「個人事業主で年金が少ない」「年金から税金は引かれるの?」「年金の受給時期は変えられる?」…年金について、こうした悩みや疑問を持っている人もいるのではないでしょうか。本記事では、ファイナンシャルプランナー三原由紀氏による著書『定年後に後悔しないお金の大正解100』(永岡書店)から一部を抜粋・再編集し、年金を増やせる制度や税金、受給時期の変更などについてQ&A形式で解説します。

Q. 個人事業主の場合、リタイア後は少ない年金でやりくりするしかない?

A. 付加年金などを利用すれば、もらえる年金を増やせます

個人事業主は会社員などと違い、厚生年金に加入できません。そのため、もらえる年金の額は少なくなりがちです。「国民年金だけでは心細い」という人は、まず「付加年金」の利用を検討しましょう。

付加年金は、月400円の付加保険料を国民年金保険料に上乗せして納付することで、将来受け取れる年金額を増やせる制度です。利用できるのは原則として20歳から60歳までの間ですが、国民年金に任意で加入している場合には65歳まで納付できます。



[図表1]付加年金の概要

付加保険料は付加年金に申し込んだ月から納付が開始します。過去に遡さかのぼって納付することはできませんが、納付期限を経過した場合でも、過去2年間の未納分を納めることは認められています。

なお、国民年金保険料の納付を免除・猶予されている場合や、後述の国民年金基金に加入している場合には付加年金を利用することができません。

付加年金と合わせて検討しましょう

ほかに年金を増やす手段としては、①小規模企業共済、②国民年金基金、③iDeCo(個人型確定拠出年金)があります。特に小規模企業共済とiDeCoは付加年金との併用が可能です。ただし、iDeCoと併用するとiDeCoの掛金額が減ります。

①小規模企業共済は、個人事業主が事業を廃止した場合や会社の役員が退職した場合などに備えて、事前にお金を積み立てておく共済制度です。

②国民年金基金は、個人事業主など国民年金の第1号被保険者が国民年金とセットで加入できる公的な終身年金(保障が一生続く保険)です。

③iDeCoは、国民年金や厚生年金のような公的年金とは異なる私的な年金制度です。自分で決めた掛金で投資信託などを運用し、原則60歳以降に給付金として受け取れます。

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Q. 年金収入から税金って引かれるの?

A. 所得税や住民税が引かれます

年金収入は、障害年金や遺族年金を除き※雑所得として、所得税と住民税の課税対象になります。また、税金以外にも社会保険料(健康保険料や介護保険料)がかかります。これらの金額が差し引かれたうえで口座に振り込まれるため、手取りの金額はおおむね額面の85~90%です。

※雑所得とは、公的年金や副業などによる収入のこと。

なお、年金額が年158万円未満(65歳以上の場合)であれば、所得税はかかりません。それらの額を超える場合でも、配偶者などを扶養している人は、事前に控除を申請することで年金から所得税は引かれません。

■年金から住民税が引かれるには条件がある

年金額が年18万円以上あり、課税年度の4月1日時点で65歳以上の人は、原則として住民税が天引きされます。なお、このように年金から天引きされることを、所得税では「源泉徴収」、住民税・社会保険料では「特別徴収」といいます。