世の中の常識として、ラブホテルに入ってすることといえばひとつ。ほとんどの人は“主戦場”がベッドとなるはずだが、実は部屋の中でトンデモないことをしている人たちもいる。
ラブホの清掃員として3年間働いていたことがある、アツコさん(仮名・40歳)に話を聞いた。
◆部屋一面に「ろうそくのロウ」
ラブホテルの中には、“道具”を貸し出すホテルもあると聞く。アツコさんのホテルはどうだったのだろうか。
「私の働いていたホテルは繁華街にあって、ビジネスホテルに近い雰囲気。そういうプレイをする人は少なかったんじゃないかな。
ベッドに血がべったりついていたりすることはありましたが、『生理だったのかな』と思うレベル。常識的な範囲内でご使用いただくお客さんばかりでした」
その背景もあって、ある日、清掃に入った時に驚いたという。
「清掃に入ると、部屋一面に、ろうそくのロウがびっしりと落ちていたんです。ろうそくプレイなんていうかわいいレベルじゃなくて、棚の上、トイレの横、ベッドの下にも落ちていました。
『何をどうしたら、こんなところに落ちるの!?』というレベルで、とにかく部屋中がロウだらけで、本当に掃除が大変でしたよ……」
◆注射器と、警察からの事情聴取
また、「ガラの悪い人たちがたくさん泊まっていました」とアツコさんは語る。
彼らがチェックアウトした後の部屋では、注射器を目にすることも多かったそうだ。
「注射器を見つけたら、必ず警察に連絡することになっています。そこで警察に没収されていきますね。
他にも警察と関わることは多かったですよ。月に何回か警察が来て『この中でホテルに来た人はいましたか?』と、複数名の写真を見せられることがありました」
中には覚えがある人がいて「ありました」と告げたこともあるとのこと。その後の警察の対応は大変ではなかったのだろうか。
「意外とあっさりしていて『あ、そうですか。ご協力ありがとうございました』と言って去って行きますよ。おそらく警察の中で目をつけている人が何人かいて、行動を監視しているんじゃないでしょうか」
◆お風呂の中には大量の…
ロウや注射器の他にも、部屋には様々な“落とし物”があるという。
アツコさんがいつも通り、二人一組のスタッフで清掃のために部屋に入った時のことだ。
「私はお風呂とトイレを掃除することになっていました。トイレ掃除を終えた後に、お風呂に移動すると、そこには茶色い物体が大量にあったのです。人間2人でこんなに出せるの? と疑うくらいの量がありました。もちろん掃除しましたが、一番キツい経験でしたね」
◆ホテルで起きた悲しい出来事も…
アツコさんは「別の意味で、もっとキツい経験がありました」と語る。
「宿泊されたお客様が、部屋で亡くなったことがあったんです」
「いつまでもチェックアウトしない客がいる」と、その日も二人一組で清掃に向かったのだという。合鍵でドアを開けると、ダブルロックがかかっていて、中に入ることができなかったそうだ。
「もう一人の清掃員の方が手鏡を持っていて、それをドアの隙間に入れました。それで『あ、これは……』って、私は急いで警察に電話するように言われました。すぐにパトカーと救急車が来ましたよ」
故人がチェックインした際、対応したのはアツコさんではなく、その清掃員だったのだが……。
「その清掃員は割とチェックインされるお客様の顔を覚えているタイプの人だったんですが、『なぜか、その人については全く思い出せない』と言っていました。
おそらく初めからそのつもりで、気配を断っていたじゃないのかな……と推測しています」
この件には後日談がある。アツコさんにとっては軽いトラウマになり、ホテルの清掃バイトをやめるきっかけになったそうだ。しかし、もう一人の清掃員は葬儀屋に就職したのだとか。
「その方がどんな感想を抱いて、葬儀屋に就職したのかは分かりません。因果関係があるのかも知りません。でも、世の中には様々な人がいるんだな、と勉強になりました」
<文/綾部まと>
―[ラブホの珍エピソード]―
【綾部まと】
ライター、作家。主に金融や恋愛について執筆。メガバンク法人営業・経済メディアで働いた経験から、金融女子の観点で記事を寄稿。趣味はサウナ。X(旧Twitter):@yel_ranunculus、note:@happymother