タイに移住した50歳女性が明かす、悠々自適な生活「人生を仕事だけに縛られたくない」家の広さは日本の倍に

 憧れの「海外移住」。いつか日本のしがらみを逃れてのんびり暮らしたいと考える人も多いはずだが、現在の円安の影響下では、夢のまた夢。より一層“難しい”と感じてしまうはずだ。

 そんな状況の中、この夏からタイのリゾート地・パタヤに移住した日本人女性がいる。彼女の名前は佐藤祥子さん(仮名)。50歳の誕生日を迎えた祥子さんは、日本で勤めていた保険会社を退職し、同じ年齢の内縁の夫とともにパタヤでの新生活をスタートさせた。

 現在、パタヤで悠々自適な生活を楽しんでいるが、彼女には長年抱き続けた“揺るぎない目標”があったという。

◆若い頃から“50歳で引退して海外に住む”と決めていた

「20代の頃から“50歳で引退して海外に住む”という夢があったんです。大学時代から海外旅行が好きで、特にタイのリゾート地のゆったりとした雰囲気に惹かれていました。卒業後は日本のアパレル会社に就職しましたが、日本の社会では、常に忙しなく動き回る必要があって。

 そんな仕事中心の生活に疑問を感じていたこともあり、親の介護などに縛られる前に引退して、元気なうちに自由な生活を送りたいという思いを強く抱いていたんです」

 祥子さんは、20代で結婚し、31歳で離婚して独り身となった。その後は転職し、日系ホテルでの勤務を経て、保険会社の立ち上げメンバーとしてがむしゃらに働く日々を送っていた。そんな彼女のパタヤ移住のひとつのきっかけとなったのが、同じ保険会社グループで働いていた男性との出会いだった。

◆パートナーと意気投合“タイのパタヤでいっしょに生活をしよう”

「彼も私と同じように、『人生を仕事だけに縛られたくない』という考えでした。また、私たちは日本の税制度にも疑問を感じていました。税金が高すぎて、どんなに貯金しても将来に対する不安がぬぐえなかった。それで意気投合し、ともに50歳で引退し、比較的物価が安く、日本ほど税金がかからないタイのパタヤでいっしょに生活をしようという共通の目標を持ったんです」

 パートナーの男性は一足先に仕事を辞め、昨年からタイで生活を始めていた。そして今年8月、祥子さんは誕生日を迎えるとともに13年間勤務した保険会社を退職し、晴れてパタヤでの新生活をスタートさせた。

◆生活費は2人で月40万円程度「家の広さが日本の倍に」

 リタイアするための移住費用や、現地での生活費についても伺った。

「私は50歳でのリタイアを計画していたので、最低目標として5000万円を貯めていました。ただ、質素に暮らすのであれば、パタヤであれば3000万円程度でも十分やっていけると思います。現在、月々の生活費はパートナーと2人で約40万円ほどです。

 住んでいるコンドミニアムは家賃が2万8000バーツ(約12万円)で、広さは130平米の2ベッドルーム。日本に住んでいたときは60平米で家賃9万円でしたが、パタヤでは広さが倍になっても家賃は倍にはなりません。

 また、18階の部屋なので風通しがよく、エアコンをほとんど使わずに済んでいます。光熱費も月4000円程度で、日本の1/3です。日本では在宅勤務でほぼ毎日エアコンを使っていたため、電気代が月1万円を下回ることはありませんでした」

 さらに、食費も日本に比べるとかなり抑えられているという。

「食費は自炊と外食を組み合わせていて、食材は市場で買うので安く済みます。パートナーが釣り好きなので、イカやエビを頻繁に釣ってきてくれるため、さらに食費を抑えられています。高級レストランにはあまり行かず、屋台もあまり利用しませんが、居酒屋でお酒を飲んでも2000円程度で済みます。日本だったら5000円以上はかかると思うので。日本食が食べたくなった時は自炊しているので、2人で月の食費は3万バーツ(約13万3000円)ほどです」

◆「自由に自分のスタイルで過ごせるのがいい」

 パタヤといえば、ナイトライフが盛んで男性に人気のスポットとして知られている。実際に住んでみて、祥子さんはどう感じているのだろうか。

「今住んでいるエリアは、夜の店が集中している中心地から車で20分ほど離れていて、長期滞在者の家族やリタイア組が多く、静かで落ち着いています。パタヤは多国籍な街で、様々な国の人々が住んでいるので、よく聞く日本人同士の“人間関係の煩わしさ”はほとんど感じません。

 また、ビーチリゾート独特の開放感があり、人目を気にせず過ごせるところも魅力です。東京だと、ちょっと電車に乗るだけで流行りの服を着なければいけない感じがありますが、パタヤでは肌を露出しても誰も気にしないし、無理に着飾る必要もありません。自由に自分のスタイルで過ごせるのがいいんですよね」

◆もっと苦労すると思っていたけど…

 とはいえ、実際に移住してみて、苦労したことやイメージが変わった点はなかったのだろうか。

「むしろ、もっと苦労すると思っていましたが、思いのほかありませんでした。タイの人々はフレンドリーで、お互いにカタコトの英語でのやり取りでもコミュニケーションは取れていて、言葉の壁は思ったほど感じません。衛生面も以前は心配していましたが、屋台での食事にも抵抗がなくなりました。あとはインフラが想像以上に発展していて驚きました。

 気候は、もっと暑いと思っていたのですが、日本の蒸し暑さに比べてタイは風があるので過ごしやすいです」

 普段の生活では、昼頃に起きて、現地で知り合った気の合う日本人たちとスポーツを楽しんだり、夜は部屋で趣味のお酒を楽しんで過ごしているという祥子さん。最後に、今後の人生プランについても伺ってみた。

「リタイアして海外に住むことは、そこから様々な国を訪れて、日本がどういう国なのかを再確認することが目的でもあります。タイは陸続きでアジアの他の国にも行きやすく、ヨーロッパへの中継地としても便利です。日本にいるときは仕事が忙しく、大好きな海外旅行も年3泊程度の短期しか行けませんでしたが、これからはもっと自由に好きなだけ旅をして過ごしたいです」

 日本の忙しい日常から解放された祥子さん。彼女は今、長年の目標を叶え、理想のリタイア生活を満喫しているそうだ。

<取材・文/カワノアユミ>

【カワノアユミ】

東京都出身。20代を歌舞伎町で過ごす、元キャバ嬢ライター。現在はタイと日本を往復し、夜の街やタイに住む人を取材する海外短期滞在ライターとしても活動中。アジアの日本人キャバクラに潜入就職した著書『底辺キャバ嬢、アジアでナンバー1になる』(イーストプレス)が発売中。X(旧Twitter):@ayumikawano