他者の肖像権や著作権を侵害すると…

動画制作やSNS運用にあたって他者の肖像権や著作権を侵害した場合、どのような事態が生じる可能性があるのでしょうか? ここでは、肖像権や著作権を侵害した場合に生じ得る事態について解説します。

差止請求の対象となる

肖像権や著作権を侵害すると、権利者から差止請求がされる可能性が生じます。差止請求とは、侵害行為を辞めるよう請求することです。具体的には、次のことなどを求められる可能性があります。

・権利侵害している商品の製造を辞めることと、廃棄すること
・権利侵害しているSNSの投稿を削除すること
・権利侵害している動画を削除すること

損害賠償請求の対象となる

肖像権や著作権を侵害すると、権利者から損害賠償請求がされる可能性があります。損害賠償請求とは、権利侵害によって発生した損害や精神的苦痛を金銭で支払うよう請求することです。なお、損害賠償請求ははじめから裁判上でなされるのではなく、まずは裁判外で請求されることが一般的です。この時点で支払金額などに関する交渉がまとまれば解決となります。

一方、裁判外での交渉がまとまらない場合は、裁判上での請求へと移行します。

企業イメージが低下する

著名な企業が他者の肖像権や著作権を侵害した場合などには、SNSなどで「炎上」することがあります。最近では肖像権や著作権などへの意識が高い方も多く、企業イメージが低下する可能性が否定できません。

そのため、万が一企業が肖像権や著作権を侵害してしまった場合には、早期に弁護士へ相談ください。謝罪文などの掲載など、適切な対応をすることが求められます。

(著作権のみ)罰則の対象となる

他者の著作権を侵害した場合、著作権法の規定により罰則の適用対象となります。著作権侵害の罰則は、10年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金、またはこれらの併科です(著作権法109条1項)。

また、法人が著作権侵害をした場合は、法人に対しても3億円以下の罰金刑が科される可能性があります(同124条1項)。著作権侵害の法定刑は非常に重く設定されているため注意が必要です。

一方、肖像権の侵害に罰則はありません。

(広告の後にも続きます)

動画制作やSNSの運用での肖像権侵害にあたる行為

肖像権侵害にあたる行為とは、どのような行為なのでしょうか? ここでは、動画制作やSNSの運用をする場合を前提に、肖像権侵害となる行為について解説します。

肖像権侵害となる行為の例

肖像権侵害として損害賠償請求が認められるか否かは、状況によって個別的に判断されます。ここでは、肖像権侵害であると認められた事例を紹介します。

・胸元に「SEX」と印字された服を着て公道を歩いている女性のスナップ写真を無断で撮影し、自身が運営するウェブサイトに掲載した事例(東京地方裁判所2005年9月27日判決)

・「安保法案に反対するデモで孫が熱中症で死んだ」とする虚偽の投稿に添付する形で、X(旧Twitter)に投稿していた写真が無断で流用された事例(新潟地方裁判所2016年9月30日判決)

・法廷にカメラを隠して持ち込み、裁判所の許可を得ることなく無断で被告の写真を撮影し、撮影した画像を雑誌に掲載した事例(最高裁判所2005年11月10日判決)

自社で行おうとする行為が肖像権侵害となるか否か判断に迷う場合は、あらかじめ弁護士へご相談ください。