必要性が訴えられるなか、安易な投資詐欺に騙される人が露見するなど、日本人の金融リテラシーの低さが指摘されています。それは日本人富裕層にも当てはまるようで……。本記事では、世古口俊介氏の著書『富裕層のための米ドル債券投資戦略』(総合法令出版)より一部を抜粋し、資産運用の後進国である日本の現状を解説します。
富裕層共通の悩み「どのように資産運用したらいいかわからない」
どのようなタイプの富裕層でも共通の悩みが1つあります。それはやはり「どのように資産運用したらいいかわからない」という悩みです。
選べるからこそ難しい
富裕層は資産がたくさんあるので金融機関のどのようなサービスも受けることができます。しかし、選択肢がたくさんありすぎて逆にどれがいいか、自分に最適なサービスやアドバイザーを選ぶことが難しくなっています。
それは日本に存在する金融機関の数を見ればわかります。銀行は500行以上、証券会社は200社以上あるといわれています。富裕層はこの数多く存在する金融機関の中から一番自分に合ったサービスや金融商品を選ばなければなりません。
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「円預金」に偏る金融資産…圧倒的に広がったアメリカ人との差
日本の富裕層の金融資産の大半が円預金に偏っています。アメリカ人が保有している金融資産と比較するとその差は明らかです。
日本人の金融資産に占める現預金の割合が5割強なのに対してアメリカ人は1割強、一方で日本人の株式・債券等の資産は17%に対して、アメリカ人は5割強となっており、日本人とアメリカ人では現預金と株式・債券の比率がほぼ逆転しています。
このように日本人は資産運用をしないことで、2000年末から2023年6月末までの間にアメリカ人の個人金融資産は3.3倍に成長していますが、日本人の金融資産は1.5倍の成長にとどまっています。資産の成長率だとアメリカは230%、日本は50%なのでアメリカ人は日本人より4.6倍も個人の金融資産を成長させているということになります。このアメリカ人の資産成長の大部分を占めるのが資産運用の効果と考えられています。
このデータは国民全体の平均値になりますが、私が長年富裕層の方の資産運用をお手伝いしてきた経験から富裕層の資産運用においても近しいことがいえると考えています。日本の富裕層は資産運用をしないことによって資産があまり成長していないのです。