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●「旅先で旨いものを食べたければ、タクシードライバーに聞くのが一番」と言います。そこで、東京のB級グルメに精通する現役タクシー運転手・荒川治さんに、オススメのお店を教えてもらいました。
4年前(2018年)、この連載で私の大好きなラーメン屋さんの1つ、『北大塚ラーメン』の「激辛チャーシュー麺」の美味しさについてご紹介したことがあります。
この店の「激辛チャーシュー麺」、通称“激チャー”は、モンゴル出身のご夫婦が考案した、他では決して食べることができない唯一無二の味わいのラーメンです。丼にフタをするように敷き詰められたバラチャーシューは食いしん坊を誘惑するかのごとく甘美なビジュアル。そして肉の脂とラー油で赤く輝くスープはほどよい旨辛で、ただ辛い麺とは一線を画すエキゾチックさがあります。
しかも、そのおじちゃんとおばちゃんが、二人三脚で作る姿も微笑ましく、伺うたびにほっこりした気分になるんです。そんな『北大塚ラーメン』さんが、昨年(2023年)1月、王子駅北口に姉妹店『王子金麦ラーメン』をオープン。今回、そちらのお店に伺ってきたので、ぜひご紹介したいと思います。
“北大塚”と“王子”との違いは?
『王子金麦ラーメン』は、カウンター7席の小さなお店です。王子駅南口の大通りを「北とぴあ」の横から通り抜け、北口に向かって徒歩2分くらいの場所にあります。
赤地に金色の文字の看板が目印
店内に入ると、なんだか聞き覚えのある声が聞こえる……。厨房を見ると、『北大塚ラーメン』のあのおじちゃんとおばちゃんの姿が。そう、見紛うことなき、あのお二人! ここでもお会いできるなんて嬉しくなっちゃいました。
『北大塚ラーメン』で厨房を切り盛りしていたおじちゃんとおばちゃん
ここ『王子金麦ラーメン』のメニューはというと、「激辛ラーメン」(800円)と「激辛チャーシュー麺」(1000円)を基本に、それぞれ大盛りが200円増しという構成。これは、ほぼ『北大塚ラーメン』と同じです。辛さは、激辛か半辛を選べ、トッピングは「にんにくW増し」(50円)のみ。
そして、私のオーダーはというと、これも『北大塚ラーメン』と同じで、「激辛チャーシュー麺(大盛)」1250円に「にんにくW増し」50円のフルスペックです。食券をおばちゃんに渡し、給水タンクから冷水をセルフで淹れて完成を待ちます。
厨房を眺めていると、おじちゃんが麺茹でと湯切りを担当。おばちゃんがカエシを丼に淹れ、おじちゃんがそこにスープと麺をイン。すると今度は、おばちゃんが麺をほぐし、チャーシューや挽き肉を盛り付け。ピタリと息の合ったコンビネーションです
「激辛チャーシュー麺(大盛)(1200円)に「にんにくW増し」(50円)
着丼してすぐに気づくのは、丼がステンレス製だということ。よく韓国冷麺で使われているアレですね。でも中身は『北大塚ラーメン』の“激チャー”そのもの。これでもか! というほど載っているチャーシュー、たっぷりの挽き肉。そして赤い光を放つスープ。分厚いチャーシューのほどけるようなやわらかさも、辛味の効いた挽き肉の旨味も同じ。ひゃ〜、旨い!
でも、よ〜く味わってみるとスープがちょっと違うんです。『北大塚ラーメン』は豚骨ベースの濃厚なスープが前面に来て、カエシがそれを支えてるような印象ですが、『王子金麦ラーメン』は鶏ガラスープなので、スッキリ&あっさりしていて、その分、カエシがキリッと主張してくるタイプ。なるほど、本店と姉妹店とでは、スープを少し変えているようです。
『王子金麦ラーメン』のスープは鶏ガラベースで『北大塚ラーメン』よりややあっさりタイプ
麺は『北大塚ラーメン』と同じで、スープの絡みも抜群。ラーメンでいながら、まるでまぜそばのようにしっかり味が麺に染みており、最後までスープを絡め取りながらノンストレスで食べ切れるのです。もちろん麺もスープも完食。まるで何も入っていなかった丼のようにキレイなってしまいました!
ラーメンだけど油そばのような麺とタレの絡みが最高![食楽web]
というわけで、『北大塚ラーメン』の豚骨スープの濃厚さが好き! という人もいるかもしれませんが、私としてはむしろ『王子金麦ラーメン』のほうが、後味の軽さもあって、毎日食べたくなる味だと思いました。まだどちらも行ったことがないという方は、北大塚と王子、両方食べてみてください。美味しいですよ〜!
●SHOP INFO
店名:王子金麦ラーメン
住:東京都北区岸町1-2-9
TEL:03-6903-5639
営:11:00〜14:00 、18:00〜21:00
休:日
(撮影・文◎土原亜子)
●プロフィール
荒川 治
東京都内在住のタクシー運転手。B級グルメ好きが高じて、現職に就き、お客さんを乗車させつつ、美味い店探しで車を回している。中年になってメタボ率300%だが、「死神に肩をたたかれても、美味いものを喰らって笑顔で死んでやる」が信条。