「QUOI(クワァ)」というのは、フランス語で「何?」。何も考えなければついつい「いつも通り」の毎日を送ってしまいますが、常に「何?」と疑問を持ち続ければ、新しく楽しい風景が見えてくる。今回紹介するのは、そんな想いが込められた大阪の新しいベーカリーです。
2024年初夏、大阪・本町にオープンした「QUOI(クワァ)」を取材しました。そこで見たのは3人の女性ベイカーと、シンプルでスタイリッシュなパン、そしてパンの新しい楽しみ方でした。
有名店で修行した3人のパン職人が生み出すベーカリー「QUOI(クワァ)」
最寄駅は、地下鉄御堂筋線「本町」です。大阪市のほぼ中央にある本町には昔から商売ごとが集中し、大阪でも有数のオフィス街になっています。
本町駅を降りて北東へ進むと、通りの角に見えるのがベーカリー「QUOI」。朝早くから職人がパンを焼いている姿を、ガラス越しに見ることができます。
こちらが営業中の様子。1〜2名程度しか中に入れないほどの小さなテイクアウト専門店ですが、外にはベンチやテーブルがあり、パンとコーヒーを楽しむことができます。
店長の池田さん
店長を務める池田さんは、20代の頃からずっとベーカリーに勤める生粋のパン職人。小麦そのものの味を活かすパン作りを勉強したいと、名門「シニフィアン・シニフィエ」の志賀シェフの元で修行を積んでいたそうです。
「志賀さんの元では、酵母の活かし方や小麦粉との向き合い方を多く学びました。挫折に近いぐらい追い詰められましたけど、今では真剣に向き合ってもらった事に感謝しています。なかなか自信を持てなかった私に全力でパンに向き合うこと教えてくれた師匠に背中を押してもらったことは、私の中で大きな自信につながりました」
生まれ故郷の大阪に戻る決意をした池田さんはベイカー仲間の赤松さん、山田さんを引き入れ、一緒に新たなベーカリーを作ることに。
東京時代に知り合ったという赤松さん
赤松さんの元同僚、山田さん
11時開店に向けて朝6時から粉まみれになりながらテキパキと生地を切り、オーブンを回す3人の女性ベイカー。厳しいと言われる職人の世界を生き抜いてきた精鋭たちですが、女性の身でもいかに続けていけるか、という仕組みも作っていきたいと話してくれました。
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小麦の味を最大限に引き出すシンプルなハード系7種&クッキー
3人の職人が焼き上げる「QUOI」のパンは、”8種類であること”が基本ルールとのこと。パンが7種、アメリカンクッキー1種が店頭に並んでいます。商品ラインアップ的には、誤解を恐れずに言えば「地味」な並び。飾り気のないシンプルなものばかりです。
実はこの8種類、パン製造の基本技術が入っているラインアップ。ベーシックなものだからこそ、一つひとつの工程・製法にじっくりと向き合いたい。美味しくする改善を繰り返し、常に「なぜ?」を問い続けていきたいと話してくれました。
写真は「カレーパン」。中にカレーフィリングを詰めて揚げるのではなく、ブリオッシュ生地にスパイスを練り込んだスタイルで、関西では珍しいカレーパンです。志賀シェフに許可をもらい、「シニフィアン・シニフィエ」のレシピを使っているそう。
人気のクロワッサンは少し大きめに見えますが、しっかりとバターの層を作っているのでここまで膨らむのだそう。つやつやに焼き上げられる美しいビジュアルです。
その他、パン・ド・ミやバゲット、チャバタ、カンパーニュなどシンプルなハードパンがラインアップ。ベーグルはプレーン・胡麻ケシ・塩の3種セット。モルト(麦芽糖)を使っていることで、醤油を塗っているかのような香ばしさが残るベーグルも、連日売り切れの人気っぷりなのだとか。