ガルダ湖岸に広がるヴァルテネジはイタリアでも優れたロゼワインの産地として知られる。近年注目を集めている瓶内2次発酵スパークリングも秀逸なものが生まれる。「コスタリパ」はヴァルテネジを代表する生産者だ。
イタリア最大の湖ガルダ南西岸に広がるなだらかな丘陵地帯が、ヴァルテネジだ。デセンツァーノからサロまで20キロにわたり南北に延びる湖岸に沿って広がるブドウ畑は東向きで、朝の太陽を受ける。ガルダ湖は冬でも水温が7℃以下になることがなく、温暖な地中海性気候だ。ヴァルテネジは冬でも気温がマイナスになることは稀である。ただアルプスに近いので夜は涼しく、ワインはフレッシュさを保持する。67種類ある多様な土壌がワインにアロマの複雑さ、調和、ミネラルを与える。
ヴァルテネジのロゼワインは軽やかで、優美だ。使用されるグロッペッロ・ジェンティーレはデリケートで洗練された品種。旗頭ワインである『ヴァルテネジ・ロザマーラ』は、『ガンベロ・ロッソ・イタリアワインガイド』で最高評価トレ・ビッキエーリを獲得したこともあり、イタリアを代表するロゼワインの一つ。2023年は淡いピンク色で、ピーチ、オレンジ、チェリーの香りにニオイスミレと白胡椒が混ざる。生き生きとした味わいで、上品なミネラルが長く続く。ブドウの樹齢は25年以上と高く、成熟したブドウだけを朝の涼しい時間帯に収穫し、ブドウの自然な重みで涙のように滴るフリーラン果汁だけを使用する(「ラクリマ方式」ラクリマはイタリア語で涙を意味する)。果汁の35パーセントは古いオーク小樽(228リットル)で発酵、6カ月熟成させることによりワインにヴォリュームと広がりを与える。太陽と湖の風を感じさせる魅惑的なロゼワインだ。
驚くべき長期熟成能力を示すのが『ヴァルテネジ・モルメンティ』だ。2年の小樽(400リットル)熟成、3年の瓶熟成を経てリリースされる。2015年はガンベロ・ロッソ・イタリアワインガイドのイタリア最高のロゼワインに選ばれている。2019年は繊細かつ複雑で、イタリアのロゼワインの頂点に立つ。
瓶内2次発酵スパークリングも素晴らしい。マッティア・ヴェッツォーラ氏は1981年から2021年まで40年にわたりフランチャコルタの名門ベッラヴィスタの醸造責任者を務め、優美極まりないスタイルを築き上げた功績者だ。マッティア氏が追求しているのは、技術よりも手作業、直感を重視する職人的なスタイル。ブリュットは繊細で、みずみずしく、絹のような口当たりが特徴。ブリュット・ロゼは調和が取れて、滑らかだ。偉大なヴィンテージを表現する『グランデ・アンナータ・ロゼ 2018年』は軽やかさと複雑さを見事に両立させている。一貫してマッティア・ヴェッツォーラならではのスタイルである。
text by Isao MIYAJIMA
生産者オフィシャルサイトhttps://costaripa.it/?lang=en