再婚が理由の減額申し立て事例

再婚を理由とした養育費減額の申し立て事例には、次のものなどが存在します。

妻の再婚による養育費支払い義務の免除

夫であるAさんは離婚の際、妻とのあいだで養育費として月額5万円を支払う約束をしました。ところがその後、子どもとの面会交流の際に子どもから「お母さんが結婚して新しいお父さんができた」と聞きました。そこで元妻へ状況を確認したところ、実際に再婚した事実が発覚しました。

Aさんは「それなら養育費を支払う必要はないのでは?」と考えて弁護士へ相談。再婚相手と子どもが養子縁組していれば支払義務がなくなると聞き、元妻へ状況を確認したところ、養子縁組している事実が確認されました。そこで合意により、養育費支払義務を免除してもらい、以降は支払いをしていません。

自身の再婚による養育費減額の請求

夫であるBさんは離婚の際に子ども2人の親権者を妻とし、月額の養育費は10万円と取り決めました。その後、知り合った女性と再婚し、子どもが生まれました。そこで、養育費を減額できるのか、弁護士へ相談しました。

「再婚して子どもができたら、おそらくは養育費を減額できる」との回答を得たため、収入などを標準算定表式に当てはめて計算したところ、養育費は月額6万円が相当であることが明らかになりました。元妻と話し合い、養育費を月額6万円に減額できた事例です。

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養育費を減額する手続きの進め方

では、養育費を減額する際の一般的な手続きの進め方について解説しましょう。

STEP1:養育費の計算をする

まずは、どこまで養育費を減額できるのか計算しましょう。元配偶者が再婚し、子どもが再婚相手と養子縁組した場合には基本的に支払義務はなくなると考えてよいでしょう。こちらが再婚したり子どもが誕生したりした場合には、複雑な計算が必要です。弁護士に相談して算定してもらうことをおすすめします。

STEP2:相手に連絡して話し合う

養育費の金額を計算できたら、相手へ伝えて話し合いをしましょう。相手が納得したら養育費を減額できます。ただし、この時点で勝手に養育費を減額してはなりません。減額後の養育費の始期についても定める必要があります。

STEP3:養育費についての合意書を作成して減額する

合意ができたら、減額した養育費についての「合意書」を作成しましょう。合意が整ったら、その時点(取り決めた減額の始期)から減額した養育費の支払いを開始します。

再婚を理由に一方的に養育費の支払いを打ち切られた場合

養育費の支払いを受けている場合、再婚するといきなり相手から養育費の支払いを打ち切られるケースが少なくありません。

しかし、再婚しただけで相手の養育費支払義務がなくなるわけではありません。養子縁組していないなら、これまでとおり養育費を支払うよう通知しましょう。それでも払わない場合、公正証書や調停調書があれば相手の給料や預貯金などを差し押さえられます。こういった書類がない場合には、改めて養育費調停を申し立てて支払いを求めましょう。

調停や審判で養育費の金額が決まったにもかかわらず相手が支払わなければ、差し押さえが可能です。

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自分が再婚したことを報告していなかった場合

離婚をした元配偶者に、再婚したことを伝えることに抵抗を感じる場合もあるでしょう。では、養育費が発生している期間中において再婚したにもかかわらず、相手に伝えなかったり隠したりしていた場合には、どのようなリスクが生じるのでしょうか? 生じる可能性のある主なリスクは、次のとおりです。

権利者が再婚を報告しなかった場合のリスク

養育費を受け取る権利者が再婚を報告しなかった場合、相手が子どもとの面会交流の際などに情報を入手し、いきなり養育費を払わなくなる可能性があります。

その後、「養子縁組していないから養育費を払ってほしい」などと伝えても、不信感を持たれてスムーズに支払いを再開してもらえないリスクが高くなるでしょう。面会交流も滞りがちになって子どもが悲しい思いをするケースもあるため、くれぐれも再婚についてはきちんと伝えるべきです。

義務者が再婚を報告しなかった場合のリスク

義務者が再婚を報告しなかったら、養育費を減額してもらえません。本来なら減額してもらえるはずなのに、延々と高額な養育費を払い続けることになります。特に、再婚相手とのあいだに子どもができたら、養育費の減額幅が大きくなります。適正な金額まで下げてもらうため、再婚したら早めに相手へ伝えて養育費を減額してもらいましょう。

減額の話し合いがどうしてもまとまらない場合

自分たちで養育費の減額について話し合っても、どうしてもまとまらない場合、家庭裁判所で「養育費減額調停(または審判)」を申し立てなければなりません。

調停では、家庭裁判所が適正な養育費となるよう協議を調整してくれます。両者が合意すれば調停が成立し、合意できなければ「審判」によって適正な養育費の金額を裁判所が決定します。ただし、減額の算定には専門知識が必要です。一人ではご不安がある場合、弁護士へご相談ください。

「再婚=減額」ではない

養育費の権利者や義務者が再婚しても、必ずしも養育費を減額してもらえるとは限りません。減額してもらえるとしても、話し合いもせずにいきなり支払いを止めたり減額したりするとトラブルのもととなってしまいます。養育費を減額するには、適正な金額を算定したうえできちんと話し合いをしましょう。

ただし、養育費の適正な計算方法は難しく、相手との交渉でトラブルになるケースもあります。交渉を弁護士に任せるとスムーズに減額を進めやすいので、迷ったときには弁護士へ相談することも検討してみましょう。
 

白谷 英恵

Authense法律事務所