A夫妻が「59歳のいまから」年金を増やす方法

サラリーマンの夫…「60歳以降の勤務」で増やせる

Aさんは60歳で定年後、65歳までいまの会社に再雇用で残る予定とのことでした。再雇用後、60歳以降の月給(標準報酬月額)は38万円になる見込みです。引き続き厚生年金に加入してこの条件で勤務すれば、老齢厚生年金の報酬比例部分が月1万円(年間12万円)程度増えることになります。

また、Aさんには、20歳から大学卒業までの学生時代の国民年金未加入期間が48ヵ月分あったことから、基礎年金相当の経過的加算額として年間8万円程度増えます。その結果、Aさんが65歳から受給できる年金額は年間224万円程度になり、月額になおすと18万円以上になります。

なお、厚生年金自体は70歳になるまで加入できるため、65歳以降勤務した場合の厚生年金保険料も掛け捨てにならず、その後退職するときなどに年金額が再計算され、さらに受給額を増やすことが可能です。

専業主婦の妻…60歳以降に「任意加入」で年金が増やせる

また、Bさんの年金見込額84万円のうち、老齢基礎年金が75万4,800円です。学生時代、20歳から卒業までの国民年金に未加入期間が36ヵ月あったことから、基礎年金の満額81万6,000円(2024年度の68歳以下の額)には達していません。

国民年金に加入義務のある60歳になるまでは、そのまま扶養に入り続けるとして、加入義務のない60歳から国民年金に任意加入すれば、老齢基礎年金を増やすことができます。任意加入する場合、国民年金保険料(2024年度:月額1万6,980円)の納付が必要ですが、これを36ヵ月分納付すれば年金は6万1,200円増え、満額の81万6,000円になります。

さらに、任意加入で国民年金保険料を納付する際に合わせて「付加保険料」も納付すれば、付加年金も増やせます。付加保険料は月400円かかり、1ヵ月納付につき付加年金は年間200円増えます。

36ヵ月分・1万4,400円の付加保険料を納付すれば、年間7,200円(200円×36月)の付加年金が受給できるようになります。

さらに、Bさんの老齢基礎年金には「ねんきん定期便」に記載のない振替加算も年間1万5,732円加算されます。すべて合計すると、年金は年間92万円ほど。なお、国民年金の任意加入は最大65歳になるまで、任意加入した月分以降が納付可能です。そのため、60歳になったら早めに任意加入の手続きをすることをおすすめします。

このような方法で年金を増やせば、A夫妻の年金額はAさん:224万円+Bさん:92万円=合計316万円で、月額では26万円以上になります。「ねんきん定期便」に書かれていた月24万円と比べ、月2万円以上増やすことができるのです。

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A夫妻の年金受給額をさらに増額する方法

さらに、「ねんきん定期便」にも記載のとおり、65歳からの年金には受給開始を遅らせて増額させる「繰下げ受給制度」があります。1月繰り下げるごとに0.7%増額され、70歳からの受給で42%増額、75歳からの受給で84%増額することができます。

ここまでみてきた方法で、AさんとBさんそれぞれが65歳まで年金を増やし、さらに繰下げ受給制度を活用すれば、その金額に増額率が適用されるため、繰下げ増額分も多くなります(※Bさんの振替加算は増額の対象外)。

65歳以降に貯蓄や収入があれば、受給開始時期を遅らせる余裕ができ、繰下げ受給の開始時期によっては夫妻で月30万円以上の受給も可能です。

ただし、実際に繰り下げた場合、「ねんきん定期便」に記載された見込額のとおりにはならないこともあるため、繰下げ受給を考える場合、65歳以降、年金事務所等で現状や条件ごとの見込額を確認しながら、受給開始時期を決めるとよいでしょう。

「老後は年金暮らし」は過去の話…親世代とは異なる年金対策を

AさんとBさんの両親は「60歳でリタイア・60歳から年金」が当たり前の時代でした。しかし、現在は60歳で定年を迎えたあとも、再雇用等で65歳まで勤務することが一般的となり、年金も支給開始年齢の引き上げで65歳開始となりました。

これからは、終身で支給される公的年金を老後資金のベースとしつつ、あとは私的年金(企業年金等)や貯蓄、給与収入など自助努力でカバーすることも重要です。

公的年金収入だけでは老後資金は足りないかもしれませんが、増やす機会はあります。年金のルールを正しく把握し、年金を増やす方法について早めに確認しておくとよいでしょう。

五十嵐 義典

株式会社よこはまライフプランニング代表取締役

特定社会保険労務士/CFPⓇ認定者